[タイトル写真:新潟県湯沢町・越後湯沢駅ホーム(筆者撮影)]
[7]“代名詞”となった「日常」
前稿からずいぶんと間が空いてしまった。あれから冬が来て、春が来て、それももう過ぎようとしている。前稿をかなり力を入れて書いたのは確かで、しばらくは燃え尽きた感もあったのだが、それ以外に特段の理由もないまま、数ヶ月も空けてしまったことにやや驚いているくらいだ(なので、これ以降は何もなかったように書き進めていくことにする)。
北野にとって2曲目、単独としては初めてのセンター曲となった、22ndシングルアンダー曲「日常」。誤解を恐れつつもあえて単純化するならば、前稿で扱った「アンダー」は、いつからか北野がひとりで背負い込むようになった印象のある曲であったのに対し、「日常」はアンダー曲でありながら、徐々に乃木坂46というグループ全体にとっても重要な曲になっていき、多くのメンバーによって披露されるようになっていく。それは、楽曲そのものが多くのメンバーやファンを引きつけたという部分ももちろんあるが、何より北野(と、オリジナルのメンバーたち)がこの曲に並々ならぬ情熱を注ぎ、押し上げていったから、という部分も非常に大きかったと感じる。
本稿では、その「日常」についての経緯と、そこに懸けた北野の思いについて、振り返っていきたいと思う。
「その手でつかんだ光 (乃木坂46・北野日奈子の“3320日”とそれから)」目次 ・[1]家族への信頼と愛情 |
“あの頃”のアンダーライブ
筆者は、近年よく「以前のアンダーライブはもっとたくさんメンバーがいたんだよな」というようなことを、直感的に思うことがある。それは必ずしも完全に正しいというわけではなく、筆者の印象に強く残っているアンダーライブに引っ張られている面もあるのだが、傾向としてはそう称してもよいのではないかと思う。
「31stSGアンダーライブ」(2022年12月、9公演)は史上最少の10人で挙行され1、和田まあやの(そして、“1・2期生”にとっての)最後のアンダーライブとなった「30thSGアンダーライブ」(2022年9-10月、6公演)も、12人での挙行であった。かつては選抜メンバーと同程度の人数で推移していたアンダーメンバーは、グループとしてメンバーの卒業が断続的に続く一方、選抜メンバーの人数がおおむね維持されることにより、目減りと感じるような時期も長くみられてきた。
次作の32ndシングルでは、加入から1年が経過した5期生が選抜・アンダーに合流したこともあり、アンダーメンバーは17人と、再び一気に増加したこととなる2。このような、のこぎり型とも言えるような、(選抜メンバーと比べて)大幅な人数の推移もアンダーメンバーの特徴であり、いわゆる“ボーダー組”3の合流のタイミングであった12th4、3期生合流のタイミングであった20th5、4期生合流のタイミングであった28th6の各シングルにおいて、それぞれアンダーの人数は大幅に増加しているほか、新加入のメンバーの表題曲センター抜擢と同時に選抜メンバーの人数が減少した18thシングルおよび24thシングルでも大幅な増加がみられ7、一方で23rdシングルでは前作比-8人となるなど、急激な減少が見られたタイミングもあった。
その23rdシングルの前作である22ndシングルのアンダー曲が「日常」であり、アンダーメンバーは18人。それまでの時期のアンダーメンバーとしては標準的な人数規模であるという印象だが、これ以降、アンダーメンバーがこの人数を超えたことはない8。3期生の合流から3作目である一方、居並ぶ顔ぶれの3分の2が1・2期生であり、のぎ動画で配信中である武蔵野の森総合スポーツプラザでの「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」(2018年12月19-20日)の映像を改めて見返したりしていると、「ああ、“あの頃”のアンダーライブだ」というようなことをしみじみと思ったりもする9。
その「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」は、2016年にスタートした「アンダーライブ全国ツアー」の区切りの公演であり10、かつ、歴代の「アンダーライブのためだけにおさえられた会場」のなかでは最も“キャパ”の大きい(と称することもできる)会場で行われた公演でもあった11。また、前稿[4]でも触れたところであるが、かつてのアンダーライブにおける、「原則として当該シングルの表題曲をセットリストに含める」という形もこのときが最後となっているという点でも、ひとつの区切りであったと筆者はとらえている。
乃木坂46の表題曲のフォーメーションは、かつては16人が基本とされ、現在は20人程度で推移しているといえる。このようななかで、アンダーメンバーのフォーメーションが16人を下回ってくると、あくまで人数規模だけをみるならば、選抜メンバーと対置されるというよりは、期別のフォーメーションにイメージが近くなる12。12人での「30thSGアンダーライブ」、10人での「31stSGアンダーライブ」を見てきた感想としては、チームとしてのまとまりは自然と生まれやすく、それがメンバー個々のパフォーマンス力とあいまって、ライブは高いレベルにまとまっていたものの、それに続く「32ndSGアンダーライブ」を見ると、人数の多さはわかりやすくパフォーマンスの迫力につながるんだな、と感じることもあった。
いつものことながら話が遠回りして、前置きが長くなってしまっている。言いたかったのは、北野は「日常」で、18人という規模のチームのセンターに、単独で立ったのだ、ということだ。
二度目のセンター、“座長”として
アンダーセンターはアンダーライブの“座長”といわれる。さんざん書いてきたのでここではあまり立ち入って書かないようにするが、北野は18thシングル期のアンダーライブ九州シリーズでも中元日芽香とともにセンターに立ち、“座長”を務めるはずだったが、折からの体調不良の状況もあり、その任を果たしたとはいえない状況のままシリーズを終える形となっていた。
このときのアンダーメンバーも18人。しかし1年数ヶ月の時間を経て、22ndシングルは3期生までの編成となっていた。黎明期からアンダーライブを牽引してきた能條愛未が前シングル限りでグループ卒業となり、未発表ではあったものの、さまざまな場面でまとめ役を務めてきた伊藤かりんも、卒業に向けてメンバーとしてのキャリアの最終盤という頃合いであった。フォーメーションのなかで2期生は最大派閥でもあり、先輩メンバーや年長組のメンバーに引っ張ってもらうという状況ではいよいよなくなっていた。
北野のアンダーセンターと、武蔵野の森総合スポーツプラザでのアンダーライブの開催がアナウンスされた、「アンダーライブ全国ツアー2018〜北海道シリーズ〜」千秋楽(2018年10月5日)を終えた直後、北野は次のような決意を口にしている。
「単独でセンターをやるのは初めてで、すごく緊張するし、不安もたくさんあるんですけど、ちゃんと新しい風を運べるような、力強いセンターになれたらなと思います。」
(2018年11月18日「乃木坂46SHOW!」[「AKB48SHOW!」#204] 北海道シリーズ千秋楽公演終了後・北野日奈子コメント)
「新しい風を運べるような、力強いセンター」。北野は宣言した通りに、それを実践していく。特に「力強さ」という点には、彼女のパフォーマンスの特性やそれに対する姿勢、あるいは他のメンバーに引っ張ってもらってきた経緯などに加えて、体調不良による休業を経験した立場として、そこからなんとしても復活を遂げるんだ、という思いもいくぶん込められていたようにも感じる。
北野 頭にあったものは、アンダーライブがいいものになればいいなというものでした。でも、いろんな葛藤がありました。
——葛藤というと?
北野 座長の私が引っ張らないといけないけど、長らく休業していたし、復帰して2枚目のシングルでアンダーのセンターをするということでどう思われるのかも怖かったですし。だけど、そういう気持ちを全部吹き飛ばしてやるしかないと思いました。そのためには勇気が必要でしたね。休業したことで、「きいちゃんって意外と弱いんだ」って思われたと思うんです。自分でも弱さを痛感しました。でも、引っ張っていくためには強いセンターじゃないといけないじゃないですか。だから、強さと勇気を持って……アンパンマンみたいですね(笑)。(『BUBKA』2019年3月号 p.18)
あるいは、前稿[4]でも言及したところだが、21stシングルの期間を体調不良によって休業した久保史緒里がこのシングルに参加することになったのは、北野による後押しがきっかけであったものとして語られている。前稿では「乃木坂46時間TV(第4弾)」での北野とのツーショットトークを引いたが、22ndシングル期のインタビューでも同様のことが語られており、ここではそちらを引用する。
——22枚目から正式に活動を再開されるんですよね。
久保 不安もあったんですけど、(北野)日奈子さんに相談したら「しーちゃんと一緒にやりたい」と言ってくださって。その言葉が決定打になりました。今回のアンダー曲『日常』のMV撮影で仲良くなれた先輩も多くて。
——渡辺みり愛さんと仲良くなったんですよね。
久保 そうです、そうです! いろいろ取っ払って前とは変わることができた気がします。いまは自分のできることをやっていければいいなと思ってます。(『EX大衆』2018年12月号 p.84)
22ndシングルの発売日は2018年11月14日で、音源の初オンエアは10月19日の「金つぶ」、YouTubeチャンネルでのMV公開は11月1日のことであった。シングルの発売に前後してアンダーメンバーでの音楽番組への出演があり、そこでパフォーマンスの披露はあったものの、アンダーライブでのライブ初披露までの間にはやや間が空いたといえるように思う。しかし、MVや音楽番組でのパフォーマンスの激しさや力強さは、早い段階から話題になりつつあった。
——『日常』のMVの見どころを解説してもらえますか?
久保 ダンスシーンがすごくカッコよくて、特に曲終わりあたりの(中田)花奈さんのウェーブがめっちゃキレイなんです。ライブで観たらもっと美しいはず。それをふまえながら何回か再生してほしいです。あとは麗乃ちゃんが小さいスコップを持ってるところが非常にかわいい!
吉田 最後に爆破シーンがあるんですけど、特撮好きの私としてはずっと観てみたかったんですよ。念願が叶いました。メンバーの中で一番、目をキラキラさせていたんじゃないかな。爆破シーンが好きな人は観てほしいです。
久保 結構変なこと言ってるよ(笑)。吉田、いいよ〜(笑)。
吉田 爆破が好きなんですよね〜(ニコニコ)。(『EX大衆』2018年12月号 p.84)
——なるほど(笑)。さて、ここからは22枚目の活動についてお聞きしたいです。アンダー曲である『日常』は見応えのあるダンスになってます。
阪口 『三角の空き地』はどれだけキレイに見せられるかを研究していたんですけど、今回はそれに加えて感情を出していきたいと思ってます。でも、まだできなくて。中田さんのダンスがすごいなと思うんです。振りVを見てもずっと目がいっちゃう。
中田 いやいやいや(笑)。
——以前取材で久保史緒里さんも「花奈さんのウェーブがめっちゃキレイなんです」と言ってました。
中田 いや〜、ありがたい。久保ちゃんとはシンメですごく近い距離で踊ってるので、ブツからないかドキドキしてます(笑)。
——『日常』は音楽番組で披露する機会も多いですよね。
中田 昨年1月に発売されたアルバム『僕だけの君』がきっかけでアンダーメンバーが番組に出る機会が増えて、アンダーの形が変わっているかなと思います。
——振り付けがWARNERさんというのもアンダー曲では久しぶりだと思います。
中田 9枚目、10枚目とアンダーライブをロングランでやっていた時期がWARNERさんの振り付けだったので、そのときに帰ってきた気持ちになりました。
——12月19日、20日に武蔵野森総合スポーツプラザ(原文ママ)で行われるアンダーライブも楽しみです。阪口さんは2015年12月に武道館で行われたアンダーライブを観ていたとか?
