5年後のいま、「サヨナラの意味」を語りたい(乃木坂46・デビュー10周年を前に)

この記事は約45分で読めます。

 東京は年始からぐっと冷え込む日が多くなっている。春を待つというにはまだ少し早いこの時期の空気には、独特の色彩や匂いがあると思う。新型コロナウイルス感染症の拡大は「第6波」といわれ、コロナ禍といわれる状況は3年目に入ろうとしているが、乃木坂46のこの1年間のことを思い起こしてみると、厳しい社会情勢のなかで着実に歩みを進めてきた時間だったといえるだろうか。「9th YEAR BIRTHDAY LIVE」の配信ライブでの分割開催、「アンダーライブ2021」の無観客開催、5月の4期生ライブ・3期生ライブの有観客での開催回避などの困難な状況はみられたものの、積み重ねられたライブは2年ぶりの全国ツアーの有観客開催に結実し、2か月半の延期を経たものの4年ぶりの東京ドーム公演も実現した。この1年間には10人ものメンバー1がグループを卒業する一方、5期生メンバーのオーディションが行われるなど、(いつからか毎年のようにこう言っている気がするが)特に変化の多い「10周年イヤー」となった。

 今年の「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」はデビュー日近傍ではなく5月に日産スタジアム・2DAYSで行われ、かわって明日からは5回目となる「乃木坂46時間TV」が放送されることになっている。しかしやはりこの時期になると、朝晩の冷気とともに「もうすぐ乃木坂46の誕生日だな」という気分が高まり、バースデーライブの思い出が甦る。ナゴヤドーム、京セラドーム大阪、さいたまスーパーアリーナ。そしてもちろん、ちょうど5年前の2017年2月20日、自身の24歳の誕生日をもってグループを卒業していった、橋本奈々未のたたずまいもどうしようもなく思い出される。

 前置きが長くなったが、本稿は筆者にとって思い入れが深い楽曲である「サヨナラの意味」について、そしてその楽曲でセンターを務めた橋本奈々未について、忘れたくないことを書き残し、忘れていることを思い出しながら、抱いている感情をこのタイミングで言語化しておきたいと考え、書いていくものである。

リリースまでを駆け抜ける

 ファン人気の高い表題曲に対して今さらの言い方になるが、「サヨナラの意味」はあまりにも「乃木坂46らしい」楽曲であるように思う。「制服のマネキン」の時期から乃木坂46をアイデンティファイしてきた杉山勝彦によるメロディに乗せられたのは、「サヨナラ」という直截的なキーワードを用い、「君」を送り出す情景を描きつつどことなくつかみどころのない、タイトルを歌詞世界になるまでこねてつくったような、ある意味で「秋元康らしさ」が感じられる歌詞。美麗な衣装、美しく優雅な振り付け、ドラマ仕立てのミュージックビデオ。そしてそれは、過去最多であった19人の選抜メンバーによる盤石の布陣で演じられた。

 2016年11月9日のシングル発売に対して、「乃木坂工事中」での選抜発表の放送は10月16日と、異例の遅さであった。13thシングル以来3作ぶりの「今野式」による発表で、MCであるバナナマンによるモニタリングもなく、近年の選抜発表放送の形式と近かったといえる。番組終盤で発表され、バナナマンによるコメントが放送内で付されない形式がとられたのは、このときが初めてであった。この日の放送内では橋本の卒業については明かされず、橋本本人によるコメントも「やっぱりいろんな思いがあるけど、やらせてもらうっていうことが、決まったなかでできることは、いいものをお届けしたい」「みんなにひとつひとつ納得していってもらえるようなものができたらいいかなと思っています」と、かなり抑制的なものであった。ナレーションでも「新センター橋本」「近日番組でもセンターへの思いを語ります」と言及されたのみで、4作ぶりの選抜入りに涙する新内眞衣や、初のフロントのポジションを喜ぶ高山一実の姿のほうが、むしろ印象深かったくらいだった。

 しかし、そこからは急転直下の展開といってよかっただろうか。10月19日の「乃木坂46のオールナイトニッポン」で、橋本はグループからの卒業と、芸能界からの引退を発表する。この日の放送は「表題曲を初オンエアする」というのみの触れ込みで始められ、この日の出演メンバーであった橋本および桜井玲香、生田絵梨花による曲振りで「サヨナラの意味」というタイトルが発表され、初オンエアを終えたのちに「橋本奈々未からのお知らせ」として、「(このような前振り、および「サヨナラの意味」という新曲のタイトルから)『あれ?』と思った人もいるかとは思うんですが……」と、橋本が卒業を切り出したという運びであった。橋本の卒業までは予期していたファンもいたかもしれないが、「芸能界引退」を明言するのはさすがに予想外であり、大騒ぎになっていたという記憶がある。卒業日は24歳の誕生日である2017年2月20日が目安と言及され、のちにその通りの日付で卒業および芸能界引退となったというのは周知の通りだ。

 明けて10月20日にはシングルの商品概要が発表され、そこで曲名が明らかにされた橋本のソロ曲「ないものねだり」は、その夜の「SCHOOL OF LOCK!」で初オンエアされた。翌日の10月21日にはYouTubeで「サヨナラの意味」のMVが公開され、10月28日の「日テレ HALLOWEEN LIVE 2016」で初披露となる。シングル発売の1週間前の11月2日には所収全曲の先行配信がスタート。あらゆることが、あっという間に進んでいった。

乃木坂46・橋本奈々未の横顔

 乃木坂46の結成から前線に立ってきた橋本奈々未には「お姉さんメンバー」の印象が強く、卒業日が24歳の誕生日であったという事実に突き当たると、何度でも改めて驚いてしまう。メンバーのことを他のメンバーで例えるのも申し訳ないが、年齢と卒業のタイミングの関係でいうと星野みなみ(2022年2月6日で24歳、2022年2月12日の卒業セレモニーをもって卒業)が最も近く、グループ加入(結成)から5年半というキャリアは、現在でいうところの3期生にちょうど重なる。求められたキャラクターやパブリックイメージを措けば星野だって年相応以上に大人だったと思うし、現在の3期生の堂々たる活躍は言をまたないが、記憶のなかの橋本のたたずまいはそれを凌駕する。もちろん、5年前はいちおう自分も5歳若かったわけだし、記憶は時間とともに形を変えていくというのもわかっている。でもやはり、芸能人としてのキャリアの最晩年だったあの時期、橋本の姿やふるまいはどこまでも、超然と大人びて見えた。

 当時の温度感はいまとなってはもう確かめようがないし、筆者も詳しいわけではないのだが、2016年6月に深川麻衣を送り出したあたりがひとつの契機だったのだろうか。橋本にはそのころ、卒業の噂がどことなく漂っていた。ツアーの最後に発表があるんじゃないかとか2、腰痛でもう限界なんじゃないかとか、根拠があるようなないようなことを勘ぐる声はいつだってあるものである。どちらかというと橋本は、モバイルメールなどでそうした声に反論することも多かったのだろうか。出所はもはや不明だが、「自分の卒業のタイミングは自分で決める」のように発信していたと聞いた覚えもある。

 メンバーに卒業を告げたのは『乃木坂工事中』(テレ東系)の収録です。ファンの方は「もう卒業?」とウワサしていたので、あっさりした反応なのかなと想像してたんですよ。でも、こんなにも言葉をかけてくれたことに驚いたし、泣いてくれるなんて…全部の言葉が嬉しかったです。
 まいまい(深川麻衣)が卒業した影響と言う方もいますが、学校の部活動とは違いますから(笑)。それはあり得ません。むしろ私が先に卒業すると思っていたくらいだったので、まさか見送るとは思いませんでした。でも、近くで仲のいい子の卒業を見送れたのは良かったなと思いますね。……(後略)

(『日経エンタテインメント! アイドルSpecial2017』p.23)