阪口 はい。ステージを観て「こんなにキラキラした人たちがいるんだ!」と感動して。まだ乃木坂46に詳しくなくて知らない曲もあったけど、ステージにいる全員に惹かれたんです。
——東京でのアンダーライブは昨年4月の東京体育館以来になります。
中田 そのときは選抜だったので、東京でのアンダーライブが本当に久しぶりなんです。アンダーライブの集大成を見せることができたらいいなと思います。
阪口 アンダーならではの内に秘めた想いを吐き出すような力強いダンスを見せることができたらいいなと思います。(『月刊エンタメ 』2019年1月号 p.19)
しかし、そのエネルギーや勢いをそのままに、12月のアンダーライブにぶつかっていったということだけではないようである。アンダーライブを終えた直後には、“座長”としてのチームの舵取りや、その奥にあったアンダーライブへの思いを、北野はこのように説明している。
——強さと勇気だけが友達、ですか(笑)。
北野 そうなんです。それを味方にしないとセンターってできないんです。今回、「話し合いの時間をください」ってスタッフさんにお願いをしたんです。それを言い出すのも勇気が必要だったんですけど。最近思っていたのは、「以前のアンダーライブと何かが違うな、どこが違うんだろう?」ということでした。毎回やり切ってはいるけど、何かが足りないんです。それは、話し合いをすることなんじゃないかと思いました。以前は伊藤万理華さんやらりん(永島聖羅)さんが中心になって、「ここをこうしよう」ってリハーサルからみんなで話し合ったんです。
——最近はそれがなくなっていたんですね。
北野 自分が言いだすのはちょっとアレだったので、(伊藤)かりんちゃんに手伝ってもらって、みんなに集まってもらいました。そうすることで、「もう一度気持ちを切り替えなきゃ」って思ってもらいたかったんです。それに、アンダーライブって毎回させていただいているけど、それって当たり前のことじゃないんですよ。アンダーライブがなかった時代は、アンダーのメンバーにはお仕事が少なかったわけで、それを3期生にも伝えたかったんです。(『BUBKA』2019年3月号 p.18)
あるいは別のインタビューでは、そうした自分の行動について「私はアンダーライブのことだけを考えていたので、ひとりだけどんどん突っ走っていっちゃんたんですよね。でも、それじゃダメで。私だけが熱い火を持っているのではなく、みんなにもその火を付けていかないといけないって思ったんです。」(リアルサウンド「乃木坂46 北野日奈子が語る、活動休止と1st写真集で芽生えた良い変化『“新しい自分”を認められた』」[2019年1月14日公開])とも語っていた。そうした強い思いをもって、チームの温度を高めながら臨まれた、最大レベルの規模のアンダーライブ。そこでは、いくつものハイライトシーンがグループの歴史に刻まれることになった。
「みんなと同じ空気の温度」
このときのアンダーライブでは、座長の北野がセットリスト作りに携わっていたのだという。
北野 今回、スタッフさんに呼ばれて、セットリスト作りに携わらせてもらったんです。「『左胸の勇気』はどうしてもやりたいです」とか「この曲のセンターは○○さんがいいと思います」とか意見を言わせてもらって。……(後略)
(『BUBKA』2019年3月号 p.19)
このインタビューにおいては、この後に「アンダー」をセットリストに加えるか加えないかという話になり、北野は入れたほうがいいと言った、というエピソードが続く。近年の卒業コンサートや期別ライブでは、ほぼ全編にわたってメンバーの意向でセットリストが組まれることもあるようであるが、このときはそこまでではないにしろ、北野の思いがかなり反映されたセットリストであったといえるように思う13。
OVERTURE アンコール |
1曲目の「初恋の人を今でも」は客席がざわめくような、やや意外な選曲であった。7thシングル所収のアンダー曲で、オリジナルのセンターは星野みなみ。北野と星野の関係の近しさもいくぶん作用した選曲だったのだろうか。アンダーライブがスタートする直前のアンダー曲で、アンダーライブでの披露機会は多かったもののそのほかでの披露は少なく、さらにこのときの披露は前年の「アンダーライブ全国ツアー2017〜近畿・四国シリーズ〜」からほぼ1年ぶりであった。
キャメル色のコート風の衣装はこのときの新作で、メンバー人気も高いという印象がある。完全に冬のモチーフになるため着用機会は少ないが(別の衣装の上から着ることが前提となる点も作用しているだろうか)、近年では「30thSGアンダーライブ」においても着用されている。「初恋の人を今でも」は冬を直接描いた歌詞ではなく、MVも冬の設定とはいえないが、切なげなイントロとメロディラインは真冬のステージにいかにもマッチしていた14。
このほか、冒頭のブロックでは“熱いアンダーライブ”を象徴する楽曲である「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」「自由の彼方」、オリジナルのセンターがいる「My rule」「ブランコ」、および「転がった鐘を鳴らせ!」が披露されている。10thシングルの選抜メンバーによるカップリング曲である「転がった鐘を鳴らせ!」は、このときのアンダーライブにもオリジナルメンバーがいないくらいなのだが、会場の雰囲気を一気に明るくするためにセットリストに加えられることが多い印象で、アンダーライブでの披露機会も多い(「乃木坂工事中」の印象も強いだろうか)。このときも、曲の冒頭で北野が会場に煽りを入れている。
MCを挟み、ユニット曲が軸となるブロックに移る。「遠回りの愛情」は10thシングル所収の“94年組”による楽曲、「傾斜する」はAKB48・小嶋陽菜との混成ユニット「こじ坂46」の楽曲である。「こじ坂46」には当時の研究生15も参加していたが、当時の研究生は原則としてアンダー曲にも参加しておらず、さらにこれは11thシングル所収の楽曲である「ボーダー」よりも前の作品であるため、これらのメンバーにとっては思い入れのある作品でもあるようである16。センターは、そのオリジナルメンバーのひとりである渡辺みり愛が務めた。
このブロックにおいて、アンダーライブ恒例の“お歌のコーナー”として歌唱されたのが「私のために 誰かのために」であり、このときのライブにおけるハイライトシーンのひとつとなった。参加メンバーは、アンダーライブを歌唱力の面で支えてきた伊藤かりんと伊藤純奈、そして前述の経緯で、このとき初めてのアンダーライブ参加となった久保史緒里である。特に3期生のなかでは、すでに歌唱力に定評のあるメンバーだったといえる久保だが、このときの歌唱がひとつの転機となり、その後のさらなる活躍にもつながっていったというのは、前稿[4]でも記した通りだ。
久保「(自分にとって印象に残っているライブは)正直ほんとに、これ日奈子さんだからとかじゃなくて、2018年の武蔵野の森のアンダーライブ。でも私、あれがあったから、ライブで歌わせていただく機会が増えたんですよ」
北野「えー、もともと上手だったからあのときも歌ったんだよ」
久保「ううん、だけどそれまでって、なんかそれこそ最初の3期生ライブでソロで歌わせていただくパートとかはあったんですけど、正直それってレッスンを見て決めていただいただけだから、ファンの人の声とかで決まったわけではなかった。自分の実力が認められたわけじゃないなってずっと思ってて。でも2018年に伊藤かりんさんと伊藤純奈さんに支えてもらって、あそこからライブでソロで歌わせていただく機会がめっちゃ増えたなって思いますし、あとは……ほんとに楽しかった」
北野「良かったよねえ……」
「君は僕と会わない方がよかったのかな」は中元日芽香のセンター曲であり、彼女を象徴する曲でもあった。このときは中元にとって最後のライブとなった「真夏の全国ツアー2017 FINAL!」(2017年11月7-8日)以来、いずれのライブでも披露されないまま1年以上が経過していたという状態であった。センターを務めたのは中田花奈であったが、セットリストに加えられた背景には、ひょっとすると北野の思いもあったのかもしれない。「満月が消えた」は“生生星”、「君に贈る花がない」はサンクエトワールによるユニット曲。「君に贈る花がない」は、このライブに参加したオリジナルメンバー3人のみによる披露となった。歌唱のみで披露されるスローテンポのアンダー曲「誰よりそばにいたい」17は、樋口日奈がセンターに立って披露されることが多かった印象であるが、このときは北野がセンターポジションに立って披露されている。
再度MCを挟み、再度アンダー曲のブロックへ移る。オリジナルのセンターが参加している「自惚れビーチ」と「シークレットグラフィティー」が披露されたのち、初期のアンダー曲「左胸の勇気」「13日の金曜日」「狼に口笛を」が連ねられた。このなかで、特に「左胸の勇気」については、北野の「どうしてもやりたい」という強い希望でセットリストに加えられたようである、というのは先にも述べた通りである。
——ソロのダンスパートがハイライトだったと思いますが、自分的にはどうですか?
北野 今回、スタッフさんに呼ばれて、セットリスト作りに携わらせてもらったんです。「『左胸の勇気』はどうしてもやりたいです」とか、「この曲のセンターは○○さんがいいと思います」とか意見を言わせてもらって。そこで、『アンダー』を入れるか入れないかについての話になって、私は入れたほうがいい、と言いました。
——どうしてですか?
北野 いつまでも自分の中でコンプレックスにするのはよくないからです。ダンスブロックの前に置くことで、『アンダー』がより深いものになって届いてくれたらいいなっていう思いもあって、そこに入れてもらいました。(『BUBKA』2019年3月号 p.18-19)
「左胸の勇気」は1stシングル所収のアンダー曲である。披露機会の少ない楽曲ではないように思うが、それ以前の機会を遡っていくと、「アンダーライブ全国ツアー2017〜近畿・四国シリーズ〜」(2017年12月)、「アンダーライブ全国ツアー2017〜関東シリーズ 東京公演〜」(2017年4月)、「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY2(2017年2月21日)18、「Merry Xmas Show 2016〜アンダー単独公演〜」(2016年12月7・9日)と、北野が参加していないものが長らく続いていた形であった(その前の披露機会は2016年8月28日の「4th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY1で、このときは北野は参加している)。「どうしてもやりたい」という思いの背景についてはここでは語られていないが、前向きでまっすぐな歌詞のメッセージとともに、個人として長らく披露していなかったという経緯も、ひょっとするとそこにはあったのかもしれない。
MCのブロックが挟まれ、北野が曲振りをする。「聴いてください、『アンダー』」。ここまでのブロックでは“あの夏”、「真夏の全国ツアー2017」地方公演で初出だった「アンダー」歌唱衣装が着用されてもいた。ここで「アンダー」が演じられたことについては、前稿[6]でも述べたことであるが、ライブ全体のセットリストに即して改めてもう少し触れておくことにしたい。
「いつまでも自分の中でコンプレックスにするのはよくないから」という北野の決意でセットリストに加えられた「アンダー」であるが、その置きどころには検討の余地があり、かなりのこだわりをもってこの位置で演じられていたのだという。結果として、MCのあとに「アンダー」を1曲演じたあと、VTRを挟んで最後のブロックに移行する19というような、やや珍しい形がとられることとなった。
北野:セットリスト考えててさ、『アンダー』って曲が私のセンター曲であるんだけど、結構雰囲気を変える曲だから、やるかやらないかって言われて、私はもうやらなくてもいいかなって思ったんだけども、「やった方がいいんじゃない」ってスタッフさんの声もあって、じゃあ頑張ってやってみますって言ったんだけど、入れどころを考えるじゃない。消化の仕方が難しい曲っていうのかな。
久保:どこに入れるかで、意味が全然変わってきますもんね。
北野:ダンスが下手くそな日奈子が一生懸命踊るっていうところを、演出家さんたちが「そこも入れた方がきいちゃんらしいよ」みたいな感じでダンスパートをこう……いつもさ、全員でダンスやってたじゃない。一人で踊ってもユニゾンがあったじゃん。でも今回は日奈子一人で踊るってなって、『アンダー』の入れどころとかも考えて、これ実はソロダンスの前にVTRが入っているんですけど、VTRをふる『アンダー』があって、アンダー曲って言うところからもう始まってて、ここのブロックが。そのへんとかも色々こだわってもらって。(のぎ動画「久保チャンネル #16 アンダーライブ全国ツアー2018 〜関東シリーズ〜 中編」[2021年9月24日配信開始])
そのVTRは北野へのインタビューを軸に構成され、そのなかで北野はかつての自らのダンスについて「できない下位1位だった」「自信はないけどがむしゃらにやっていたって感じですね」と振り返った。グループ加入当初、北野がダンスを苦手としていたことは繰り返し語られてきたことだが、「苦手だったが努力してだんだんできるようになっていった」のような直線的な経緯のみがあるのではなく、スキルが足りていない状態のまま8thシングルでの選抜入りがあり、どうにもならないまま次のシングルから長いアンダー時代を過ごす、という、挫折といえる経験がそこには挟まっている。
——でも、選抜に入るのは早かったですよね。
北野 はい。未央奈に続いて2番目でした。私、いつもニコニコしていたから、「明るくていいね。声も大きいし」ってダンスの先生からも褒められていました。その明るさがファンの皆さんから認めていただけたのかもしれません。
でも、踊れないという自覚はあるから、選抜に入っても困ることばかりでした。先輩たちも私がダンスができないことを知っているし。「選抜に入れて嬉しい!」じゃなくて、「とにかくダンスをなんとかしなきゃ……」と思う毎日でした。(『希望の方角』北野日奈子インタビュー)
「VTRをふる『アンダー』」(のぎ動画「久保チャンネル #16」)。そこでは「人知れず汗を流す影」というモチーフが歌われ、MVに収められた、北野がややあやふやな様子で振り付けを練習する様子(2Aメロ)などが思い出されたりもしたが、北野のことばは決して、「影で重ねてきた努力を知ってほしい」というようなニュアンスではなかった。
「『きいちゃん、こんなにできるようになったんだ』っていう気持ちというよりかは、なんか……ちゃんとできて当たり前だと思うし、真ん中に立たせてもらってるので、みんなが一生懸命できているなかの一員としてちゃんと見てもらって、私もそうやって見られているというプレッシャーを感じながら、それ以上のものを見せられるように頑張ります。」
(「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」終盤VTR 北野日奈子インタビュー)
北野はそのインタビューを「ひとりのメンバーとして、ちゃんと見ていてほしいですね」とまとめる。あるいはVTRにのなかでは、「踊れ、私たち」とキャプションが付されてもいた。あくまでチームとして、高いパフォーマンスを見せる。ライブに足を運んでいる観客に、過程ではなく結果をもって応える。そんな決意を感じた。
しかしもう少しいえば、そのあとに続いたのは、北野によるソロダンスパートである。「いつもさ、全員でダンスやってたじゃない。一人で踊ってもユニゾンがあったじゃん」(のぎ動画「久保チャンネル #16」)と北野が振り返るように、ライブのセットリストに差し挟まれるダンスパートを、ひとりのメンバーが担うというのは異例のことであるといってよい。たくさんのメンバーにそれぞれのポジションがつけられるグループにあって、センターやそれに近い位置にいるメンバーが「みんなのことを見てほしい」というような発言をすることも多くある。しかしこのときの北野の発言はそこにとどまらず、「みんなが一生懸命」なチームを自分が牽引する、ソロダンスパートを与えられた自分はその瞬間、チームのすべてを背負う、そんな気概を表明していたように思う。
1万人の観客を納める会場の真ん中に、「日常」の歌唱衣装をまとってひとり現れた北野。無数の照明が彼女ひとりに当てられ、それをダンスで操るような舞台演出がつけられた。MVのときと異なり、ヒールではなくスニーカーを履いてのパフォーマンス。メンバーのなかでは長身とはいえない体躯の北野だが、少しだけだがさらにいつもより小柄に映った。それでも、得意とする身体を大きく使ったダンスを客席に届ける。メインステージのモニターも落とされ、1万人が北野のダンスだけを見つめていた。花道を移動してメインステージに戻り、“ゼロ番”の位置へ。激しいパフォーマンスはさらに続き、3分弱のダンストラックを踊りきった。踊れなかった過去も、センターの位置になかなかまっすぐ立てなかった“あの夏”のことも、すべてを乗り越えた「力強いセンター」が、そこにいた。
——話題になったのは、北野さんソロのダンスパートでした。
北野 これまでのアンダーライブでもダンスパートは何度もあったけど、センターだけが踊ったということはなかったんです。ダンスが苦手な私がソロで踊ってもいいのかなという思いはありました。演出家さんに、「上手に踊ろうとしなくていい。きいちゃんのいいところは気持ちが見えるダンスができることだから、それを表現してくれればいいんだよ」と言われたのも会って、緊張だけじゃなくて、楽しんで踊ろうと思うことができました。だから、ステージに出る階段を上る瞬間はワクワクしていました。(『BUBKA』2019年3月号 p.18)
また、このときの北野のパフォーマンスの様子は、彼女のキャリアのなかでも屈指のハイライトシーンとして、記憶のみならず記録にも残されることにもなる(参考)。公式の提供写真としてメディアに配信されたのみならず、翌年の生誕祭のパンフレットでも用いられたほか、約3年半の時を経て、卒業グッズのA3クリアポスターにも使用されている。
鈴木 (前略)……アンダーライブで『日常』の前にソロダンスを踊ったきいちゃんの画像があって。
北野 いつもライブ写真を撮ってくれる方が「いい写真が撮れたよ!」と公開される前からベタ褒めしてくれたんです。
鈴木 そのきいちゃんを思い出しながら「髪の毛まで活かそう」と踊ってる。(『EX大衆』2019年10月号 p.81)
ソロダンスを終えた北野はメンバーと合流し、フォーメーションのセンターの位置へ。ライブはクライマックスへと向かう。まずは「嫉妬の権利」。ステージが赤色の照明に包まれる。引き続き、メインステージのモニターは落とされたまま。本稿はのぎ動画でライブ映像を確認しながら書いているのだが、特にこのブロックは現地にいたときの印象と大きく異なる(こと、筆者がいたのは見切れ席であった)。メンバーの表情などは見えなくて、とにかく見える限りのものに目をこらし、音に包まれながら、ペンライトを振って声を出すしかなく、それがすべて。積み重ねられてきたアンダーライブの“熱”を信じた、ある意味で特殊な演出であったが、一方でそれはライブの原体験のようでもあった。
アンダー曲のなかでもダンスがハードな曲として語られる「嫉妬の権利」から、シームレスに「制服のマネキン」「インフルエンサー」という、表題曲2曲が連ねられた。センターには引き続き北野が立ち続ける。乃木坂46のライブに行けば必ず見られるというくらいのグループの代表曲であるからこそ、映像なしで広い会場にパフォーマンスを届けようとするメンバーの大きな動きと、アレンジが加えられた大胆なフォーメーション移動に目が行く。息つく間もなく続いて繰り出された「ここにいる理由」では、恒例となっているラスサビ前のブレイクでの客席からの発声で、観客もメンバーのパフォーマンスの熱に応えた。
そしてそこから、さらに間をおかずに繰り出されたのが、ライブ本編最後の曲、「日常」であった。フルサイズでの披露で、ライブでのパフォーマンスはこのときが初めて。大きな舞台にいきなりぶつけるような形になった。ここでメインステージのモニターは再び会場を映し出す。よりいっそう激しく明滅する照明。久保史緒里は「日常」のステージングについて、「各部署のみなさんの力が集結して完成する感じが好きなんですよ。照明さんとか、カメラさんとか、スイッチャーさんとか、いろんな方の力が集結して完成してる感ありますよね」(のぎ動画「久保チャンネル #17」)と表現する。ライブチームの力がすべて集結した舞台に、限界まで出力を上げて挑んだメンバーたち。アウトロまでの披露が終わると、全員が息も絶え絶えといった感じであった。座長の北野がどうにか短くライブを締め、ライブ本編が終わった。
——2人が参加したアンダーライブだと、去年12月の武蔵野の森総合スポーツプラザ公演の本編最後のゾーンが印象的でした(北野日奈子のソロダンスから始まり、激しいナンバーが続いたブロック)。
岩本 あのゾーンに命を賭けている感じでした。
阪口 モニターも消えていたので、表情も気にせず、超100%ダンスに集中しました。
岩本 最後の『日常』(22ndシングル『帰り道は遠回りしたくなる』収録のアンダー曲)が終わった後、みんなの息遣いが聞こえて出し切った感がすごくて、それが気持ち良かったです。
——近くで北野さんを観て感じたことはありましたか?