 なお、このあたりで断っておこうと思うのだが、筆者自身としては、橋本奈々未というメンバーについて語る資格はほぼないと思っている。乃木坂工事中を見始めたのが2015年の終わりごろ、ファンになったといえるのが2016年の春以降なので、女優業をやったりプク顔をしたりしていた「ななみん」に、リアルタイムで親しみを感じてきたということではほぼなかった。橋本の参加したライブに立ち会ったのも卒業コンサートを含めて3公演だけで、むしろ感覚としては、阪口珠美が「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 前夜祭」(2021年2月22日)で評したように、「まぼろし」のような存在であるようにも思う。だからこそ、どこまでも橋本が大人びて見えたというところもあるかもしれないし、あるいはだからこそ、5年経ったいまになって語りたくなったというところもあるかもしれない。

 とにかくそういうわけなので、あくまでそのくらいのタイミングでファンになった、「筆者の見た橋本奈々未」が綴られた文章として、読んでいただければ幸いであるということを、エクスキュースとして付言させていただく。

「センターになる」ということ

 橋本は、自分はセンターをやらないまま終わるのではないか(もしくは、やらないほうがいい)、と感じていたという。全シングルで福神メンバーを務めた彼女は間違いなく乃木坂46というグループのフロントラインにいたが、しかしそのときどきで主人公といえる立ち位置にはいつも別のメンバーがいた。テレビドラマやバラエティ番組、ファッション雑誌の専属モデル。グループの進む道を切り開いていったメンバーとしては、不思議な存在感であるように感じていた。「真夏の全国ツアー2014」では体調不良に見舞われ、アレルギーや腰痛がクローズアップされることも必要以上に多かった気がする。完璧なのに、完璧ではない。そんな風に思い返してみると、それってアイドルだな、とも思う。

 そんな橋本のイメージからすると、センターとして過ごした約4か月間、彼女は思った以上に「センター」を従容と務めていたと感じられる。「卒業・芸能界引退」を引っさげてのプロモーション活動や音楽番組への出演ではいつもその話題ばかりだった。引退の理由や家庭環境などが思いと異なる切り取られ方をした際にはきちんと反論もしていたが、おおむねすべてを受け入れて、必要十分にことばを並べていたように思う。あるいはあの冬は、平手友梨奈を真ん中に猛スピードで駆け抜けた欅坂46のデビュー1年目であり、AKB48では島崎遥香が「卒業センター」としてクローズアップされていた。「選抜総選挙」の印象もまだ強かった頃で、「センター」というポジションがもつパブリックイメージは現在よりも強烈だったかもしれない。

 「Merry Xmas Show 2016」の選抜単独公演(2016年12月6日、8日)では、初めての試みとなる「選抜単独」のフルサイズのライブで座長のような立ち位置を務め、1人1曲のプロデュース企画では白石麻衣・松村沙友理との「御三家」で「Threefold choice」を演じたことも話題となった。このライブでは「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」の開催もアナウンスされ3、2017年2月20日が卒業日となることが正式に告知される。またこのときには、グループとして初めての「ミリオン」達成についても祝われている4。12月22日には、その2017年2月20日に2nd写真集「2017」が発売されることが発表される。SHOWROOM配信などでのプロモーション活動は展開されたが、ソロ写真集では定番となっていたお渡し会などは当然行われず、最後の置き土産的な作品となった。グループとして2回目の出場となった「紅白歌合戦」では、「サヨナラの意味」でセンターを務めたのみでなく、ここでも卒業をクローズアップされ、桜井玲香がサプライズで手紙を読むなど、大がかりな取り扱いを受けた形であった。

 また、そうした数々の舞台が用意されたということばかりでなく、橋本本人も(「卒業」の文脈にかかわらず)センターになったことによる内面の変化について語っていたことがあった。

ミュージックビデオの撮影で、初めてセンターの責任を感じました。台風が迫る中、雨に降られてみんながびしょ濡れになり寒い思いをしていたので、「このシーンは雨の中で撮る必要が本当にありますか?」とスタッフさんに聞きました。もしセンターでなければ、寒いけどガマンと思うくらいだったかもしれない。センターとはグループの代表として、周りのメンバーに対してこういう風に感じるんだなと思いました。

(『日経エンタテインメント!』2017年2月号 p.56)

 「サヨナラの意味」のMV撮影が苛烈なものであったということは、シングルの特典映像のドキュメンタリーでも描かれていたところである。表題曲は2日間で撮影されることが多かったというが、「サヨナラの意味」には4日間が費やされたのだという。初日の撮影開始予定時刻に衣装が間に合っておらず、遅れて撮影が始まったときにはすでに悪天候で最悪のコンディションだった。台本を修正しながらなんとか撮影を進めるが、2日目には橋本にアレルギーの症状が出て体調が悪化し、撮影そのものがほとんどできなかったのだとも明かされている。3日目以降は順調に撮影が進んだようだが、確かに初日に撮影されたという、木の下で西野七瀬と橋本が文庫本を交換するシーン(1サビ)などでは演出には回収できないほどの雨が降っている。ファンの立場からすると、いまになってみればそれも作品のひとつの味であるが、苦心の一作であったことがありありとわかる。しかしそうした過程を経て、橋本は「センター」になっていったのかもしれない、とも思う。

終わりゆく日々

 「紅白歌合戦」が終わって2017年となると、そこからはあっという間だった。そのなかで橋本は、あまり感傷的になるようなところもなく、しかしあえて身を引くようなところも過剰には見せず、相変わらず淡々と「メンバー」であり続けていたように思う。2月5日のパシフィコ横浜での個別握手会をもって握手会も最後となったが、そこでの最後のセレモニーででは、「握手会が終わりました」と端的なことばで口を開き、「本当にありがとうございました、さようなら」と決然としたあいさつをした。一方でこの頃に行われていた、3期生による「3人のプリンシパル」では、15公演中11公演目となる2月10日の公演においてサプライズでステージに上がり、あまりかかわることのなかった3期生について、公演を見て「この子たちは妹なんだな」と思ったと語り、「温かい目で見守ってあげてください」と客席に呼びかけた。「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」は2日目からの参加であった3期生は、一度も橋本と同じステージには立っていない5。しかし、そこに確かな存在感があったことだろう。「まぼろし」とは、やはり言い得て妙である。

 2年弱にわたって専属モデルを務めた『CanCam』も、1月23日に発売となった3月号が最後の登場となった。最初で最後の表紙を飾り、大々的な特集記事とともに惜しまれながらも華々しく卒業した。同号でのロングインタビューでは、モデルとしての活動するにあたっての努力や葛藤について語られたが、「友人やファンの方から『CanCamもやめちゃうの?』って聞かれるたび、自分がCanCamの専属モデルだってことを実感しました。」などと明かしつつも、全体的にはやはりきっぱりとした調子でまとめられていた。いよいよ卒業コンサート(および写真集の発売)が目前に迫った2月16日にはSHOWROOM配信が行われ、そのなかで「ないものねだり」のMVが初公開された。翌2月17日にはYouTubeにも公開されたが、シングルの映像特典には当然ながら収録されておらず、卒業後の2017年5月24日にリリースされた3rdアルバム「生まれてから初めて見た夢」で収録されることとなり、これがグループとしてのリリース作品では、橋本が残した最後の余韻だったといえるだろうか。2月20日の発売を前に店頭に並び始めていた写真集『2017』の巻末に収録されたメッセージでも、冬のニューヨークの儚げな色調でまとめられた本編と対照的とさえいえるほど、いくぶんからっとしたことばが書き残されていた。

 写真集を買ってくれたみなさん。見終わってから悲しい気持ちになった方は、きっと私のことを本当に好きでいてくれたんだと思います。すごくいい写真がたくさん収められているのに、「なんでいなくなっちゃうの?」って思う方もいるかも知れません。でも、卒業します。めいっぱい悲しんでください(笑)。本当に最後までありがとうございました!