岩本 私もフロントメンバーだったので、ポジションは近いはずなのに遠い存在に感じて、「座長は尊いな」と思いました。……(後略)(『月刊エンタメ』2019年11月号 p.54)
激しい曲調と力強い歌詞が特徴的な「日常」であるが、歌詞としては内心の描写が主で、“設定”のようなものは具体的でないという点にも特徴がある。例えば同じくシリアス寄りの曲調のアンダー曲でいえば、はっきりと恋愛にまつわる情念を描いた「嫉妬の権利」や「不等号」、情景には解釈の余地が大きいものの、“君と僕”という明確なモチーフが登場する「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」や「ここにいる理由」、「ブランコ」などとも、そうした点で違いがあるということができ、メンバーとしては少し世界観をつかみにくい部分が、当初はあったのかもしれない(あるいは、そのこと自体はあまり珍しいこととはいえないものの、MVの世界観がシュールな感じだったこともいくぶん作用していただろうか)。
——渡辺さんから見たアンダーセンターとしての北野さんのパフォーマンスはどうですか?
渡辺 意識しているか分からないけど、『日常』をやるたびに表情が獣のようになっていくんですよ。
北野 バカにしてるでしょ(笑)。
渡辺 してないよ(笑)。特にラストの真ん中から前に出てくる時の表情がすごく好き。MVの撮影時はみんな『日常』の世界観をまだ掴みきれていなかったけど、日奈子の表情やダンスの激しさが周りに感染していって、12月のアンダーライブではいいパフォーマンスができたんです。今回のバースデーライブでも選抜メンバーから「『日常』、めっちゃいい!」と言われることが多くて。それはセンターにいる日奈子の想いがちゃんと届いたからなのかなと思います。(『EX大衆』2019年4月号 p.80-81)
しかし、「力強いセンター」と「熱いアンダーライブ」を目指した北野のパフォーマンスにより、その「表情やダンスの激しさが周りに感染」し、ライブ初披露であり、かつかなり体力的にもハードな状況のなか、高いレベルでの披露が実現したといえるだろう。ライブは成功裏に終わり、評価を得ることにもなるが、それ以上に、メンバーのなかでも語り草となる熱いパフォーマンスとなった。
アンコールがかかり、1曲目は当時のシングル表題曲、「帰り道は遠回りしたくなる」。センターは北野で、Cメロのペアダンスは、このときのライブを最後にグループを卒業する川後陽菜と。全メンバーのうちで唯一、このときまでのアンダーライブにすべて参加してきた川後にとって、このときのアンダーライブがちょうど100公演目のアンダーライブのステージであった20。川後は2日目公演のスピーチでは「自分に誇れるものがあるとしたら、それは乃木坂のメンバーでいちばんライブをやってきたということ」と口にして、積み重ねてきたキャリアへのプライドをにじませた。
――ネット上のインタビュー記事で、「こんなに悔いのないライブは初めてだ」と書いてありました。そんな感覚だったんですね。
北野 スカッとしました。みんな『日常』終わりでバテバテなんですよ。それくらい動く曲が続いたから。みんなバテてるけど、「やり切ったー!」っていう空気を後ろから感じたんです。ひとつになって、みんなと同じ空気を共有できたのが嬉しくて。たぶん走馬灯に出てくるでしょうね。それくらい嬉しかった。
――川後陽菜さんのラストっていうのも乗っかりましたしね。
北野 川後さんは本音を口にしない人だけど、最後の挨拶で声を詰まらせていましたよね。そこに今までの辛さがこもっていました。そんな本音が見えたことが嬉しかったです。(『BUBKA』2019年3月号 p.19)
さらに2曲を披露したのち、MCのパートへ。メンバーに振って感想を聞いていく定番の形式ではなく、北野による語りの形であった。1日目では休業期間のことに触れ、いまは楽しく活動できていることとともに感謝を伝えたが、2日目では楽曲「アンダー」について触れ、「スポットライトが当たっていなくても、アンダーメンバーは自分自身で光を放てるメンバー」と述べた。そして、アンダーライブをともにつくりあげたメンバーたちにメッセージを送る。
「今日でこのメンバーでのアンダーライブは最後になりますが、このメンバーだからこそ、このアンダーライブができたと思うし、みんなとこの時を過ごせたことが本当に幸せに思います。
数年後、それぞれがここを飛び立って、どんなところで、どんなことをして、どうやって輝くかは分かりませんが、今日のこの時を過ごした私たちは、今日のこのことが人生の宝物で、人生の財産になると思います。
私はですね……たぶん頼りなかったし、引っ張っていっているというよりは、足を引っ張ってしまっていて、頼りなかったと思うんですが、みんなと同じ空気の温度になれたことが本当に幸せに思います。ありがとうございました。」(2018年12月20日「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」DAY2 北野日奈子アンコールスピーチ)
「新しい風を運べるような、力強いセンター」(2018年11月18日「乃木坂46SHOW!」[「AKB48SHOW!」#204] )を目指して走ってきた北野だが、一方で初期からのアンダーライブを知る彼女は、「新しい風が吹くのはいいことだけど、受け継いでいくべきものもあると思う」とも考えており、「『アンダーライブは熱いものなんだ』ということは忘れてはいけません。そのためには、メンバーがひとつにならないといけないんです。」(以上、『BUBKA』2019年3月号 p.18)という思いがあったのだという。その北野が「みんなと同じ空気の温度になれたことが本当に幸せ」とまとめたことは、このときのアンダーライブが確実に熱いものであったことを象徴していたのではないだろうか。
MCを経て「乃木坂の詩」でライブは締められるが、2日目ではそこから改めて北野から川後に話が振られ、川後からのメッセージと「ハルジオンが咲く頃」の歌唱があった。改めての締めくくりでは、北野は場を仕切り、川後へメッセージを送るなど、“座長”としての任も最後まで十分に果たしていた。
ーー先日、北野さんが座長を務めたアンダーライブが開催されました。今回、初めて単独センターを担当しましたが、振り返ってみて北野さんにとってどんな公演になりましたか?
北野:前向きになったと言ったばかりなんですけど、センターに選ばれた時はどうしても「私なんかでいいのかな?」って自信がなくなってしまうことが多いんです。でも、(伊藤)かりんちゃんとかが「日奈子は日奈子らしく引っ張ってくれればいいよ。私がサポートするよ」って言ってくれて。私なりのやり方で座長を務めてみて、こんなに悔いのないライブは初めてでした。途中で靴ひもがほどけちゃったり、あそこをもっとこうしておけばよかった、みたいなところはあるんですけど(笑)。(リアルサウンド「乃木坂46 北野日奈子が語る、活動休止と1st写真集で芽生えた良い変化『“新しい自分”を認められた』」[2019年1月14日公開])
「日常」に「物語」を
2019年2月21-24日に開催された「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」において、「日常」は初めて、グループ全体のライブで披露されることになる。リリース順を基本にした“全曲披露”のセットリストのなかにあって21、最新の22ndシングル所収の「日常」はその終盤に位置していた。リリース順の楽曲披露のみでなく、シングル・アルバムごとにVTRが挿入され、また各期のグループ加入や秋元真夏・堀未央奈の合流などに焦点を当てた演出が行われるなど、グループの歴史を丹念に振り返るような構成のライブであった。
「日常」が披露されたのはDAY3の終盤であったが、この日はこれ以外にも、筆者にとっては北野に注目する機会が多かった。時系列としては17thシングル以降にあたっていたこの日には、3rdアルバム所収の堀未央奈・寺田蘭世とのユニット曲「ワタボコリ」22や、18thシングル所収の「アンダー」と「ライブ神」の披露があり、「ライブ神」の前には、2期生メンバーひとりひとりを紹介する演出もつけられていた23。アンダーアルバムのブロックのあとに挿入された4期生11人の自己紹介のコーナーでは北野が単独でMCの回しを担い24、20thシングル所収の2期生曲「スカウトマン」は、卒業した相楽伊織のポジション・衣装で披露した。
そして迎えた22ndシングルのブロック。表題曲のセンターは翌日に卒業コンサートを迎える西野七瀬であり25、このときのVTRでクローズアップされたのはアンダーセンターの北野であった。2期生オーディション合格直後のコメントから始まり、元来の明るいキャラクターに触れつつ、「気持ちのすれ違いや、苦手なダンスに悩んだ時期もあった」と、「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」を貫いていた北野のストーリーが示唆される。休業中には仲間の支えがあり、その後「生駒里奈卒業コンサート」を機にステージに復帰した経緯が紹介され、「日常」のMV撮影と、その後のアンダーライブの様子が短くとりあげられる。「みんなとこの時を過ごせたことが本当に幸せに思います。」「人生の宝物で、人生の財産になると思います。」と、アンコールでの北野のスピーチ。そして最後に、「『次の駅で降りよう』。そう思いながら、終着駅の見えない電車を、彼女は下車した。まだ、見たことのない景色を見るために。」とナレーションが付され、VTRは終わった。
暗転した会場。アンダーライブのときと同じ、オリジナルのMV衣装にスニーカーといういでたちでセンターステージに登場したメンバーは、5万人の観客を納める京セラドーム大阪に「日常」のパフォーマンスをぶつけた。
ライブを終えたのち、北野は渡辺みり愛とともに、このときのパフォーマンスを以下のように振り返っている。
——12月のアンダーライブから2月のバースデーライブで、『日常』のパフォーマンスはさらに進化しましたか?
北野 アンダーライブではラストのブロックで「みんなが燃え尽きるまでやる」という感じだったから、パフォーマンスに「物語」をプラスするところまではいかなかったんです。バースデーライブでは、選抜メンバーが観ていることもあって「物語」を足すことができたのかなって。やっぱりアンダーメンバーは選抜にとって刺激的な存在でありたいから。あんなに髪を振り乱して、顔のパーツがどこかに飛んでいきそうなダンスは、アンダーだからできると思うんです。
——北野さんは踊ってる時は我を忘れてるんですか? それとも計算され尽くしたパフォーマンスなんですか?
北野 「明日、『日常』をこうパフォーマンスしよう」と自分が想定しているより、遥かに自分が自分じゃないというか、「飛んでるな」と思います。歌い終えた時に「スンッ」と我に返るんですよ(笑)。
渡辺 めっちゃ分かる(笑)。
北野 パフォーマンスしている時は周りからの見え方も考えられなくて。ステージを降りた時に「やり過ぎたかなぁ」と思ったり(笑)。例えば「制服のマネキン」だとカッコつけるポイントが何カ所かあるから考えながらできるけど、『日常』だとそれが難しいんですよ。(『EX大衆』2019年4月号 p.81)
パフォーマンスにプラスされた「物語」。それが具体的にはどのようなものを指すのか、ここでははっきりとは語られていないが、「選抜メンバーが観ていることもあって」ということで、筆者は以下のインタビューを想起した(「刺激的な存在でありたい」という表現も重なる)。
——アンダーライブを何かにたとえると?
北野 時計でいうと、乃木坂46というグループが短針で、選抜が長針だとすると、アンダーライブは秒針だと思います。秒針って長い針も短い針も追い抜くじゃないですか。そんな気持ちで活動しているのがアンダーだからです。「追い抜いてやるぞ!」っていう刺激をすべての面に与えているっていうか。選抜を目指すのはもちろんだけど、刺激的な存在でありたいと思っています。(『BUBKA』2019年3月号 p.19)
楽曲やパフォーマンスのもつパワーに加えてそうした思いもあってか、「日常」はオリジナルメンバーのみならず、選抜メンバーをはじめとした他メンバーにもかなり人気のある楽曲になっていった、という印象がある。「今回のバースデーライブでも選抜メンバーから「『日常』、めっちゃいい!」と言われることが多くて」(『EX大衆』2019年4月号 p.80、渡辺みり愛)といい、この年において披露が重ねられていく過程において、多くのメンバーが言及するようになっていく。
——バースデーライブ3日目は『日常』がはじまる前に北野さんの映像が流れましたね。
北野 知らなかったから、前日のリハで観てビックリしました。
大園 桃子、『日常』がすごい好き。みんなの全力感が伝わるんですよ。
——『日常』は初期アンダーライブのような熱量あるパフォーマンスを目指したんですか?
北野 そのくらいの熱量はあるけど、全然違う形だなとは感じました。どうしても、過去のアンダーライブが比較対象になるし、目指す部分ではあるけど、違う形で追い抜きたいと思うんです。(『OVERTURE』No.018[2019年3月25日発売]p.21)
重ねられるパフォーマンス
「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」を経たのち、3月に3会場で全国握手会が立て続けに開催され、22ndシングル期はひと区切りとなった。4月17日には4thアルバム「今が思い出になるまで」がリリースされるが26、これに先立つ4月14日の「乃木坂工事中」#202において23rdシングルの選抜発表の模様が放送されている。北野は2列目のポジションで、4作ぶりに選抜メンバーに復帰することとなった。センターの北野がアンダーメンバーを離れることになり、日ごとにアンダーライブ・4期生ライブ・選抜ライブの形で行われた「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ」では、「日常」は5月24日のアンダーライブにおいて、寺田蘭世のセンターで披露されている。
しかし、7月に始まり、3都市のドームをめぐったのち明治神宮野球場での3DAYSという日程で開催された「真夏の全国ツアー2019」において、「日常」はオリジナルメンバーによるフォーメーションで、全公演で披露されることになる。センターはもちろん北野。このときのセットリストには比較的アンダー曲が多かったが、オリジナルメンバーでない選抜メンバーを含めた特別な編成でのブロックや日替わりのユニットコーナーによる部分も大きく、アンダーメンバーによるパフォーマンスという点では「日常」および「滑走路」のみという形であった。
「日常」がライブ定番の人気曲としての評価を定着させることになったのは、このツアーにおいてであったといってよいと思う。大きな会場で披露が重ねられ、単純にそれを目の当たりにした観客が多かったということもあろうし、乃木坂46の楽曲としてはいまでも指折りといってよい激しいパフォーマンスである。しかもこのときは間奏がかなり長めにアレンジされてダンスのパートが挿入されており、その印象はよりいっそう強まった。それを北野をはじめとするオリジナルメンバーたちが高い熱量で、汗だくで踊りきる。客席が青色のペンライトで染まるようになったのもこのときが最初であり27、「日常」のパフォーマンスの理念型のようなものがいったんここで定まったともいえるだろうか。
鈴木 そうかなぁ。去年より心に余裕ができたのは間違いないです。今年の神宮は、『日常』のきいちゃんがすごかったと思います。
——北野さんの気持ちが表情から伝ってくる素晴らしいパフォーマンスでした。
北野 演出がよかったんですよ。『滑走路』のペンライトでお客さんと一体になってから『日常』だったので。ありがたいです。
——全国ツアー中、『日常』はずっと高いクオリティを保っていたし、なんなら去年の12月のアンダーライブから続いているわけですよね。北野さんの中で気持ちの変遷はあったんですか?
北野 うーん。むしろ何も考えなくなった、という感じですかね。以前は「ダンス曲だし、この曲を引っ提げてアンダーライブを盛り上げたい」という気持ちがあったから、とにかく一生懸命やろうと思っていたけど、夏のツアーはその時ごとの気持ちで構えずにやろうと。だから、出番前は震えていました。
——その時ごとの気持ちでやるからこその緊張感があった。
北野 そうですね。例えば『ガールズルール』だったら、「このテンションで踊って」「ここでカメラに抜かれて」と想定するんですけど、『日常』はその時の感情で表現していたので。かといって、自信があるわけでもないから、そんな決断をした自分に不安で震えてしまうんです(笑)。「私はここにいて大丈夫かな」って。それに「ここで締めなきゃ」という気持ちもありました。セトリの流れとしてバチッと決める役割があると思ったので。そういう意味で、間奏のダンスパートも重要なんです。
鈴木 視界に入ってくるので、きいちゃんが熱いと「私も頑張らなきゃ」という気持ちになるんです。……(後略)(『EX大衆』2019年10月号 p.80-81)
そのパフォーマンスを、北野はあまり何も考えず、「その時ごとの気持ちで構えずにやろう」と取り組んでいたのだという28。あるいはその表現は、「パフォーマンスしている時は周りからの見え方も考えられなくて」(『EX大衆』2019年4月号 p.81)という、それ以前からの姿勢にも重なるものだったかもしれないし、後年においても「パフォーマンスをしていても、毎回違う気持ちで感情をぶつけられる曲」(「ベストソング歌謡祭」[2022年2月21-23日「乃木坂46時間TV(第5弾)」内])と語ってもいる。あるいはこのときには、「日常」のパフォーマンスの際には「イントロかかった瞬間に戦いが始まる気持ちになる」「アウトロで終わったときに、今日は勝てたか勝ててないかを考えて」とも口にしていたが、それはこのときのツアーを含めて多くの披露機会にあたってきたからこその心の動きであったのかもしれない。
選抜に復帰し、目標としていた福神メンバーのポジションに立つとともに、ツアーを通して「日常」で引き続き結果を残したことは、北野にとって確実な自信につながったようでもあった。
——2作連続で選抜に入った2019年はどんな1年でした?
北野 初めての選抜(8thシングル)では何もできなくて、15thから17thのときはアンダーと選抜のギャップに悩まされていたんです。一生懸命に努力して入った選抜なのに、自分の中で消化しきれなかった。でも、今回(23rd、24th)はギャップを感じることはなく、想定外のことが起きても自ら扉を開けることができるようになったんです。
——いい意味でアンダーと選抜が地続きになってましたよね。
北野 そうですね。昨年はアンダーセンターとして『日常』をやらせていただいて。今年のツアーでも『日常』をパフォーマンスできたことが自信につながりました。(『月刊エンタメ』2020年1月号 p.26)
“青い炎”が燃える
「真夏の全国ツアー2019」は、初代キャプテン・桜井玲香の卒業29と、それにともなうキャプテンの秋元真夏への交代30、遠藤さくら・賀喜遥香・筒井あやめがフロントに立った24thシングル表題曲「夜明けまで強がらなくてもいい」の初披露31などの出来事があり、セットリストに3期生・4期生によるブロックが設けられたり、「僕のこと、知ってる?」が全メンバーにより歌唱されたり32と、“新体制”への移行(グループアイドルはしょっちゅうこの言い方をしている気がするが、それでも)が感じられる場面が多かった。
また、明治神宮野球場公演のなかで開催が発表された「アンダーライブ2019 at 幕張メッセ」(2019年10月10-11日)は、岩本蓮加が3期生として初のアンダーセンターに立ち、これも“新体制”を感じさせたほか、ライブのセットリストはアンダー楽曲全曲披露の形で構成され33、このなかで「日常」は本編最後の「〜Do my best〜じゃ意味はない」の前という位置で、岩本をセンターに置いて披露されている。
「日常」は、この頃にはすでに、ファン人気はもちろん、メンバー人気も(オリジナルメンバーかどうかを問わず)相当に定着していたといえる状況であった。
鈴木 ありがとう。私も『日常』が好きだから。
北野 『日常』の参加メンバーがみんな「『日常』が好き」と言ってくれているのも大きいと思います。セトリに入ってると、みんな「よっしゃー!」と言ってくれる。それで一体感が生まれてるのかなって。
(『EX大衆』2019年10月号 p.81)
——今年も残すところあとわずかですが、印象的だった出来事は?
北野「私は『真夏の全国ツアー』かな。福神として初めて参加したツアーでもあるけど、センターを務めたアンダー曲『日常』も披露させてもらったんです」
秋元「『日常』を好きなメンバーはけっこう多いよね」
北野「昨年末からずっとライブでやらせてもらっていて、だんだん『日常』がライブのセットリストに馴染んでいく感じが個人的には嬉しかったです」(『BOMB』2020年1月号 p.22)
——歌番組やライブでカメラに抜かれた時の表情も気にしてますか?
はい。『日常』の北野さんがカッコよくて、あの強い目力に憧れてます。(『EX大衆』2020年4月号 p.21、筒井あやめ)
このようななかで行われたのが、「3・4期生ライブ」(2019年11月26-27日)であった。この間には、グループとして2年連続の上海公演となる「NOGIZAKA46 Live in Shanghai 2019」(10月25-26日)も開催されており、メンバーの卒業も続くなか、海外展開も含めてさらに大きな存在となることをめざすグループにあって、3・4期生がさらに大きな役割を担っていくことを予感、あるいは実感させる機会になった(あるいは、11月27日には音楽特番「ベストアーティスト2019」に1・2期生の編成で出演してもいて、グループの大きさと層の厚さについても同時に感じさせた)。
「3・4期生ライブ」のセットリストは、“夏曲”をはじめとするライブでの定番曲や、3期生曲・4期生曲、あるいは3・4期生がオリジナルメンバーとして参加している曲を軸としつつ、ユニット曲のコーナーなども取りまぜた形で構成されていた。そのセットリストの中盤、3期生と4期生が交互に登場して期ごとにパフォーマンスが繰り広げられたブロックにおいて、「日常」は同じくアンダー曲である「自由の彼方」とともに、3期生によって披露されている。特に「日常」は、冒頭に同曲のメロディをアレンジした長めのダンストラックが設けられるなど、印象深く演出されてもいた。
このライブにおいて演じられたアンダー曲は、この2曲のみである34。この2曲がセットリストに加えられた背景には、メンバーの側から「アンダー曲をやりたい」と提案されたことがあったのだという。
——ライブでの『日常』から『自由の彼方』は、アンダーライブを経験したメンバーがいるからこそのパフォーマンスだと思いました。
「アンダー楽曲をやりたい」と言ってくれたのは(佐藤)楓なんです。私もやりたかったし、ファンの方も喜んでくれるだろうなと思いました。(『OVERTURE』No.021[2019年12月24日発売]p.51)
——佐藤さんが「アンダー曲をやりたい」と提案したと聞きました。
佐藤 3期生とスタッフの方で話し合いをしたとき、アンダー経験者が多いし、ファンの方も観たいだろうと思うので「アンダー曲をやりたい」と話したんです。
——実際、『日常』と『自由の彼方』は素晴らしいパフォーマンスでした。
佐藤 あのブロック、好きでした。
阪口 何回もリハをしたからね。
伊藤 とくに『日常』は難しい曲だし、やったことのないメンバーもいたので、経験者が細かい修正をしていきました。3期生同士で支え合いながら団結することができたと思います。(『月刊エンタメ』2020年2月号 p.125)
3期生は後年の3期生ライブでも積極的にアンダー曲を選曲している印象がある。加入前からグループのファンだったメンバーも多く、またアンダーライブでの経験もじゅうぶん重ねたメンバーも多くなってきたというタイミングであり、アンダー曲を演じたい、という点では思いが一致しやすかったのかもしれない。
ただ、このときの「日常」でセンターに立った久保史緒里には、他のメンバーとやや異なる感情があったのだという。楽曲のメンバー人気を反映してといってよいだろうか、みなが口を揃えて「日常」をやりたい、と挙げるなか、久保は当初、それに対して必ずしも前向きな気持ちではなかった。
久保:でも私、3・4期ライブって……こう、軽くですけど、「3期生何やりたい?」って聞かれたんですよ、曲。みんな口を揃えて「日常」って言ったんですよ。ひとりだけ黙ったんですよ、私。「ごめんなさい、絶対にやりたくない」って思ったんですよ。始まりはですよ、最初は。最初はその、みんなが「日常やりたいです」「日常やりたいです」って……「絶対にやりたくない」と思ってて。
北野:わかる、「自分たちのあの体感温度を自分たちだけのものにしたい」みたいなね。(のぎ動画「久保チャンネル #17 アンダーライブ全国ツアー2018 〜関東シリーズ〜 後編」[2021年10月1日配信開始])
センターに立つのに不安や遠慮があったという以前に、曲そのものを「絶対にやりたくない」というところから出発したという久保。「日奈子さんのいる『日常』以外は『日常』じゃないと思ってるから、絶対に嫌、と思ってたんですけど、いざやるってなって、自分が真ん中って聞いて、ヤッバ……と思って。ほんとにプレッシャーでした。ほんとどうしようと思って。」(同前)とも語り、北野もその思いを「自分たちのあの体感温度を自分たちだけのものにしたい」と言い換えている。いかにも愛情の重い久保らしいエピソードだが、そうまとめて余りあるほど、北野に対しては紐帯を感じていたし、「日常」および「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」に対する思い入れが強かったということであろう(久保にとっては、このときの関東シリーズが、メンバーとして参加した唯一のアンダーライブでもある)。
「日常」のパフォーマンスについて、北野が好んで使っていた表現に、“赤い炎”と“青い炎”というものがある。北野が卒業したのちの「乃木坂工事中」(2022年7月24日、#370「乃木坂46キメ顔グランプリ③」)で久保が紹介したことで特に著名になったという印象があるエピソードで、放送内では少し曖昧になっているが、“赤い炎”と“青い炎”の話そのものは、このときの「3・4期生ライブ」に向けて北野が久保に話したものであった。結果として、それに勇気づけられるような形で、久保は「日常」のセンターに立つことになる。
——3期4期ライブ(11月26、27日)では、久保さんがセンターを務めた『日常』のパフォーマンスが圧巻でした。
やりたい楽曲を聞かれて、多くの3期生から『日常』と『自由の彼方』が挙がったんです。ただ、私は思い入れがあるからこそ『日常』は(北野)日奈子さん以外のセンターが考えられなかったので、自分がセンターと言われて複雑な想いがありました。
ただ、その話を日奈子さんにしたとき、「しーちゃんに絶対にやってほしい」と言っていただいて。「日奈子は“赤い炎”だけど、しーちゃんは“青い炎”で攻めてほしい」「それぞれの『日常』像が作れたらいいね」という言葉に納得できたんです。日奈子さんの『日常』を観て研究していたけど、それからはオリジナルな部分も出していこうと意識しました。
——パフォーマンス中の不敵な笑みにゾクッとしました。
意識はしていなかったんですけど、あとから聞いて「そんな感じだったんだ」って。曲を聴き過ぎて乗り移ったような感覚というか、パフォーマンス中の記憶がないんです。『自由の彼方』で記憶が戻って、『思い出ファースト』で鮮明になるという(笑)。ただ、最後だけは決めていたんです。日奈子さんのオーダーで、バンッと終わるんじゃなくてヌルッとギラッと決めました。日奈子さんが「しーちゃんはそれが似合うから」と言うから。(『OVERTURE』No.021[2019年12月24日発売]p.44)
設楽:これはあれなの、北野とかにも言ったわけ?