(橋本奈々未 写真集『2017』Message)

 2月19日放送の#93で「乃木坂工事中」にも最後の出演となったが、すでに卒業発表直後(2016年10月30日放送の#78)にバナナマンとの対談なども放送されていたため、「ボードゲーム部員」としてやり残したこととして「ナンジャモンジャ」を遊ぶという、卒業企画のような色はあまりない企画であった。設楽統が「残り、これ(「乃木坂工事中」)はほぼ出ない感じ?」と水を向けたことを受けて、日村勇紀からは「(残りの「乃木坂工事中」の放送には)全部出なさい、腰痛くても出なさい(「乃木坂工事中」#78)とも言われていた橋本だったが、この間に17thシングルの選抜発表などが行われたこともあってか、この日が約2か月ぶりの番組出演でもあった。「あの子いなくなっちゃうんだよ」、ゲームが盛り上がるなかで、バナナマンがそう言い合って笑いが起こる。番組最後のメッセージを聞いてもなお、どことなく実感のない、ふわふわとした感覚のままだった。

「最後にこうやってみんなと、わちゃわちゃ笑って収録ができてよかったと思います。
 それと、明日ライブに来てくださるみなさんもたくさんいらっしゃいますが、たぶん来れない方たちもたくさんいらっしゃると思うので、そういった方に、画面ごしにでも、お会いするのは最後だと思います。
 本当に、5年半近く、たくさんの声援と応援をいただいて本当に嬉しかったですし、それがあったからいまここにいられると思います。これから私も頑張りますので、みなさんも幸せに過ごしてください。ありがとうございました。」

(2017年2月19日「乃木坂工事中」#93 橋本奈々未ラストメッセージ)

 明けて2月20日、その日まではあっという間だった。やはりそう表現するほかない。

「卒業コンサート」のあり方

 その日、筆者は午後休をとって昼過ぎに会社を出て、一度自宅に戻った。ライブの現場に行くことにもまだそこまで慣れていなかったので、準備にも時間をかけつつ、どうやって開演までの時間を過ごせばいいのかわからなくてすわりが悪く過ごしていたような覚えがある。ひとりでも退屈せず暇をつぶせるくらいの時間に会場に着いたら、グッズ列の長さに驚いた(直前の「Merry Xmas Show 2016」のときは、同じくらいの時間では売り切れもありつつ並びなく買うことができていた)。しばらく並ぶも諦めて(結局終演後に並んで買った)、会場に入る。一般発売で勝ちとったチケットは見切れ席寄りのステージバック席で、メインステージは見えずスクリーンも半端にしか見えなかった。通称「音席」を地でいく光景に戸惑っているうちに、開演の時間がやってきた。

 緑色に染まった会場でOVERTUREが始まる。終わるとともに、「サヨナラの意味」のMVの、あのファンタジックな衣装に身を包んだ橋本が、ひとりでセンターステージに登場したのが肉眼で見えた。会場を見渡し、ゆっくりと溜めをつくって、客席に向かって一礼する。「サヨナラの意味」のイントロが始まった。万感の思いがあふれ出たような無言の一礼は、もはや武道や芸道のような美しさをたたえていて、橋本が歩いてきた5年半の道のりが思われた。音響や照明の演出も含めて、あのときの光景があまりに美しかったから、今日までグループのファンであり続けたのかもしれないとさえ思う。

 この日のライブは「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」の1日目でもあったが、橋本の卒業コンサートを兼ねていたことから、バースデーライブとしては(「全曲披露」は維持しつつも)リリース順の披露という従来のコンセプトはほぼ手放されることとなった。「サヨナラの意味」で始まった冒頭のブロックでは表題曲が立て続けに披露されたのち、MCを挟んだ前半のブロックで1stシングルから16thシングルまでのカップリング曲が1曲ずつ順に披露され、これをもって5年間の歩みを振り返るという形がとられた。橋本が参加した楽曲もしていない楽曲もあったが、全体が橋本の選曲によるセットリストであるとの説明であった。

 その後は盛り上がる曲のブロックがあり、アンダー曲のブロックがあった。この日が同じく誕生日であった伊藤万理華とともにセンターポジションに立ち、橋本が(自身の好きな曲であるという)「生まれたままで」に参加したことも大きなトピックであった。選抜メンバーを含めた全体でパフォーマンスが終えられたのち、万理華へのサプライズで運び込まれた誕生日ケーキは、橋本の計らいによるものであったという。また、橋本は卒業コンサートを「全曲センター」とする提案があったが固辞したとも明かしており、ライブの端々にそんな彼女の人柄や姿勢がにじんでいた。

 ひとつ、ライブが終盤へ向かっていくなかで、多くのファンの記憶に残っているのは、「急斜面」が演じられなかったことではないだろうか。14thシングルのカップリングであったその曲は、“御三家”と呼ばれた白石麻衣・松村沙友理との3人でのユニット曲で、当然ながらこの日がオリジナルメンバーによる披露の最後のチャンスであった。かわって、“御三家”は「Threefold choice」を披露したが、これは2016年12月6日「Merry Xmas Show 2016 〜選抜単独公演〜」1公演目でも、橋本による1人1曲プロデュースで選ばれた楽曲・メンバーでもあった6

あの日の客席で(個人的な思い出話)

 ここでひとつ、さして関係のない思い出話をさせてほしい(読み飛ばしていただいてかまわない)。

 ステージバック席500レベル、Nゲート519扉3列442番。あの日のさいたまスーパーアリーナで、筆者にあてがわれたのはその席だった。暇があれば座席表を見てみていただきたいのだが、天空の果てから数えて2番目みたいな席であった。先にも少し触れたが、ステージの真後ろではなかったぶん花道やセンターステージはいくぶん肉眼で見られたものの、むしろステージバック席用のスクリーンが斜め方向でかなり見にくく、どこに目をやればいいのかなかなかわからなかったことを覚えている。ライブの終盤は、双眼鏡をのぞいてスクリーンをなんとか見ていただろうか。

 隣の3列441番、筆者よりもうひとつステージから離れた本当の「果て」の席には、開演直前まで誰も現れていなかったが、影ナレが始まらないくらいのタイミングで筆者より歳のほどはもう少し上くらいの男性が現れた。ぎょっとしたのが、いよいよ開演という段になってその男性がリュックから取り出したのが、ペンライトやタオルではなく、当時流行であったストロング系酎ハイの500mL缶2本だったということである。お酒には比較的強いほうで、普段からよく飲む筆者でも、スピードを考えて飲まないとひっくり返って寝てしまうくらいの量だ。「こんな人もいるんだ」と、はっきりいうとちょっと引いてしまっていた。

 小さな浮島のような500レベルの席には警備員もあまり巡回しておらず、すぐに会場が暗くもなったので、誰もそれをとがめることはなかった。そもそも筆者以外に気づいた者もいなかったかもしれない。その男性は躊躇なくプルタブを引いて飲み始め、ライブの中盤には2本とも飲み干してしまっていたと記憶する。それでも酔っぱらった様子もなければ、声を出したりグッズを取り出したりして応援するでもなく、むしろさらに後ろの出入り口のほうまで下がっていき、ステージやスクリーンに目をこらすでもなく、会場が照明にあてられる様子を曖昧に眺めていていたように思う。たそがれていた、と表現するとわかりやすいかもしれない。

 あのときの見切れ席とステージバック席のチケットは、一般発売のみでの販売であった。ステージバック席は乃木坂46の公演としては初めて設定されたものであり、告知が直前であったこともあってか、DAY2とDAY3の公演では当日券も出ていた。しかし橋本奈々未卒業コンサートと銘打たれたDAY1に関してはそうはいかず、2月11日の10時(このときはこの時刻からの一般発売であった)からいっこうにつながらない楽天チケットの画面と何時間もにらめっこをすることを強いられた。結局15時過ぎ(!)になって半分諦めたころにようやくつながり、予定枚数終了の表示をリロードしたら△の表示が復活して、薄氷を踏む思いでチケットを手に入れたという記憶がある。

 何が言いたいかというと、さいたまスーパーアリーナの客席でストロングの酎ハイをあおっていたあの男性も、たぶん楽天チケットの画面とにらめっこをした仲間であったはずだということだ。あるいはまあ、当時はいまほどはチケット転売への対策が進んでいなかったから、オークションで競り落としたチケットだった可能性もないではない。しかしいずれにせよ、申し込んだら当たっちゃった、みたいなことではあの座席には行きつかなくて、どこかの局面でなんらかの強い思いをもって臨まなければならなかったということだ。

 だからといって別に客席でお酒をあおることが肯定されるわけではないのだが、あの男性はあの日、どうにかして自分のなかで整理をつけて、橋本とお別れをしなければならなかったのかもしれないと、いまでもそんなふうに思い出すのだ。筆者より歳のほどは少し上と書いたが、いまの筆者と同じくらいだったようにも思う。あれから5年の加齢とともに、同じだけのファン歴を積み重ねてもみて、ああなってしまう気持ちはわからないでもない。ライブ会場ではさすがに飲まないが、中元日芽香や堀未央奈の卒業発表があった日の夜は、もう少し飲んでから寝ようかな、とコンビニに出かけたことを思い出す。ああはなるまいと思いつつ、特に迷惑をかけられたわけではなかったこともあり、ある意味では愛すべき、人間の弱さだと思ってしまう部分もある(ただの酒飲みの連帯意識だろうと誹られれば、返すことばはひとつもないが)。

 あの男性は、あれからの橋本奈々未のいない毎日をどのように過ごし、いまどのような生活を送っているのだろうか。橋本の幻影を追いながら乃木坂46を追っているかもしれないし、ずっと若いメンバーや、あるいは別のグループを推して楽しんでいるかもしれない。あるいは職場や家庭のなかでの役割に精を出して、アイドルのライブに通っていたことは遠い過去になっているかもしれない。橋本のいた日々の先にあった今日が、彼にとって幸せなものであってくれればいい。別にどうでもいいことなのだけれど、いまでも少しだけ、そうやって考えることがある。

「その子の名前、橋本奈々未」

 えらく話がそれてしまったので、元に戻したい。ライブ本編は、最後のMCで橋本からメッセージを送られる場面もありつつ、「孤独な青空」で終了。アンコールに向かうためのステップといった感じさえもある少しあっさりした終わり方だった。アンコールは橋本の姿をまとめたVTRで始められ、ナレーションは白石麻衣が務めた。「好きとか嫌いとかじゃない、いつも一緒だった彼女。その子の名前、橋本奈々未——」。

 この日もやっぱりそこまでは、橋本は超然とというか、淡々とというか、そんなふうな表現が似合うようなたたずまいだったように思う。序盤では少し感情がこみ上げている様子がみられる場面もあったものの、「偶然を言い訳にして」では、同級生の橋本の前で子どもみたいに首を振って泣く白石の肩を抱き、「やさしさとは」や「孤独兄弟」などの橋本を象徴する曲も、徹頭徹尾“橋本奈々未”のままで最後の披露を演じきっていた。

 しかし、VTRが終わってひとりステージに登場した橋本は、最初から感極まっている様子であった。「今日で、卒業します」と、やはり端的なことばで口を開いたが、少し言葉が詰まる。がんばれ、というお決まりのかけ声に「頑張ってるよ」と茶目っ気をこめて応じて、目に涙をたたえながら、少しずつことばを紡いだ。

「私が『ないものねだり』っていう曲を歌ってるけど、『ないものねだりしたくない』って歌ってるけど、こんなに素敵な景色を何度も何度も目の前にしてるのに、別の道を進みたいと思うのが、一番のないものねだりだな、と感じています。
 けど、私が選んだその先に、正解があると信じています。」

(2017年2月20日「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY1アンコール、橋本奈々未)

 そこから歌唱された「ないものねだり」でも、声が詰まって歌えなくなる場面があった。しかし橋本は大粒の涙をこぼしながら、最後まで歌いきる。歓声に「ありがとうございました」と応えると、紅白歌合戦で「サヨナラの意味」を披露した際の衣装に身を包んだメンバーがステージに登場。メンバーを代表し、声を震わせながら橋本への手紙を読んだ白石の姿が、前年の深川麻衣の卒業コンサート(2016年6月16日)で深川への手紙を読んだ、橋本の姿に重なった。「かわいいよ」「そっちこそ」とやりとりをして、少しのMCを挟んだ。そののち、最後の曲「サヨナラの意味」のイントロが始まった。

 ムービングステージに乗ってアリーナを一周する橋本を、全メンバーが見守り、見送るような形で展開されたパフォーマンス。間奏では客席に声をかけ、落ちサビでは「ピース」を見せた。3回繰り返されたラスサビの2回目でもう一度メインステージに戻った橋本が、フォーメーションのセンターに立つ。このときの橋本の衣装は、あつらえられたものではなく既製品の洋服だったと伝えられる。あれから数々の卒業コンサートが重ねられてきたが、その最後では、卒業メンバーが豪華なドレスなどを着て、そのまわりにTシャツや歌唱衣装をまとったメンバーが集まることが多い。華やかな衣装のメンバーに囲まれたセンターポジションに、(高級感は目を引くだろうが)そのまま街も歩けるような装いの橋本が立っていることが、「サヨナラ」をあまりにも美しく象徴していた。

 最後のパフォーマンスを終えた橋本は、ステージ上でのメンバーとお別れをし、ひとりでメインステージを歩いて客席へ最後のお別れをした。サッとこちらに背を向けて、ゴンドラに乗る。「ありがとうございました。みなさん、さようなら」。アイドル・橋本奈々未が、空高くに吸い込まれていくように姿を消す。ゴンドラがステージセットの最上部までせり上がったのち、ステージバック席の一角で緑のペンライトが揺れる。その日彼女を直接視界にとらえることのなかった客席にも、橋本は最後に姿を見せたのだった。あまりにも完璧な別れのステージ。ダブルアンコールの声はあがらなかった。

 その後、この日から2月23日まで放送された「GIRLS LOCKS!」(「SCHOOL OF LOCK!」内、事前収録)の放送をもって、橋本はすべての芸能活動を終了した。最後のブログ更新は、グループのデビュー5周年となる2月22日であった。「すべての思いを置いてきた」とした最終日の「GIRLS LOCKS!」では、自らも学生時代に聴いていたという番組への思いを改めて語るとともに、改めて次の道に進む決意を語り、「人は必要なときに必要な人と出会う」ということばを残した。涙とともに、最後の別れ。「したっけ!」が、“乃木坂46・橋本奈々未”の最後の声となった。

あの日からの「サヨナラの意味」

 橋本が卒業してからの「サヨナラの意味」は、ある頃までは、少し扱いの難しい楽曲となっていたように思う。「ハルジオンが咲く頃」とあわせて「卒業センター」の印象がかなり強かったこともあってか、これらの2曲は大きなライブでセットリストに入らない時期がしばらく続いた。

 ただ、「サヨナラの意味」に関しては、リリース直後のこの年からすでに「卒業式で歌った」といった声が寄せられるなど、「サヨナラ」「卒業」を思わせる曲として、「スタンダードナンバーとなった」とも評される現在のそれにつながる評価を受けていた。事実、2017年3月30日の「CDTV春スペシャル 卒業ソング音楽祭2017」と4月7日の「Love music プレゼンツ桜フェス2017 門出」において、「卒業ソング」としての取り扱いで披露されたということもあった。これらの機会でセンターを務めたのは、齋藤飛鳥。この間の時期においては、橋本と姉妹のような紐帯のあった彼女が、センターポジションを守っていくことになる。