久保:言いました。でも、これ2回目なんですけど、センターやらせてもらうのが。日奈子さんが「自分が“赤い炎”だとしたら、しーちゃんは“青い炎”でやってほしい」っていうので。
設楽:おお、すごいアドバイスだな、ほうほう。
久保:で、それをすごい意識してたので、日奈子さんは割と、キメがこう……バッ、とキメるんですけど、私はこう、ヌメッとやるっていうのは、差を付けています。
設楽・日村:なるほどね。
設楽:赤く激しく燃える炎より冷血に見える青い炎。ただ青い炎のほうが温度が高いからね。
久保:なるほど……そういうことですね!(2022年7月24日「乃木坂工事中」#370)
また、このときのパフォーマンスを、北野は後日になって映像で見たのだというが、他のメンバーがセンターに立つ「日常」を見て、そのとき「初めて嫉妬した」のだといい、「そこから一度も嫉妬してない」とも語る(のぎ動画「久保チャンネル」#17)。そして、本来あまりペンライトの色を統一したり指定したりするのではなく、それぞれの推しメンの色にして思いを届けたほうがよいと考えているほうだったようだが、「しーちゃんの『日常』を見て、『日常』は青やな、って」(同前)と思うようになったのだという。
“青い炎”というのは北野らしい直感的な表現で、そこまで具体的に説明されたことは少なかったように思うが、“赤い炎”が北野自身の感情剥き出しでパフォーマンスする姿であり、より熱さを内に秘めたパフォーマンスが“青い炎”ということであるようだ。久保に関しては北野が「“青い炎”でやってほしい」と伝えた、ということであったが、北野は“青い炎”で踊るメンバーとして、鈴木絢音や中田花奈、渡辺みり愛を挙げている。
鈴木 そのきいちゃんを思い出しながら「髪の毛まで活かそう」と踊ってる。
北野 私は感情剥き出しなんですけど、絢音ちゃんや(中田)花奈さんは内に秘めた熱さで。私は横で見ていて、それぞれの違いを感じるんですけど、それが『日常』のよさなんだろうなと思います。私が赤い炎なら、絢音ちゃんは青い炎。
絢音 そうかなぁ。
——分かります。
北野 「どうなのかな〜」と思って触ったら、絢音ちゃんが一番熱い(鈴木の肩を触って熱がる)。
鈴木 ありがとう。私も『日常』が好きだから。(『EX大衆』2019年10月号 p.81)
北野:実はね……しーちゃんの「日常」を見て、「日常」は青やな、って。
久保:えっ、うそ!?
北野:基本、元々これを一緒に踊ってるときから、なんかこう、熱さでいうと赤色の熱さで踊る子と青色の熱さで踊る子といるんだけど、しーちゃんは圧倒的に青なのよ。熱いところ、心の触れないようなところね。で、だから……しーちゃん今選抜メンバーとして活動しててさ、「日常」やるってなっても一緒に踊れなかったじゃない。でも、しーちゃんとか花奈さんとかみり愛みたいな、青く踊る人たちの色をどうしても見せたくて、「サイリウムは絶対青で」って言い張ってる。(のぎ動画「久保チャンネル #17 アンダーライブ全国ツアー2018 〜関東シリーズ〜 後編」[2021年10月1日配信開始])
最初からメンバーのなかのどこかに存在し、「真夏の全国ツアー2019」での演出で形になって表れた“青色”の「日常」は、北野の声とともに久保がセンターで表現したことで、とうとう火が点いたといえるのかもしれない。たびたび引用してきた「久保チャンネル」#17の配信はもう少し後の時期になってのことだし、少なくともこの頃に、客席がただちに「『日常』は青」という雰囲気になっていったわけではなかったと記憶するが、それでも少しずつ確実に、定着していくことになる。
北野と久保はその後、「8th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY3(2020年2月23日)で再び「日常」でのステージに並び立つことになる。各日のセットリストの後半に設けられたアンダー曲のブロックにおいての披露であり、当時ともに選抜メンバーであったふたりは、そこに途中で合流したような形であった。
——印象的だったパフォーマンスはありますか?
久保 本当に楽しかったのは3日目の『日常』『春のメロディー』の流れです! パフォーマンス前に裏で(北野)日奈子さんと2人で待機していたんですけど、日奈子さんは「泣いちゃうかも!」と言うくらい緊張されてて。でも私は日奈子さんの『日常』が観られるのがすごくうれしかったし、楽しみだなって胸が高まっていました。パフォーマンスが終わった後にファンの皆さんの歓声が鮮明に聞こえたのも覚えています。そこから私の大好きな『春のメロディー』だったんですけど、今回初めて参加させていただいて、みんなで輪になって踊れ(原文ママ)のが楽しかったです!(『月刊エンタメ』2020年5月号 p.13)
「次の駅で降りよう」と決めて
コロナ禍で活動が停滞した時期を挟み、グループとして約10ヶ月ぶりに行われた有観客公演が、日本武道館での「アンダーライブ2020」(2020年12月18-20日)であった。多くのファンも、あるいは北野自身も、あまり予期していないタイミングで再びアンダーに移ることになった北野だが、自分を奮い立たせて前を向き、ライブを引っ張っていく。このなかで、3日ともで「日常」は演じられている。その後も数度にわたって行われた、落ちサビで北野を真上から撮るカメラワークが初めて取り入れられたのがこのときであった。
佐藤 私はやっぱり『日常』です。イントロがかかった瞬間にシビれたし、踊っていると熱が入りました。最終日、落ちサビのカメラ割りが北野(日奈子)さんを真上から撮って、引いていくのがカッコよくてカッコよくて。「これぞアンダーライブ!」という感覚になりました。
(『月刊エンタメ』2021年3・4月号 p.16)
年が明けて2021年になると、1月27日の26thシングル発売を経て、無観客・配信形式での「9th YEAR BIRTHDAY LIVE」の時期に入っていく。デビュー日の2月22日には「前夜祭」が、その翌日に全体ライブが行われたあと、3月・5月に期別のライブが分散開催される形であったが、「日常」は全体ライブおよび2期生ライブ(3月28日)、そして4期生ライブ(5月8日)において披露されている。
このうち、2期生ライブにおける披露は、ライブ前半の「全員センター」のブロックにおいて、北野自身の選曲によって披露されている。北野は選曲の背景について、ライブ直後の時期にこのようなことを語っている。
——2期生ライブ(3月28日)から数日経ちましたが、いまの心境は?
いつものライブは「一生懸命頑張らなきゃ」という意識が強くて、終わった後は達成感があるんですけど、2期生ライブはやっている間も実感がなくて、いまも実感がないんです。
——センター企画で『日常』を選んだ理由を教えてください。
去年開催される予定だった2期生ライブでは『トキトキメキメキ』を選んでいたんですけど、今回は“語り”が必要になって、やりたいだけじゃなくて思い入れの強い曲を選ばなきゃいけないなと思ったんです。
最近の私に近い感情は『羽根の記憶』だけど、語るなら『アンダー』か『日常』になるのかなって。加入してからの8年間を振り返って、自分のことを語るうえであの時期のことは欠かせないと思ったんです。
本番2日前に自分が考えた“語り”をお母さんに聞かせたら、頭の3行で大泣きしちゃって「これはダメだ」と。今度は妹に聞かせたらウルウルしちゃって。(渡辺)みり愛に確認してもらったら「ちょうど1分30秒だね」と言ってくれました(笑)。
——今回の『日常』はどんな気持ちで歌いましたか?