 橋本の卒業後、この年に開催されたライブとしては「セブン-イレブン限定ライブ」の3公演および、アンダーライブでの表題曲全曲披露企画のみでしか、「サヨナラの意味」は披露されていない。ミディアムテンポの楽曲は確かに夏のライブにはなじみにくくも感じるが、「真夏の全国ツアー2017」のセットリストには加えられず、グループとしての記念碑的な公演となった東京ドーム公演でも演じられることはなかった。2018年の「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」は夏に延期され、当面は全体でのライブもないかという状況であったが、そのなかでファンによる全楽曲を対象とした投票が行われた「ファンが選ぶ! 乃木坂46ベストソング歌謡祭」で1位となり、「乃木坂工事中」#145(2018年3月5日)では久しぶりに披露の機会があった。

 延期を経て開催された「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」(2018年7月6-8日)では、明治神宮野球場・秩父宮ラグビー場の2会場での「シンクロニシティ・ライブ」として行われた一方、バースデーライブとしての「全曲披露」のコンセプトは手放された。DAY1およびDAY2では「サヨナラの意味」の披露はなかったが、それは特に不自然というわけでもなかった。しかし、DAY3で唐突にセットリストに入る(そこまで「日替わり」の感のあるセットリストでもなかったにもかかわらず)。全メンバーによるフルサイズの公演7としては橋本の卒業以来の披露であり、客席からは歓喜を含んだざわめきが起こったことをよく覚えている8

 2019年に入ると、またしだいに披露の機会が増えていった。ふたたび「全曲披露」のコンセプトで開催された「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」では、2日目(2019年2月22日)の本編最後で演じられた。この日には、橋本卒業後に初めて「ないものねだり」も披露され、加入したばかりの4期生11人が声を合わせて歌った9。また、これに先がけて開催されていた「NOGIZAKA46 Live in Taipei 2019」(1月27日)でも披露されたほか、3月21日の「CDTVスペシャル! 卒業ソング音楽祭2019」でも、2年ぶりに音楽番組での披露の機会があった(ここまでのセンターはすべて齋藤飛鳥)。さらに「衛藤美彩卒業ソロコンサート」(3月19日)では、衛藤自身の選曲によりソロ歌唱の形で披露されている。

 雰囲気が少しずつ変わりつつあったなかで、もうひとつこの楽曲の取り扱いに関して作用したように思うのが、橋本と同じ北海道出身で、バスケットボール部出身という共通点もあった金川紗耶の加入である。「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ ~4期生ライブ~」(5月25日)では、全員センター企画のうちの1曲として金川の選曲により「サヨナラの意味」が演じられた。ある意味で新メンバーだからこそできる、ピュアな選曲であったともいえるかもしれない。金川は4期生11人で出演した「AGESTOCK2019」(11月16日)でもこの曲のセンターに立っている。年が明けて2020年になると、2月22日の「8th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY2で齋藤飛鳥のセンターで披露されたほか10、3月7日に開催予定であった「『乃木坂46のオールナイトニッポン』presents 乃木坂46 2期生ライブ」では、橋本のことを敬愛し、「奈々未さんリスペクト軍団」を自称していた伊藤純奈が、ライブ中の全員センター企画において選曲していたことをこの日に配信された「幻の2期生ライブ@SHOWROOM」において明かしている。

 この頃から世界的なコロナ禍が本格的に始まっていくが、いわゆる「自粛期間」を挟み、さらに「サヨナラの意味」の取り扱いは変化を見せることになる。次なる披露の機会は、延期を経て配信の形で開催された白石麻衣の卒業コンサート、「NOGIZAKA46 Mai Shiraishi Graduation Concert ~Always beside you~」(2020年10月28日)であった。グループとして初めてのフルサイズの配信ライブの機会でもあったこのライブでは、白石が全曲に出演し、フォーメーションダンスでは全曲でセンターを務めた形であったが、ここには全メンバーで演じられた「サヨナラの意味」も含まれた。このときを契機に「卒業を思わせる曲」もしくは「最後に歌いたい曲」として、よりストレートに扱われるようになっていったように思う。

 翌年の2021年には、配信で行われた「9th YEAR BIRTHDAY LIVE」(2月23日)では1期生によって齋藤飛鳥のセンターで披露され、3月28日の「9th YEAR BIRTHDAY LIVE ~2期生ライブ~」では伊藤純奈が再度選曲してセンターを務めた。伊藤純奈は選曲の理由について、1期生へのリスペクトをあげた上で「本当のラストチャンスだと思った」と語った。語りのパートのBGMには「やさしさとは」が選曲され、直接名前を出すことはなかったが、橋本への敬愛の念を色濃くにじませた。翌日3月29日には、「CDTVライブ!ライブ!4時間スペシャル」で4期生11が「4番目の光」MV撮影地である茨城県・旧上岡小学校でパフォーマンスしたが、このときはセンターを賀喜遥香が務めている。

 この4期生による披露あたりを契機に、また少し楽曲のとらえられ方が変わったような印象をもっている。橋本以外にこの曲のセンターを務めてきたメンバーは、(アンダーライブでの表題曲全曲披露企画を除くと)齋藤飛鳥、伊藤純奈、金川紗耶であり、「そのメンバーがセンターである理由」が客観的に説明しやすいメンバーが務めてきた、という印象がある。このときの賀喜遥香は、そこからは外れたメンバーであったように思う。そしてさらに次の披露機会は、5月9日の「9th YEAR BIRTHDAY LIVE ~3期生ライブ~」においてであったが、このときは「衣装」にクローズアップしたパートでの披露であり、2016年の紅白衣装を「好きな衣装」として選んで着用した山下美月がセンターを務めた。橋本へのリスペクトは当然あるとしても、「橋本のことを(明示的/黙示的に)語らなくても『サヨナラの意味』は演じられうる」。それぞれのフックで演じられたこの2回の機会で、そんなふうに、楽曲としてさらにストレートに扱いやすくなったと個人的には感じている。(※この1段落分については、筆者の事実認識に不足があり、問題がある記述でしたので、取り消させていただきます。以下、詳細は脚注に記します。12

 このときから13現在までにおいては、メンバーの卒業に際して演じられる楽曲としての取り扱いとなっている。松村沙友理の最後のライブであった「さ~ゆ~Ready? ~さゆりんご軍団ライブ/松村沙友理 卒業コンサート~」DAY2(2021年6月23日)と、高山一実の最後のライブであった「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」DAY2(11月21日)では、それぞれアンコールでのスピーチを終えた直後の楽曲として、松村・高山をそれぞれセンターに置いて演じられた。2022年2月10日の「新内眞衣卒業セレモニー」でも、同様にアンコールにおいて、新内がセンターの形で披露されている。「真夏の全国ツアー2021」では初めてツアーのセットリストにも加えられたが14、これは開催に際して行われた「夏ツアーで聴きたい曲トップ“10”」の表題曲部門で5位となったことによるものであり、生田絵梨花のセンターで4公演で演じられた。2021年末をもってグループを卒業した生田は、12月14-15日の卒業コンサートでは「サヨナラの意味」を披露しなかったが、ツアーにおけるセンターが齋藤飛鳥ではなく生田であったことに関しては、卒業に際しての思いがあったように感じられてならない15

 思えば、齋藤飛鳥のセンターによる「サヨナラの意味」の最後の披露から、もう1年が経とうとしている。28枚のシングルのうち、19枚ぶんのオリジナルのセンターがすでにグループにいないというなかで16、「インフルエンサー」の山下美月・与田祐希、「ハルジオンが咲く頃」「シンクロニシティ」の梅澤美波など、後輩メンバーがセンターとして固定される傾向の楽曲もみられるようになってきたが、ここまで変遷のある楽曲というのもある意味特異だ。グループを象徴する楽曲としてとらえられる一方、誰もがそれぞれに強い思いをもっていることが、このような道をもたらしてきたといえるのではないだろうか。

 

(参考)「サヨナラの意味」歴代披露一覧

※記事公開日までのものを記載。テレビ番組とライブの機会に限ることとし、それ以外のものは省いた。Cはセンターメンバーの意で、特記のないものは橋本。

2016年
・10月28日「日テレHALLOWEEN LIVE 2016」(初披露)
・10月31日「ハロウィン音楽祭2016」(テレビ初披露)
・11月4日「MUSIC STATION」
・11月6日「シブヤノオト」
・11月6日「乃木坂工事中」#79(スタジオライブ)
・11月12日「乃木坂46SHOW!」
・11月15日「うたコン」
・11月17日「ベストヒット歌謡祭」
・11月17日「Rの法則」(“乃木坂文化祭”)
・11月23日 幕張メッセ全国握手会ミニライブ
・11月29日「ベストアーティスト2016」
・12月6日「Merry Xmas Show 2016 〜選抜単独公演〜」1公演目
・12月7日「FNS歌謡祭2016 第1夜」
・12月7日「Merry Xmas Show 2016 〜アンダー単独公演〜」1公演目(全員センター企画、C渡辺)
・12月8日「Merry Xmas Show 2016 〜選抜単独公演〜」2公演目
・12月16日「堂本兄弟2016 もうすぐクリスマスSP」
・12月17日 ポートメッセなごや全国握手会ミニライブ
・12月23日「ミュージックステーションスーパーライブ2016」
・12月31日「第67回NHK紅白歌合戦」

2017年
・1月1日「CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ2016→2017」
・1月14日 京都パルスプラザ全国握手会ミニライブ
・2月20日「5th YEAR BIRTHDAY LIVE DAY1 〜橋本奈々未卒業コンサート〜」(2回披露)
・3月30日「CDTV春スペシャル 卒業ソング音楽祭2017」(C飛鳥)
・4月7日「Love music プレゼンツ桜フェス2017 門出」(C飛鳥)
・4月21日「アンダーライブ 全国ツアー2017 ~関東シリーズ 東京公演~」2公演目
  (「ファンタスティック3」企画で全表題曲披露、C佐々木)
・7月29日「セブン-イレブン限定ライブ」インテックス大阪(C飛鳥)
・9月9日「セブン-イレブン限定ライブ」幕張メッセ(C飛鳥)
・9月29日「セブン-イレブン限定ライブ」ポートメッセなごや(C飛鳥)

2018年
・1月20日「ALL LIVE NIPPON Vol.6」(新内+井上苑子)
・3月5日「乃木坂工事中」#145(「ファンが選ぶ! 乃木坂46ベストソング歌謡祭」、C飛鳥)
・7月8日「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY3(神宮・秩父宮で2回披露、C飛鳥)

2019年
・1月27日「NOGIZAKA46 Live in Taipei 2019」(C飛鳥)
・2月22日「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY2(C飛鳥)
・3月19日「衛藤美彩卒業ソロコンサート」(衛藤)
・3月21日「CDTVスペシャル! 卒業ソング音楽祭2019」(C飛鳥)
・3月28日「ZIP!春フェス2019」(C飛鳥)
・5月25日「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ ~4期生ライブ~」(C金川)
・11月16日「AGESTOCK2019」(4期生、C金川)

2020年
・2月22日「8th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY2(C飛鳥)
・3月7日「幻の2期生ライブ@SHOWROOM」(C純奈)
  ※本来開催予定であった2期生ライブの全員センター企画で披露する予定だった楽曲の紹介という形で取り扱われ、伊藤純奈による歌唱の場面はあったものの、ライブパフォーマンスという形ではなかった。
・10月28日「NOGIZAKA46 Mai Shiraishi Graduation Concert 〜Always beside you〜」(C白石)
・12月21日「CDTVライブ!ライブ!クリスマスSP」(日向坂46、C金村)
  ※「乃木坂46×日向坂46 スペシャルコラボ 2020年カラオケランキングTOP10」として乃木坂46の楽曲が10曲披露されたが、「ガールズルール」と「サヨナラの意味」は日向坂46によって披露され、「シンクロニシティ」は両グループがコラボの形で披露した。

2021年
・2月23日「9th YEAR BIRTHDAY LIVE」(1期生、C飛鳥)
・3月28日「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜2期生ライブ〜」(C純奈)
・3月29日「CDTVライブ!ライブ!4時間スペシャル」(4期生、C賀喜)
・5月9日「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜3期生ライブ〜」(C山下)
・6月23日「さ~ゆ~Ready? ~さゆりんご軍団ライブ/松村沙友理 卒業コンサート~」DAY2(C松村)
・7月15日「真夏の全国ツアー2021」大阪公演DAY2(C生田)
・7月18日「真夏の全国ツアー2021」宮城公演DAY2(C生田)
・8月15日「真夏の全国ツアー2021」愛知公演DAY2(C生田)
・8月21日「真夏の全国ツアー2021」福岡公演DAY1(C生田)
・11月21日「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」DAY2(C高山)
・12月11日「MTV Unplugged:Nogizaka46」(生田・久保)

2022年
・2月10日「新内眞衣卒業セレモニー」(C新内)

 

改めて問う、“サヨナラの意味”

 改めて、橋本奈々未のグループ卒業から、今日でちょうど5年である。表題曲として当時過去最多の19人であった「サヨナラの意味」のオリジナルメンバーは、秋元真夏、齋藤飛鳥、北野日奈子の3人しかすでにグループにいない。それでも、「これからも私は乃木坂(2019年9月1日「真夏の全国ツアー2019」千秋楽公演)と口にしながら卒業していった、初代キャプテン・桜井玲香が「卒業生チーム(『月刊エンタメ』 2021年12月・2022年1月合併号 p.68)と呼んだように、卒業生たちの活躍をメディアで目にしない日は一日たりともなく、大きな運動体としての「乃木坂46」は広がり続けているという印象をもつ。当時のフォーメーションを改めて見てみると、並んでいるそうそうたる面々の名前にいまでも新鮮な驚きがあるし、YouTubeチャンネルでひとりずつプロフィールが公開されるという形で世に出てきた5期生についても、かなりの話題性をもって世間に受け取られたという驚きを含んだ印象もある。

 そうした、過去も現在も未来も、現役生も卒業生もすべて含んだ総体としての「乃木坂46」にあって、あの日確かにセンターポジションに立っていた橋本の存在は、やはり特異だ。「芸能界引退」といっても、このSNS時代である。われわれの前から完全に姿を消すメンバーというのもかなり稀だが、橋本はそのうちのひとりにあたる17。卒業後の人生やいでたちが伝えられることも(絶無であったわけではないが)ほぼなく、その決然とした生き方は、あまりにもわれわれの知る橋本奈々未のそれである。

「今日みなさんと私がお別れして、その先にあるみなさんの道に、楽しいこと、嬉しいこと、幸せなこと、これでよかったと思えることがたくさんあることを願っています。」

(2017年2月20日「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY1アンコール、橋本奈々未)

 「サヨナラの意味」の歌詞は「サヨナラに強くなれ」と投げかけ、「この出会いに意味がある」と歌うが、タイトルは少し角度が異なり、「サヨナラ」の「意味」そのものを考えさせる。この楽曲を聴くたびに、あれから28人ぶん重ねられてきたメンバーの卒業に接するたびに、現役メンバーと卒業メンバーの総体としての乃木坂46というグループを考えるたびに、あの日真ん中にいた橋本のことが思われる。いまも鮮やかなあの日の記憶を反芻し、思い出の世界から目を開いたとき、そこにある163cmの空白。「あの日お別れをしたこと」こそが、われわれと橋本のあいだにある最後の紐帯である。

(前略)……この5年間で私が乃木坂46でどんな役割を果たせたかは分かりません。メンバーやファンの方が寂しいと感じてくれたり、ぽっかりと穴が開いたと感じる部分があれば、そこが私の果たせたことなのかなと思います。

(『日経エンタテインメント! アイドルSpecial2017』p.23)