もう2年以上前の曲で、ここ最近のライブではずっと歌ってきたけど、そろそろセトリに選抜されなくなるんじゃないかなって。そんな気持ちがどこかでありました。
——北野さんが『日常』をライブの定番曲に押し上げたと思いますよ。
そうなんですかねぇ。カッコいい演出をしてくれるスタッフのみなさんに感謝しているし、メンバーから「『日常』が入ると締まるよね」と言ってもらえるとうれしいです。(『EX大衆』2021年5月号 p.15・19)
“語り”のために、「やりたいだけじゃなくて思い入れの強い曲を」と選んだ、ある意味最もストレートな選択といってもよい「日常」。その“語り”は、以下のようなものだった。
「乃木坂46・2期生、北野日奈子です。
私には、思い入れの深い曲が2曲あります。「アンダー」。この曲は、私にひたむきに努力することの大切さを教えてくれました。あのときは、自分らしさに苦しんで、まわりから見られる自分と、本当の自分、すれ違ういろいろな感情ひとつひとつに目を向けていたら、いつしか自分のことがわからなくなってしまいました。
自分だけが違う音を聞いて、違うものが目に映って……。ひとりぼっちの世界にいたとき、どうしようもなくなったとき、心に寄り添ってくれたのは、同期のみんなでした。大切なことを教えてくれてありがとう。大切なこの場所に、私を呼び戻してくれてありがとう。新しい感情を知るときは、いつもみんながそばにいてくれました。互いがどんな姿であろうと受け入れてくれる、大切な戦友たちです。いつかそれぞれが違う道に進んだとしても、私たちはずうっと、大切な仲間たちです。
そして、次の曲は、私に強さを教えてくれました。不安でいっぱいになって、どうしようもなくなってしまうときもあるけど、いつかは自分の背中を、自分で押せる、強い人になりたいです。
いつもの日常じゃなく、新しい世界を見に行きたい。そう思うようになりました。
勇気を出して、私は途中下車をして、変わらなくてはならないと思います。そこにはきっと、自分が信じている世界があるから。
私は、前だけを向いていきます。」(2021年3月28日「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜2期生ライブ〜」北野日奈子全員センターブロック語り)
このとき、時期的には北野はすでにグループからの卒業を心に決めていたことになる。それを念頭に聞き直してみると、「いつもの日常じゃなく、新しい世界を見に行きたい。そう思うようになりました。」「勇気を出して、私は途中下車をして、変わらなくてはならないと思います。」というのは、「日常」の歌詞に確かになぞらえながらも、それ以上にやや意味深げでもある。
「日常」の歌詞は、そこまではっきりとしたモチーフが描かれているものではない。決められたレールの上を走る、どこに運ばれていくのかもわからない日常に抗い、途中下車をする。あるいは、途中下車をせよ、と呼びかける。ある意味、歌詞がそのようにシンプルにとどめられているからこそ、パフォーマンスの強さが際立っているという面もあるだろうか。
そして、その歌詞に北野自身がなぞらえられるのは、初めてのことではない。先にも引いたところだが、「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY3(2019年2月23日)での披露時にも、直前のVTRで「『次の駅で降りよう』。そう思いながら、終着駅の見えない電車を、彼女は下車した。まだ、見たことのない景色を見るために。」とナレーションが付され、休業の時期を経て活動を再開した北野の姿に歌詞が重ねられていたが、このときは「知らなかったから、前日のリハで観てビックリしました。」(『OVERTURE』No.018[2019年3月25日発売]p.21)ということでもあった。これもどこかでふまえつつ、「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜2期生ライブ〜」では、北野が自らの言葉でそのように語ったということになる。
それに加えてこのときは、「下車した」のではなく、「途中下車をして、変わらなくてはならない」。勇気を出して“下車”をするのは、これからのことであるとも示唆されていた。「幻の2期生ライブから1年、今日やっと私たちの夢が叶います。」という北野のかけ声でスタートしたこの日のライブ。「私たちの夢」をやっと叶え、その舞台で同期で同い年の堀未央奈を送り出した北野は、自らの卒業に向けてラストスパートをかけていくことになる。
グループを代表する曲に
少し間を置いて行われた「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜4期生ライブ〜」(2021年5月8日)では、筒井あやめがセンターに立つ形で「日常」を披露した。まだ4期生がアンダーメンバーに合流する前の出来事であり、16人全員がこのとき初めて披露する形となった。オリジナルメンバーがいる2期生ライブ、および3・4期生ライブ(での3期生の披露)のみならず、4期生によっても披露された形となった「日常」は、アンダー曲、アンダーメンバーといったくくりをとうに超え、特にライブの場面においては、グループを代表するような楽曲になっていく。
また、時系列が前後してしまうが、2022年にグループに加入した5期生も、「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY2として行われた5期生ライブ(2023年2月23日)において、北野を憧れの先輩として挙げる奥田いろはがセンターに立つ形で「日常」を披露している。このときの5期生も、アンダーメンバーに合流する直前というタイミングであった35。2023年6月現在の現役メンバーは、全員が「日常」をライブで演じたことがあるということになる。
あるいは「日常」は、ファンやメンバーによる投票でもきまって上位にあげられている。その端緒だったのはコロナ禍の期間の「乃木坂46のオールナイトニッポン」(2020年9月9日放送)で行われた「乃木坂46 妄想!ラジオで真夏の全国ツアー2020」のリクエスト投票だっただろうか。このときは、夏のイメージが強い楽曲が多く上位にランクインするなかで6位にランクインしている。トップ10では唯一のアンダー曲であった。
ライブでは、翌年に2年ぶりに開催された「真夏の全国ツアー2021」、および「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY1(2023年2月22日、全体ライブ)において、ファンからの投票をもとにセットリストが組まれているが、前者ではアンダー曲部門の1位、後者では全255曲中の18位(アンダー曲では最上位)にランクインし、セットリスト入りを勝ち取っている。メンバー人気という点でも、「乃木坂46時間TV(第5弾)」(2022年2月21-23日)の際に実施された「乃木坂46ベストソング歌謡祭」(メンバー・バナナマンによる投票)の表題曲以外部門で1位に輝き、最終日の「46時間TVスペシャルライブ」において演じられている。
このなかで特に「真夏の全国ツアー2021」は、グループの結成10周年を祝う位置づけであり、かつ「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」として4年ぶりの東京ドーム公演も設定されるなど、グループにとって特に記念碑的なツアーとなった。北野にとっては最後のツアーだったことにもなり、ここでアンダー曲1位の扱いで「日常」を披露できたことは彼女にとっても大きかっただろうし、アンケートでの得票数は本人たちの想像を上回るほどでもあったのだという。
北野:今年の夏もさ、ツアー回っててさ、アンダー曲の1位になってさ。私たち投票数とかも見れたじゃん、ファンの方は知らないんだけど。もう、「日常」すごかったじゃん。「すごっ!」ってなって、もう。
久保:そりゃそうですよね。(のぎ動画「久保チャンネル #17 アンダーライブ全国ツアー2018 〜関東シリーズ〜 後編」[2021年10月1日配信開始])
——鈴木さんから見た「日常」北野さんセンターは
鈴木 めっちゃ好きです! ただ、私も同じ1列目なので、なかなか見ることができなくて、そこが自分的にはちょっと残念(笑い)。落ちサビとかも日奈子ちゃんより前とか同じ列にいたりするので、よく見られないの。だから映像で、にまにましながら見ています(笑い)。
北野 ありがたいことに、「日常」は特にすごく票が入っていたみたいで。「日常」って、乃木坂のほとんどのライブでやっているじゃないですか。
鈴木 確かに。
北野 結構自分的にはそれがプレッシャーだったんですよ。自分だけの曲とは思ってないけど、誰かがセンターでやってるのを見ると、やっぱり意識しちゃって、さらに上回りたいと思って。でも今回、なんか本当に「日常」っていう曲がとにかく人気だというのを知って、逆にツアーでは気にせず好き勝手にできた感じがします。みんなの温度を感じながらできたし、よく周りが見えました。これからもいろんな子に歌い継いでいってほしい曲だな、って思っています。(『乃木坂46新聞2021 結成10周年記念号』[2021年9月17日発売]10面)
北野はモバイルメールで、アンケートの締め切りが過ぎた直後であったが、夏のツアーで「日常」がやれたらいい、夏のツアーでの「日常」がいちばん好き、という旨を発信していた。地方公演では北野がMCで客席に直接感謝を伝える場面もあり、東京ドーム公演では2日ともで演じられることにもなった36。前回の東京ドーム公演(「真夏の全国ツアー2017 FINAL!」、2017年11月7-8日)は、北野にとっては休業に入る直前のタイミングであり、曲数をかなり絞っての出演であった。そのリベンジというと表現が過剰かもしれないが、グループがひとつのメルクマールとして扱ってきた東京ドームでのライブを悔いのない形で終えられた、といえるのではないだろうか。
「いつか私が卒業した後も」/「私にとっての代名詞」
この時期、“卒業”を胸に秘めた状態で活動していた北野だが、「“終活”も意識しながら活動していくべきだなって」(『アップトゥボーイ』2021年9月号 p.43)とも明確に語っていたように、自分が活動のなかで大切にしてきたものともう一度向き合ったうえで、グループを離れたあとも楽曲を大切に歌い継いでほしい、という趣旨の発言を、卒業発表の前から多くしていたという印象がある(この年にはベストアルバム「Time flies」の発売もあったので、なおさら)。
ありがたいことに、たくさんの票をいただいて『日常』が1位になりました。「真夏の全国ツアー2021」では、まだ生でこの曲を体験していない方たちに噂以上のものを見せなくてはいけない、という気持ちでパフォーマンスしました。
『日常』は何度歌ってもマンネリになることはありません。イントロがかかった時の感情を放出しているので、体が勝手に動いている状態なんです。考えずに感じたまま踊っています。
ステージでは私色に染めたいと思いながら『日常』をパフォーマンスしているけど、他のライブでは久保(史緒里)ちゃん、(筒井)あやめちゃんがセンターで踊ったこの曲を目にして、「それも超えたい」と刺激になりました。いつか私が卒業した後も残る曲だと思うので、将来はそれぞれのセンターの色の『日常』になるのかなと思っています。(『日経エンタテインメント! 乃木坂46Special2022』[2021年12月2日発売]p.86)37
2022年2月10日の「新内眞衣卒業セレモニー」でも、当時の28thアンダーメンバーに北野や鈴木絢音、そして新内を加えた特別な編成で「日常」は披露されている。新内は「日常」好きを公言しているメンバーのうちのひとりであり、「乃木坂46のオールナイトニッポン」に北野がゲスト出演する際には、北野と一緒に「日常」を踊る様子がSHOWROOMでの同時生配信に載ることが定番のようにもなっていた。新内はオリジナルメンバーではないし、この間はアンダーメンバーとなることもなかったので、ライブでの披露機会は「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜2期生ライブ〜」(2021年3月28日)のみにとどまっていたが、最後の最後に自らの選曲で、改めて披露した形となった。
このときの披露について、北野は「乃木坂46時間TV(第5弾)」での「ベストソング歌謡祭」の表題曲以外部門の発表の際(2022年2月23日)、「最後やってくれて、新しい一面を見せてくれて」「最後まで、日奈子がずっとこう……『大事大事!』って言ってたら、みんな歌いづらいかなとか思ってた」と語り、(「ちゃんと間違えてくれて」と茶化しながらであったが)「歌い継がれる」ことへの思いを表現していた38。
「まいちゅんが最後やってくれて、新しい一面を見せてくれて。
やりづらいかなとも思ったの。卒業するし、なんか今後、ライブでいろいろとやらせてもらえる機会も多いから、その都度のアンダーのセンターの子とかがやるのかなとか、いろいろ考えて。
でもなんか最後まで、日奈子がずっとこう……『大事大事!』って言ってたら、みんな歌いづらいかなとか思ってたときに、まいちゅんが最後にやってくれて、あの……ちゃんと間違えてくれて。なんかセンターに入るっていうのに全然センターに入んないのよ。
その新しい「日常」もできたから、これからみんなね、もっといっぱい踊ってほしいなって思う。」(「ベストソング歌謡祭」[2022年2月21-23日「乃木坂46時間TV(第5弾)」内]、北野日奈子)
前述の通り、「乃木坂46時間TV(第5弾)」内の「46時間TVスペシャルライブ」(2022年2月23日)内では、北野にとっての全体ライブでの最後の披露機会があった。オリジナルメンバーをベースに3・4期生のアンダーメンバーを加えるフォーメーションでの披露であり、久保史緒里と北野がともにパフォーマンスするのは2年ぶり、そして最後の機会となった39。
それに続き、約ひと月後の2022年3月24日に開催された「北野日奈子卒業コンサート」。もちろんこのときが北野にとっての最後の披露機会となった。ライブ本編最後の1曲として、北野はメンバーのなかでひとりだけ、オリジナルの歌唱衣装を身にまとって披露した。フルサイズでの披露は約3年ぶりであっただろうか。落ちサビでは歴代のライブで北野がパフォーマンスする様子をまとめたVTRも流され、この曲とともに力強く歩んできた北野の日々が改めて思われた。客席は一点の曇りもない真っ青。北野がセンターとして燃やしつづけてきた炎が、会場全体を巻き込んだ最高のステージをつくり出した40。
「私にとっての代名詞」。卒業コンサートに先がけて発売された2nd写真集『希望の方角』のインタビューで、北野は「日常」について、そんな言い方をしていた。それは北野にとっての「居場所」になり、キャリアを通じてポジションに並々ならぬ執着を見せ続けてきた彼女に、「心残りはあるけど、後悔はない」と言わしめた。
——アイドルになった頃に立てた目標はクリアできましたか?
北野 選抜のフロントに立つとか、センターになるとか、そういう目標はありました。実現はできなかったけど、『日常』という曲をいただいてからは考えが変わりました。選抜になること、センターに立つことだけが特別じゃないんだなって。アンダーのセンターで『日常』を歌うことになって、自分に居場所ができたのも大きかったです。以前、生駒さんが『制服のマネキン』を自分の代名詞的な曲にしたいと話していたことがあったんだけど、私にとっての代名詞は『日常』になりました。去年の東京ドームでのライブでは、『日常』を気持ちよく歌えましたし。だから、目標を達成できなかったという心残りはあるけど、後悔はないです。(『希望の方角』北野日奈子インタビュー)
卒業コンサートを終えた約1ヶ月後の4月20日、最後の「猫舌SHOWROOM」にソロで出演した北野は、事務所を移籍することを匂わせながら、最後の「乃木坂特権」と称して、グループの楽曲を何曲もカラオケで歌唱した。多くの曲は、視聴者からのコメントや投票でのリクエストをもとに選曲されていたが、唯一「日常」については「マジでNGでお願いします」と言い切り、「卒コンでのパフォーマンスが最後なので」と説明した。最後のステージですべてを出し切り、自分にとっての「日常」はそこに置いていく。きっぱりとした身の処し方に、楽曲への強い思いが表れていた。
それからの「日常」
北野がグループを卒業してからも、彼女が希望した通り、「日常」はコンスタントにライブで披露され続けている。卒業コンサートの翌日から3公演が行われた「29thSGアンダーライブ」では披露されなかったものの、「30thSGアンダーライブ」「31stSGアンダーライブ」「32ndSGアンダーライブ」と、毎回のアンダーライブでセットリストに加えられ41、アンダーライブにおいて欠くことのできない存在となっている。センターを伊藤理々杏が務める形が一定期間続いたが、「32ndSGアンダーライブ」では向井葉月がセンターに立っており、新たな展開を見せてもいる42。
グループとして歴代最大規模のライブとなった、日産スタジアムでの「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」(2022年5月14-15日)では、表題曲およびアルバムのリード曲が全曲披露され、そのぶんアンダー曲の披露が2日で5曲とそこまで多くない状況のなかで、DAY2のセットリストに加えられ43、久保史緒里のセンターで披露されている。現役のオリジナルメンバーと当時の29thアンダーメンバー全員がステージに立ち、特に並々ならぬ思いを持って臨んだという久保のたたずまいは語り草となった。
——『日常』は北野さんから直接、受け継いでセンターに立ちました。
久保 日奈子さんが卒業して一発目の『日常』ということもあり、恐ろしく感じました。いざ歌うと、日奈子さんはメンバーの燃え滾るような熱をすべて背負っていたんだと気がついて。ファンの方の熱は応援の力になるけど、メンバーの熱はプレッシャーにもなるんです。だから、センターに立つことがものすごく苦しくて、「私でいいのかな」という感情は拭えなかったです。
——ステージに立って吹っ切れました?