 漠然と「自分に正直にありたい」と思い続けてきました。それが今の私にとって何よりの目標ですし、ずっと達成していきたい。それを実現するために自分の選択は間違ってなかったと思うし、今後もそれを実現できるよう、日々を過ごしていけたらいいなと思っています。

(『日経エンタテインメント! アイドルSpecial2017』p.23)

 2017年2月20日、緑一色に染まったさいたまスーパーアリーナ。あの場所で、橋本のたたずまいが最後に問いかけた“サヨナラの意味”をずっと考え続けた1826日間であったし、それはこれからもきっと変わらないだろう。こうして生きてきたことも正解だったのだと思うし、あるいはこれでよかったと願うよりほかない。

 

 –

 

 ここまでを大筋としてはすでに書き終えていた2022年1月31日、筆者にとってもっとも思い入れの深いメンバーである北野日奈子が、グループからの卒業を発表した。卒業後の身の処し方を北野ははっきりとは明かしていないが、“サヨナラの意味”を、改めてさらに考えさせられる日々が続いている。何年間も見届けてきたグループから北野日奈子がいなくなることについて、どうにかして自分のなかで整理をつけなければならない(できれば、お酒をあおったりするようなやり方でではなく)。よりいっそう、考えても考えても答えは出ないが、彼女のいる世界を生きてきた日々を肯定しながら、これからの日々を後悔のないように過ごしていくよりほかない。

(北野については、卒業前後のタイミングで改めて書くつもりでいる。)

 

 

 

 

 

  1. 堀未央奈、松村沙友理、伊藤純奈、渡辺みり愛、大園桃子、高山一実、寺田蘭世、生田絵梨花、新内眞衣、星野みなみ。加えて、北野日奈子が4月いっぱいでの卒業を発表しているという状況にある。
  2. 永島聖羅が2015年12月17日の「アンダーライブ at 日本武道館」DAY1で卒業発表をしていたという背景もあったが、結局のところ、現在に至るまでグループ全体のライブの場で卒業発表をしたメンバーはいない(ほか、ライブの場で卒業発表をしたのは、2018年5月20日の「アンダーライブ全国ツアー2018〜 中部シリーズ〜」千秋楽での斎藤ちはる・相楽伊織と、2018年10月5日の「アンダーライブ全国ツアー2018〜 北海道シリーズ〜」千秋楽での能條愛未)。
  3. 12月6日の初日公演において。メンバーに対してもサプライズの形であった。
  4. イジリー岡田、杉山勝彦、バナナマンからのメッセージVTRが流された。「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」の開催も、このなかでバナナマンによって発表されている。なお、ここでいう「ミリオン」とは、出荷枚数100万枚超えでの日本レコード協会によるミリオン認定であり(発売日当日の追加出荷で達成され、このときに橋本らのコメントともにニュースにもなっている)、オリコン調べによる実売100万枚超えは次のシングルである「インフルエンサー」が初めてであった。
  5. このときも、2幕のあとのミニライブを控えた幕間での出演であり、3期生と並び立ったわけではなかった。ただ、「3人のプリンシパル」は中村麗乃と梅澤美波が体調不良で欠席した公演があったものの、この日の公演には全員が揃っており、橋本は3期生12人全員の舞台上での姿を目にしたということになる。
  6. 「Threefold choice」は、翌日の2日目公演においてもセットリストに含められ、オリジナルメンバーである齋藤飛鳥・星野みなみ・堀未央奈によって演じられてもいる。また、こうした経緯もあり、「急斜面」はその後のライブにおいて披露機会の少ない楽曲となった。翌日の2日目公演で高山一実が橋本のポジションに入って披露されて以降は、2019年2月22日の「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY2(橋本のポジションに梅澤美波)、2020年2月22日の「8th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY2(橋本のポジションに高山、この日欠席の白石のポジションに新内眞衣)と、「全曲披露」のバースデーライブに限られる状況が続いていたが、白石の卒業を経たのちの2021年6月22日・23日の「さ~ゆ~Ready? ~さゆりんご軍団ライブ/松村沙友理 卒業コンサート~」において松村沙友理がソロで歌唱しつつ、曲中で松村を照らす赤いピンスポットライトに、白石と橋本のカラーである青と黄のスポットライトが重なるという形でパフォーマンスされ、4年越しに松村がすべての文脈を回収しながら卒業していったような形となった。
  7. 迂遠な言い回しになっているが、全国握手会などのミニライブ、アンダーライブや期別ライブ、音楽番組、その他のイベントなどを除いた、いわゆる「乃木坂46のライブ」のことを指す言い回しである。ライブについて「フルサイズ」という言い回しを筆者はよく用いるが、楽曲が「フルコーラス」であった、という意味ではない(よりよい言い回しがあれば教えていただきたいです)。
  8. なお、「ハルジオンが咲く頃」も、このあとの「真夏の全国ツアー2018」愛知公演1日目(8月26日)において披露されたが、これは全メンバーによるフルサイズの公演としては「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY3(2017年2月22日)以来のことであった。それ以外の披露の機会も、この間はアンダーライブでの表題曲全曲披露企画と、3期生による単独公演のみであり、音楽番組での披露もなく、「サヨナラの意味」と同等かそれ以上のブランクがある状態であったということができる。「真夏の全国ツアー2018」地方公演は、「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」が「全曲披露」ではなかったことに対する補完の意味もあってか、グループの歴史を振り返るようなブロックが設けられており、時間の経過とともに演じられる回数が減っていたような曲がセットリストに加えられていた。これに加えてメンバーの1人1曲プロデュースの「ジコチュープロデュース」企画もあったことにより、当然ながら「全曲」が網羅されていたわけではないが、「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」とあわせた「真夏の全国ツアー2018」全体では、当時のグループの持ち曲(21stシングルまで)170曲のうち100曲強がセットリストに入ったことともなった。
  9. 「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」において4期生(2018年加入の11人)は、自己紹介などの「4期生パート」のほか、卒業メンバーのソロ曲を全員で演じるという形でライブに参加していた。該当する披露楽曲は、「水玉模様」(生駒里奈)、「強がる蕾」(深川麻衣)、「ないものねだり」(橋本奈々未)、「自分のこと」(中元日芽香)。このとき4期生11人は、このほかに「サイコキネシスの可能性」「ハルジオンが咲く頃」「傾斜する」を演じた。
  10. 「ないものねだり」は2月24日のDAY4で、卒業生のソロ曲を集めたブロックで白石麻衣・松村沙友理によって披露されている。歌唱の最後ではふたりによって「ななみ」のハンドサインが送られた。橋本については、芸能界から完全に離れたこともあって、メンバーが直接言及することははばかられる(という様子がうかがえる)状況が長らく続いていたが、「乃木坂工事中」などでは設楽統があえて言及する場面がみられたし、むしろ後輩メンバーのほうが自然に名前を出すこともあり、そこまで厳しいルールというわけでもなかったようである。このときには白石麻衣はすでにグループからの卒業を発表していたという状況でもあったが、この頃から少しずつまた、1期生や2期生からも橋本への思いが表現されることが多くなってきたという印象がある。
  11. いわゆる新4期生を含み、このとき欠席であった遠藤さくらを除いた15人。
  12. (記載の取り消しについて)本記事にいただいているコメントがすべてであるが、賀喜遥香に関しても「サヨナラの意味」および橋本奈々未には並々ならぬ思いをもっているようであり、かつ、それを表明してきた機会も数々あった(と教えていただきました)。バスケットボール部出身という共通点は金川紗耶と同じく橋本と重なるポイントであり、このときの「CDTVライブ!ライブ!4時間スペシャル」の直後である2021年4月8日からは橋本もかつてレギュラー出演(コーナー「GIRLS LOCKS!」において)していた「SCHOOL OF LOCK!」に、木曜日の「ARTIST LOCKS!」コーナー(「乃木坂LOCKS!」)のレギュラーとして出演を開始している。また、ベストアルバム「Time flies」の際のプレイリスト企画「#わたしの乃木坂ベスト」では4曲目に「サヨナラの意味」を選曲しており(筆者はこれまで、この選曲は「CDTV」でセンターを務めた経験からなされたものだとなんとなく思ってしまっていたが、おおむね彼女にとっての時系列順に並べられているように見える曲順にあってはそれより早く、今回の指摘をふまえて改めて見ると、「サヨナラの意味」の置き位置は「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ ~4期生ライブ~」[2019年5月25日]での「(当初より好きな楽曲であった「サヨナラの意味」の)自身にとっての初披露」ということであるようにも思える)、カスタムジャケットでも2016年の紅白衣装を着用衣装に選んでいる。「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜3期生ライブ〜」における山下美月の披露に関する記述については誤りや認識不足があるということではないつもりだが、段落全体の趣旨をふまえ(なくても特に次項以降も読めるので)、このような形とさせていただく。
  13. 前項で取り消す形とした記述のなかに入ってしまっているが、2021年3月29日の「CDTVライブ!ライブ!4時間スペシャル」での披露に続き、5月9日には「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜3期生ライブ〜」で山下美月がセンターの形で披露されており、そのときから、という趣旨である。
  14. 前述の、「真夏の全国ツアー2018」の一部としての取り扱いであった「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY3(2018年7月8日)を除く。
  15. ツアー時点では生田は卒業発表をしていなかった。また、2021年12月11日放送の「MTV Unplugged:Nogizaka46」では、久保史緒里とふたりで歌唱する形で「サヨナラの意味」を披露している。このときが生田が乃木坂46のメンバーとして「サヨナラの意味」を披露した最後の機会であり、グループ卒業直前という機会をとらえた特別なパフォーマンスともなった。
  16. ダブルセンターのひとりである与田祐希が現在も所属している「逃げ水」、同じく齋藤飛鳥が現在も所属している「いつかできるから今日できる」はカウントしていない。つまり、センターがグループに在籍しているのは、15th「裸足でSummer」(齋藤飛鳥)、18th「逃げ水」(与田祐希)、19th「いつかできるから今日できる」(齋藤飛鳥)、21st「ジコチューで行こう!」(齋藤飛鳥)、23rd「Sing Out!」(齋藤飛鳥)、24th「夜明けまで強がらなくてもいい」(遠藤さくら)、26th「僕は僕を好きになる」(山下美月)、27th「ごめんねFingers crossed」(遠藤さくら)、28th「君に叱られた」(賀喜遥香)、のシングル9枚というカウントになる。
  17. 「芸能界引退」としたメンバーも、引き続き乃木坂46合同会社に所属して心理カウンセラーとして活動しており、著書発売の際などにはメディア露出もあった中元日芽香、芸能活動を一定期間続けた後に「芸能界引退」として乃木坂46合同会社を退所したものの、プロデュース業などを手がけていくとしてSNS上での活動は続けており、イベントなどへの出演もみられる斉藤優里、SNSを継続しつつアパレルブランドを立ち上げ、YouTubeチャンネルも開設した大園桃子など、なんらかの形で姿を見られる機会があるメンバーも散見される。ただ、2021年12月に卒業した寺田蘭世は出役としての露出を一切しないとしており(事実その通りとなっている)、先日卒業した星野みなみも同様の発言をしている。