久保 正直、曲に入っても吹っ切れることはできずに苦しくて。でも、間奏あたりで「この感情をむき出しに歌う『日常』もありなんじゃないか」と気づいたんです。そこからは日奈子さんとの思い出が甦ってきて、「だから苦しいんだ」と感じながらパフォーマンスしました。あのときにしかできない『日常』だったし、あれで完成だったと思います。
——『日常』から『毎日がBrand new day』、『僕は僕を好きになる』で、乃木坂46の歴史に久保さんがしっかり刻まれていると思いました。
久保 2日目の序盤に『三番目の風』を歌ったとき、「3期生、乃木坂46になったなぁ」と感じたんですけど、私個人としては、まだ悔しさを感じることが多いかな(笑)。
柴田 久保さんのパフォーマンスは「完璧」という言葉が合うと思うんです。誰もが理想に描く動きと表情でパフォーマンスしているなって。しかも「乃木坂らしさ」がある。振りの映像を観るときも久保さんを参考にすることが多いんです。久保さんは私が目指すところだと思います。どうやって作りあげているのか気になります。
——種明かしはしてくれますか?(笑)
久保 自分では完璧と逆というか、いつからか万人にウケる表現をやめて、「ひとりに刺さったらそれでいい表現」に切り替えたんです。それこそ私の『日常』の表現を正解と思わない人もいるはずだけど、私はそれでもいいと思って。
柴田 一人ひとりに刺さって、その結果、たくさんの人の心を動かしている気がします。
久保 うれしい。ありがとう。(『EX大衆』2022年7月号 p.87)
また、過去にリリースされた表題以外の曲となれば、改めて世に出る機会はライブにほぼ限られることになるが、そのなかにあって2022年6月17日放送の「MUSIC BLOOD」では、「秋元康×乃木坂46」として出演してグループの楽曲やパフォーマンスが取り上げられるなかで、「アンダーの人気曲」として「日常」が紹介され、金川紗耶をセンターとして披露されている44。金川はこの直後の30thシングル以降は選抜メンバーとして活動、特に31stシングルでは2列目のポジションをあてがわれており、当時の29thシングルではアンダーセンター・佐藤楓の隣のポジションであった。金川のそんなポジションの変遷も含めて、貴重な機会であったといえるだろうか。
今年に入ってからの「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」(2023年2月22-26日)においては、DAY1の全体ライブ、およびDAY2の5期生ライブで披露されたというのは前述の通りであるが、全体ライブではすでに卒業を発表していた最後の2期生・鈴木絢音がセンターに立って披露されており、このほかは31stアンダーメンバーを基本としながらも、岩本蓮加や久保史緒里も参加して、数少なくなったオリジナルメンバーが揃って演じた形ともなった。5期生ライブでは、奥田いろはをセンターとして、11人の5期生が11年分の楽曲を各年1曲ずつセンターに立って披露していくブロックにおいて披露されているが、披露前には奥田が北野および「日常」について語るVTRが流されており、楽曲のみならず北野についても、卒業から1年弱を経て改めてクローズアップされる形となっていた。
直近で公演数の多いアンダーライブが続いたこともあり、ライブにおいて披露された回数でいえば、「日常」はすでに北野以外がセンターに立って演じられた回数が多くなろうかというくらいの状況になっている45。そしてそのうちの大半は北野が卒業したあとのことだ。いまなお現在進行形で、乃木坂46という大きな河のなかでストーリーを紡ぎ続ける「日常」。この先にはどんなことがあるのか引き続き楽しみにしていたいし、北野が燃やした炎がグループで燃え続けていることを喜びたいと思う。
(最終更新2024年2月14日)※Cはセンターメンバーの意。現在映像で視聴できるものは太字で記載した。衣装や参加メンバーなどに関して、映像その他で確認できないものについては、推測、または当時のメモのみで記載している部分があるので留意されたい。
■ 2018年 | ||
日付 | 公演/番組 | 備考 |
11月12日 | 「プレミアMelodiX!」 | ・オリジナルメンバー ・MV衣装(オリジナル歌唱衣装) ・アンダーメンバーでの番組出演 |
11月18日 | 「乃木坂46 SHOW!」(「AKB48 SHOW!」#204) | ・オリジナルメンバー ・フルサイズ ・MV衣装(オリジナル歌唱衣装) |
11月20日 | 「BOMBER-E I-ナイト」 | ・オリジナルメンバー ・MV衣装(オリジナル歌唱衣装) ・アンダーメンバーでの番組出演 |
12月19日 | 「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」DAY1 | ・オリジナルメンバー[−寺田] ・フルサイズ、本編最後 ・MV衣装(オリジナル歌唱衣装) ・寺田は体調不良によりこのブロック不在 ・川後はこのときが最後の披露 ・DAY2の模様がのぎ動画で配信中 |
12月20日 | 「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」DAY2 | |
■ 2019年 | ||
2月23日 | 「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY3 | ・オリジナルメンバー[-川後] ・川後は卒業済 ・MV衣装(オリジナル歌唱衣装) ・曲前VTR(北野の歩み) ・センターステージでの披露 ・Blu-ray/DVDに収録(のぎ動画で配信中) |
3月10日 | 全国握手会ミニライブ(幕張メッセ) | ・オリジナルメンバー[-川後] ・フルサイズ ・22nd制服 ・川後は卒業済、ほか欠席メンバーなし ・「PROJECT REVIEWN」あり |
3月21日 | 全国握手会ミニライブ(ポートメッセなごや) | |
3月31日 | 全国握手会ミニライブ(インテックス大阪) | |
5月24日 | 「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ ~アンダーライブ~」 | ・C寺田、23rdアンダーメンバー+優里、かりん ・「CDTVスペシャル!年越しプレミアライブ2017→2018」で着用の白黒・ノースリーブのドレス衣装(cf.2018年5月の生写真) ・優里はこのときが最初で最後の披露 ・かりんはこのときが最後の披露 ・のぎ動画で配信中 |
7月3日 | 「真夏の全国ツアー2019」愛知公演1日目 | ・オリジナルメンバー[-川後、かりん] ・川後・かりんは卒業済 ・佐々木はこのときが最後の披露 ・樋口は愛知公演と福岡公演、純奈は福岡公演と大阪公演を欠席 ・ツアー新作の青衣装 ・直前の「滑走路」終わりでペンライト青誘導 ・間奏長めのアレンジでダンストラック ・大阪公演2日目は台風接近により中止 ・愛知公演2日目、東京公演3日目の模様がのぎ動画で配信中 |
7月4日 | 「真夏の全国ツアー2019」愛知公演2日目 | |
7月20日 | 「真夏の全国ツアー2019」福岡公演1日目 | |
7月21日 | 「真夏の全国ツアー2019」福岡公演2日目 | |
8月14日 | 「真夏の全国ツアー2019」大阪公演1日目 | |
8月30日 | 「真夏の全国ツアー2019」東京公演1日目 | |
8月31日 | 「真夏の全国ツアー2019」東京公演2日目 | |
9月1日 | 「真夏の全国ツアー2019」東京公演3日目 | |
10月10日 | 「アンダーライブ2019 at 幕張メッセ」DAY1 | ・C岩本、24thアンダーメンバー[−純奈、佐々木、樋口、向井] ・純奈、樋口、向井は舞台出演、佐々木は体調不良により公演を欠席 ・理々杏、楓はこのときが初披露 ・衣装はこのときの新作(黒・白・青、ノースリーブ、アシンメトリーのワンピース) ・プロジェクションマッピング演出 ・DAY2の模様がのぎ動画で配信中 |
10月11日 | 「アンダーライブ2019 at 幕張メッセ」DAY2 | |
11月26日 | 「3・4期生ライブ」DAY1 | ・C久保、3期生 ・大園、梅澤、山下、与田はこのときが初披露 ・「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」時に制作の花柄白ワンピース+白パンツ衣装 ・イントロにダンストラック ・DAY2の模様がのぎ動画で配信中 |
11月27日 | 「3・4期生ライブ」DAY2 | |
■ 2020年 | ||
2月23日 | 「8th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY3 | ・北野、久保+24thアンダーメンバー[-佐々木] ・佐々木はこのライブを欠席 ・中田はこのときが最後の披露 ・MV衣装(オリジナル歌唱衣装) ・Blu-ray/DVDに収録 |
12月18日 | 「アンダーライブ2020」DAY1 |
・26thアンダーメンバー |
12月19日 | 「アンダーライブ2020」DAY2 | |
12月20日 | 「アンダーライブ2020」DAY3 | |
■ 2021年 | ||
2月23日 | 「9th YEAR BIRTHDAY LIVE」 | ・26thアンダーメンバー ・「アンダーライブ2020」で初出の「口ほどにもないKISS」衣装(cf.2021年7月生写真) ・無観客・配信ライブ ・Blu-ray/DVDに収録 |
3月28日 | 「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜2期生ライブ〜」 | ・2期生(次曲センターの山崎を除く7人) ・全員センターブロックの「努力」のパートで北野が選曲 ・学生の制服風の衣装 ・新内、堀はこのときが初披露 ・無観客・配信ライブ ・Blu-ray/DVDに収録 |
5月8日 | 「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜4期生ライブ〜」 | ・C筒井、4期生 ・16人全員がこのとき初披露 ・7thBDLで初出のブルーのワンピース衣装(cf. DAY4冒頭、4期生はオリジナルではない) ・無観客・配信ライブ ・Blu-ray/DVDに収録 |
5月26日 | 「アンダーライブ2021」 | ・27thアンダーメンバー ・純奈、渡辺はこのときが最後の披露 ・イントロにダンストラック ・「アンダーライブ2020」で初出の迷彩スカート衣装 ・無観客・配信ライブ |
7月15日 | 「真夏の全国ツアー2021」大阪公演2日目 | ・27thアンダーメンバー[-純奈、渡辺] ・純奈と渡辺は卒業により出演なし ・寺田はこのときが最後の披露 ・MV衣装(オリジナル歌唱衣装) ・「夏ツアーで聴きたい曲トップ“10”」アンダー曲部門1位の楽曲として披露 ・福岡公演は当時配信あり ・大阪公演での披露の模様がのぎ動画で配信 ・福岡公演での披露の模様が「好きというのはロックだぜ!」Type-Cの特典映像に収録 |
7月18日 | 「真夏の全国ツアー2021」宮城公演2日目 | |
8月15日 | 「真夏の全国ツアー2021」愛知公演2日目 | |
8月21日 | 「真夏の全国ツアー2021」福岡公演1日目 | |
11月20日 | 「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」1日目 | ・27thアンダーメンバー[-純奈、寺田、渡辺] ・純奈、渡辺は卒業済み、寺田は卒業により出演なし ・MV衣装(オリジナル歌唱衣装) ・「夏ツアーで聴きたい曲トップ“10”」アンダー曲部門1位の楽曲として披露 ・曲前ダンストラック(メンバー紹介演出) ・当時両日とも配信あり ・Blu-ray/DVDに収録 |
11月21日 | 「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」2日目 | |
■ 2022年 | ||
2月10日 | 「新内眞衣卒業セレモニー」 | ・新内、北野、鈴木+28thアンダーメンバー[-寺田、理々杏、中村、向井]? ・寺田は卒業済、理々杏は新型コロナウイルス感染、中村、向井はスケジュールの都合でこのライブを欠席 ・C北野でスタート、落ちサビはC新内、以降はC北野・新内?(新内が立ち位置を間違えたというエピソードもあり不明) ・紅白2019衣装(「シンクロニシティ」披露時) ・当時生配信あり |
2月23日 | 「NOGIZAKA46 10th Anniversary 乃木坂46時間TV スペシャルライブ」 | ・オリジナルメンバーがベースのフォーメーション ・ポジション:寺田→理々杏、中田→楓、渡辺→柴田、純奈→黒見、川後→金川、かりん→矢久保、佐々木→璃果 ・「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」で初出のパープル衣装 ・「乃木坂46ベストソング歌謡祭」表題曲以外部門1位の曲として披露(メンバー・バナナマンによる投票) ・有観客+YouTube配信 ・のぎ動画で配信中 |
3月24日 | 「北野日奈子卒業コンサート」 | ・北野+29thアンダーメンバー[-弓木] ・弓木は新型コロナウイルス感染のため欠席 ・フルサイズ ・北野はMV衣装(オリジナル歌唱衣装)、他メンバーは「真夏の全国ツアー2019」での披露時の青衣装 ・北野にとっての最後の披露 ・当時生配信あり |
5月15日 | 「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY2 | ・C久保+樋口・鈴木・岩本+29thアンダーメンバー ・現役のオリジナルメンバーは全員参加、オリジナルを上回る20人での披露(現状歴代最多) ・ポジション:北野→久保→金川、寺田→和田→林、渡辺→阪口→松尾、中田→楓、純奈→黒見、川後→理々杏、かりん→矢久保、佐々木→璃果、3列目の端に北川(下手側)、弓木(上手側) ・樋口、山崎はこのときが最後の披露 ・7thBDLで初出の水色のベルトありワンピース衣装(cf. DAY4本編最後) ・当時生配信あり ・Blu-ray/DVDに収録 |
6月17日 | 「MUSIC BLOOD」 | ・C金川、29thアンダーメンバー[-山崎] ・山崎は卒業発表直後(発表6月13日、卒業7月17日) ・グループとして出演した番組のなかで、「アンダーの人気曲」として披露 ・MV衣装(オリジナル歌唱衣装) ・ワンハーフ、間奏・アウトロ一部省略 |
10月5日 | 「30thSGアンダーライブ」大阪公演3日目 | ・C理々杏、30thアンダーメンバー[-中村] ・中村は新型コロナウイルス感染のため欠席 ・理々杏はこのときのアンダーライブにこの公演のみ参加(スケジュールの都合)、これにともないこの日のみセットリストに追加 ・「Mai Shiraishi Graduation Concert 〜Always beside you〜」序盤で初出(25th選抜メンバーが着用)の赤一色の衣装 ・和田はこのときが最後の披露 ・当時生配信あり |
12月1日 | 「31stSGアンダーライブ」神奈川公演1日目 | ・C理々杏、31stアンダーメンバー ・北川は福岡公演でのけがのため愛知・大阪の4公演を休演、神奈川公演2日目はこのブロック不在 ・このとき初出の紺色の衣装 ・神奈川公演2日目は当時生配信あり |
12月7日 | 「31stSGアンダーライブ」北海道公演1日目 | |
12月8日 | 「31stSGアンダーライブ」北海道公演2日目 | |
12月12日 | 「31stSGアンダーライブ」福岡公演 | |
12月14日 | 「31stSGアンダーライブ」愛知公演1日目 | |
12月15日 | 「31stSGアンダーライブ」愛知公演2日目 | |
12月16日 | 「31stSGアンダーライブ」大阪公演1日目 | |
12月17日 | 「31stSGアンダーライブ」大阪公演2日目 | |
12月19日 | 「31stSGアンダーライブ」神奈川公演2日目 | |