コメント

  1. 通りすがり坂 より:

    良文でした。思わず一気読みしてしまうくらい。

    一点だけ、サヨナラの意味のセンター経験者について「そのメンバーがセンターである理由」が客観的に説明しやすいメンバーから賀喜遥香は外れるとの見解ですが、彼女はオーディション時から橋本奈々未好きを公言しています。橋本在籍時に乃木坂ファンでいられなかった(←山下美月経由で乃木坂を知ったため)のは人生最大の後悔かもしれない、とも。

    グループ加入後も、例えば『MV collection2』のビジュアルコメンタリーで「乃木坂を好きになったきっかけは美月さんだけど、そこで存在を知って人生で初めて憧れた女性は奈々未さん」と語り、ないものねだりのMVを観ながら「綺麗~」と言って身悶えていました。

    好きな楽曲第一位はサヨナラの意味だと常々話していますし、このMVに関しては「死ぬときまで一緒に持って行きたい」とまで。そういう彼女の熱い想いをスタッフが汲んでいるのか、全体ライブでもサヨナラの意味以外の楽曲で、彼女は”橋本ポジション”についている事が結構多いです。

    同じラジオ番組のMCを務めることになったのも、似たような意図があるように感じます。元バスケ部で、同期の中でも「男役」をこなすなど、何かと共通点もあります。

    ですから、CDTVにて四期生でサヨナラの意味を披露したとき、彼女がセンターを務めたのには確固たる理由があり、必然だったのではないでしょうか。

    ご存知な話でしたらすみません。長文失礼致しました。

    • のぎし nogikeyaksh より:

      コメントありがとうございます。ご指摘いただいた点は完全に認識から抜けていて、お恥ずかしい限りです。
      CDTVのときに「金川さんではなかった」という第一印象があって、それを起点にすべての印象をつくっていってしまったように思います。
      とはいえ、バスケ部やSOLについてまで認識から落としてなんとなく書いてしまったのは言い訳のしようもありませんし、何より賀喜さんに失礼だったと感じます。
      当該部分は(抹消はせず、誤りと明示して残す形で)修正させていただきます。本当にありがとうございます。
      全体ライブで「橋本ポジション」に入っているということが多いというのは、着目したことがなかったポイントで(「フロントだもんな〜」くらいのイメージでした)、とても興味深かったです。

  2. 通りすがり坂 より:

    不躾にコメントを残したにも拘わず、ご丁寧な返信ありがとうございます。加筆までして頂いて、却ってお手を煩わせてしまったのではないかと申し訳ない気持ちになっています(苦笑)

    どれだけ真摯に取り組んだかが窺える本当に素晴らしい文章でしたので、読み終わった後、かいつまみながらではありますが5thバスラのday1を観返してしまいました。現地でご覧になってらしたんですよね。それもまた素晴らしい。

    動画化されているライブは一通り観ていますが、あのday1こそ乃木坂史上最高のライブだと思っています。一言で言えば、過不足がなかった。途中バタバタすることもなければ、最後グダグダになることもなく、ライブの構成も、メンバーのテンションも、涙量も、ファンの熱気も絶妙で、橋本奈々未のお辞儀に始まって、彼女がゴンドラで去って行くまで、数々の名シーンに彩られた何もかもがベストだったと五年経過した今でも感じています。

    すみません。返信に対するお礼だけ述べさせて頂くつもりが、ついつい熱くなってしまいました。次回の投稿も楽しみにしています。

    追伸

    先日開催された北野日奈子卒業コンサート&アンダーライブも非常に良かったですね。乃木坂メンバーの層の厚さを改めて実感しました。

    • のぎし nogikeyaksh より:

      改めてご返信のコメントをいただき恐縮です。
      書き手としては甘えというよりほかないのですが、でもやっぱり個人で知ったり覚えたり理解したりできるものには限界があるので、こうやって教えていただけて本当にありがたかったです。
      確かにあのDAY1は盛りだくさんだった一方でとてもバランスが良く、橋本さんの決然としたたたずまいがライブ全体を引き締めていたような印象が、思い起こしてみると感じられます。

      北野さんの卒業コンサートもアンダーライブも、未来への希望と、エネルギーのうねりのようなものが強く感じられる、良いライブでしたね。
      私は幸運にも北野さんの最後のライブを会場で見届けることができました。ことばにならない部分も多いですが、次に書くのは彼女についての記事になると思います。
      お時間がありましたら、またお読みいただけたらとても嬉しく思います。

      重ね重ねになりますが、ありがとうございました。

  3. 俺の名は希望 より:

    スーパーグッド文章

タイトルとURLをコピーしました