■ 2023年 | ||
1月20日 | 「乃木フェス大感謝祭」 | ・C理々杏、31stアンダーメンバー ・31st制服(ジャケットなし?) |
2月22日 | 「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY1[全体ライブ] | ・C鈴木、オリジナルメンバー+31stアンダーメンバー ・阪口は右耳低音障害型難聴のためこの日欠席 ・「真夏の全国ツアー2021」で初出の赤衣装 ・ファンへのアンケート第18位(全255曲中)の曲として披露 ・間奏長めのアレンジ ・当時生配信あり |
2月23日 | 「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY2[5期生ライブ] | ・C奥田、5期生 ・11人全員がこのとき初披露 ・曲前に奥田が「日常」と北野について語るVTRあり ・「真夏の全国ツアー2021」で初出の赤衣装 ・当時生配信あり |
4月5日 | 「32ndSGアンダーライブ」TOKYO DOME CITY HALL公演1日目 | ・C向井、32ndアンダーメンバー[-中村、岡本] ・中村はスケジュールの都合、岡本は体調不良による休業のため欠席 ・「ミュージックステーション3時間スペシャル」(2019年10月18日)で初出のネイビーのロングスカート衣装(「スペシャル衣装22」) ・東京ガーデンシアター公演2日目は当時生配信あり |
4月6日 | 「32ndSGアンダーライブ」TOKYO DOME CITY HALL公演2日目 | |
4月8日 | 「32ndSGアンダーライブ」大阪公演1日目 | |
4月9日 | 「32ndSGアンダーライブ」大阪公演2日目 | |
4月11日 | 「32ndSGアンダーライブ」愛知公演1日目 | |
4月12日 | 「32ndSGアンダーライブ」愛知公演2日目 | |
4月26日 | 「32ndSGアンダーライブ」東京ガーデンシアター公演1日目 | |
4月27日 | 「32ndSGアンダーライブ」東京ガーデンシアター公演2日目 | |
9月29日 | 「33rdSGアンダーライブ」1日目 | ・C松尾、33rdアンダーメンバー ・このとき初出?の紺色のレース地ベースの衣装 ・3日目公演は当時生配信あり、TBSチャンネル1で後日放送あり |
9月30日 | 「33rdSGアンダーライブ」2日目 | |
10月1日 | 「33rdSGアンダーライブ」3日目 | |
11月27日 | 「新参者 LIVE at THEATER MILANO-Za」8公演目 | ・C小川、5期生 ・アンコール1曲目で披露、他公演では「ロマンスのスタート」または「ハウス!」の位置であり、新参者公演での披露はこのときだけ ・Tシャツ、アンコールスカート ・当時生配信あり |
■ 2024年 | ||
1月25日 | 「34thSGアンダーライブ」1日目 | ・C小川、34thアンダーメンバー ・このとき初出?の白基調のフィッシュテール衣装 ・3日目公演は当時生配信あり |
1月26日 | 「34thSGアンダーライブ」2日目 | |
1月27日 | 「34thSGアンダーライブ」3日目 |
これが当初思い描いていたような形だったかは忘れてしまったが、どうにかここまで書くことができたことを喜びたいと思う。前稿の「アンダー」より、「日常」は多くのメンバーによって演じられてきたし、多くのメンバーによって語られてもきた。それだけに、前稿ほどには「多くの資料にあたれた」という実感はないし、筆者の乏しい筆力ではいくぶん散漫な記事になってしまったかもしれない。でも、北野が何よりも執着した「日常」について、改めて自分なりにその歩みを追うことができたのは楽しかったし、発見したことや再確認したこともたくさんあった。
次回は「乃木坂46 北野日奈子 卒業コンサート」と題して、タイトル通り北野の卒業コンサートと、その前後の出来事について振り返っていくことにする(あまり間を空けずに書くように努めたい)。
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- 北川悠理がけがで休演した公演もあり(愛知、大阪での計4公演)、これらの出演メンバーは9人。
- 前作からのアンダーメンバーの増加数7人は、20thと並んで歴代最多タイである。また、3・4期生のメンバーにも選抜・アンダー間の入れ替わりがあり、今作で初めてアンダーメンバーに加わることになる清宮レイは、22ndシングルでの久保史緒里以来10作ぶりの「新メンバーの選抜・アンダー合流のタイミング以外のタイミングで初めてアンダーメンバーとなる」メンバーとなる。やや迂遠な言い方になっているのは、「新メンバー合流のタイミング以外で初めてのアンダーライブを経験する」とすると、20thアンダーメンバーでありながら舞台出演のため「アンダーライブ全国ツアー2018〜中部シリーズ〜」を欠席した伊藤理々杏を「アンダーライブ全国ツアー2018〜北海道シリーズ〜」で、28thアンダーメンバーでありながら学業の都合で「28thSGアンダーライブ」を欠席した黒見明香を「29thSGアンダーライブ」で含むこととなり、「選抜メンバーを経験したのちに初めてアンダーライブを経験する」とすると、32ndシングルでの中西アルノが含まれるためである。初アンダーライブに臨むにあたっては新しく覚えてパフォーマンスする楽曲も多くなる傾向があり、それを同期メンバーと一緒にではなく経験する、というくらいの趣旨でとりあげている、ととらえていただきたい(そう考えると、32ndでの清宮はアンダーの5期生とともにそれに臨む一方、21stでの理々杏と29thでの黒見のほうがむしろ際立ってくることにもなるが)。
- 2015年2月22日の「3rd YEAR BIRTHDAY LIVE」でのアナウンスをもって研究生から正規メンバー昇格となった、伊藤純奈・佐々木琴子・鈴木絢音・寺田蘭世・山崎怜奈・渡辺みり愛の6人。
- 前作比+4人。13thはそこからさらに+3人と増加し、20thと並んで歴代最多タイの21人となっている。12thは前作と同様の選抜メンバー18人体制で、松井玲奈の兼任解除、および山崎怜奈のこのシングル不参加(学業による活動休止)が作用して増分は4人となっている。13thでは山崎が再合流し、選抜メンバーが16人体制となったことにより、さらに3人増という数字となった。ただし、アンダーメンバーへの合流前の研究生は、アンダーライブには参加している。
- 前作比+7人。増加幅としては32ndと並んで最多である。また、このときのアンダーメンバー21人は13thと並んで歴代最多タイである。なお、20thシングルは、夏の開催であった「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」(2018年7月6-8日)を「シンクロニシティ・ライブ」と称して、選抜・アンダーの2チームを明治神宮野球場・秩父宮ラグビー場を往還させる形で行ったときのシングルであり、選抜メンバーも同数の21人であった(ただし、「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」時点で選抜メンバーの生駒里奈はすでにグループを卒業し、同じく選抜メンバーの久保史緒里はこのライブを欠席しており、かつこのシングル不参加扱いの北野がアンダーメンバー側のチームで参加しているため、ライブに臨んだチームの人数には差がある)。
- 前作比+5人。なお、このときすでにいわゆる「新4期生」の区別は、少なくとも選抜・アンダーとしての取り扱いの上では存在していない。なお、「28thSGアンダーライブ」には、黒見明香が学業のため欠席している。
- 18thシングルでは大園桃子・与田祐希がセンターとして選抜入りする一方、選抜メンバーの人数は前作の21人から3人減少した18人であり、結果としてアンダーの人数は前作比+6人の18人。24thシングルでは遠藤さくらがセンターとして、賀喜遥香と筒井あやめがフロントメンバーとして選抜入りする一方、選抜メンバーの人数は前作の22人から4人減少した18人であり、結果としてアンダーの人数は前作比+6人の18人であった。
- 28thシングルのアンダーメンバーはこれに並ぶ18人で、これが22ndシングル以後の最多の人数である。なお、「28thSGアンダーライブ」には黒見明香が学業の都合により欠席となっていたため、アンダーライブの出演メンバーはひとり少ない17人であった。
- 筆者は初めて現地で立ち会ったアンダーライブが東京体育館での「アンダーライブ全国ツアー2017〜関東シリーズ 東京公演〜」であったので、ややそうしたバイアスもあるように思う(「“あの頃”のアンダーライブ」とひとくちにいうならば、2ndシーズンや2015年の「アンダーライブ at 日本武道館」あたりのことを指しそうな感じもある)。
- 端緒は2016年3月19-20日の「アンダーライブ全国ツアー2016〜永島聖羅卒業コンサート〜」(永島の出身地である愛知県の、名古屋国際会議場センチュリーホールで開催)である。この間、二度の東京開催(「関東シリーズ」として)があったほか、16thシングル期のアンダーライブは「Merry Xmas Show 2016〜アンダー単独公演〜」としての開催であり「全国ツアー」と銘打たれてはいなかったが、足かけ3年にわたって続けられてきた「アンダーライブ全国ツアー」は、特段のアナウンスのないままこの公演で終了した。乃木坂46運営委員会委員長・今野義雄によれば、「アンダーライブ全国ツアー」のスタートに際しては首都圏以外のファンを獲得するというミッションをアンダーメンバーに託す、という意図があったようで、それが一定の成果をあげたという部分もあったのかもしれない。「実はいま、乃木坂46の問題点ってなんだろうといえば、東京に比重が高いことです。完全に首都圏アイドルなんですよね。首都圏においてはものすごく強いけれど、地方ではまだまだ知られてないし、存在感がそんなに伝わってない。ここをどうやって開拓していくかがグループ全体のテーマなのですが、ここをアンダーに背負ってもらうことになると思います。ステージを見てもらって、ファンを獲得するというミッションをアンダーに託す。ただ、これまでやっていたのと同じような魂のぶつかり合いを、そのまま持って行って成功するかというのもまた違うと思うんですね。新しいテーマを考えて、何か変えていかなければいけない。」(リアルサウンド「乃木坂46運営・今野義雄氏が語る、グループの“安定”と“課題” 『2016年は激動の年になる』」[2016年1月30日配信])
- 二重に迂遠な言い方になっているので補足したい(そうまでして言うべきことかというと疑問符がつくが)。この「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」の観客数は1公演あたり10000人であったとされている(参考)。一方で2015年の「アンダーライブ at 日本武道館」の観客数は同じく10000人(参考)、2016年の「Merry Xmas Show 2016〜アンダー単独公演〜」は同じ日本武道館での開催だったが12000人であったとされている(参考)が、前者は「Merry X’mas Show 2015」と、後者は選抜単独公演および「3期生お見立て会」と連続して開催された公演である(観客数8000人ではあるが、「アンダーライブ セカンド・シーズン FINAL〜Merry X’mas “イヴ” Show 2014〜」も「Merry X’mas Show 2014」と連続して開催された公演である)。また、これより後にも「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ〜アンダーライブ〜」(2019年5月24日)は観客数15000人であったとされているが(参考)、これも選抜ライブ・4期生ライブと連続して開催された公演である。これらを除くことにすれば(そのこと自体の妥当性は問われるべきかもしれないが、ここではいったん措くとして)、1公演あたりの観客数が10000人に達したアンダーライブの公演はなく、「アンダーライブ全国ツアー2017〜関東シリーズ 東京公演〜」の(東京体育館:参考)と「アンダーライブ2019 at 幕張メッセ」(幕張メッセイベントホール:参考)の8000人が最多となる(このほか、地方公演の会場としても九州シリーズの福岡国際センターなど、これに次ぐレベルの規模の会場はあった)。また、「アンダーライブ2020」は日本武道館で、「アンダーライブ2021」は横浜アリーナを会場として単独で行われたものであるが、コロナ禍で有観客公演の座席数に制限があった時期であり、観客数5000人を上限とした開催が前提であったことから(「アンダーライブ2021」は、結果として無観客・配信形式での開催となった)、これも除くことにしている。
- 現役の3期生は11人、4期生は16人、5期生は11人。
- 以後、セットリストをベースにライブ全体をざっと振り返っていくが、のぎ動画で配信されているので、そちらをあたれば足るような内容も多い。やや冗長となるが、適宜読み飛ばしていただくことにして、ご容赦いただきたい。
- その後、7th・8thの二度のバースデーライブ、「アンダーライブ2020」、「星野みなみ卒業セレモニー」、「31stSGアンダーライブ」と、巡りあわせの問題もあるだろうが(デビュー記念日がそもそも冬であるため、全曲披露のバースデーライブもほぼ冬の出来事となる)、冬場になると毎年演じられる曲のような扱いになっている。
- 「傾斜する」(および同じく「こじ坂46」名義で制作された、AKB48・38thシングル所収の「風の螺旋」)は10thシングル期の楽曲であり、当時の研究生は、いわゆる“ボーダー組”6人(伊藤純奈・佐々木琴子・鈴木絢音・寺田蘭世・山崎怜奈・渡辺みり愛)および相楽伊織。
- 「傾斜する」は披露機会の少ない楽曲で、発表年である2015年に開催された「アンダーライブ4thシーズン」および翌年の「アンダーライブ全国ツアー2016〜永島聖羅卒業コンサート〜」において披露されたほかは、バースデーライブとこのときのアンダーライブに披露機会が限られていたような状況であったが、寺田蘭世にとっての最後のライブとなった「28thSGアンダーライブ」(2021年10月26-28日)において久しぶりに披露されている。なお、「遠回りの愛情」も披露機会としてはこれと近い部類に入り、ほぼ同じだけのブランクがあったのち、これも「28thSGアンダーライブ」で久しぶりに披露されることとなった。
- アンダーアルバム「僕だけの君〜Under Super Best〜」所収。
- この公演のセットリストは冒頭が「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」「狼に口笛を」「左胸の勇気」と、アンダー曲で始められている。北野はこれに続く「裸足でSummer」より、この曲の選抜メンバーとして登場しており、オリジナルメンバーである「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」含め、冒頭の3曲には参加していなかった。
- ただし、北野は直前のMCにおける最後の曲振りにおいて、「アンダー」から始まる全体を「最後のブロック」とアナウンスしている。また、下に引用しているのぎ動画「久保チャンネル #16」でも、「アンダー」以降を一体のブロックとしてとらえているような発言をしていると読み取れる。
- アンダーライブがスタートしたのは8thシングルのタイミングで、8thシングルから22ndシングルまでの期間すべてをアンダーメンバーとして活動したのが川後だけということでもあるが、その間行われたアンダーライブの公演については一度も欠席しなかったということでもあった。
- このときのバースデーライブはDAY4が西野七瀬の卒業コンサートという形であり、DAY1からDAY3でおおむね「DAY4で披露しない楽曲をリリース順に披露」のような形でセットリストが組まれていた。
- リリース当時の「真夏の全国ツアー2017」以来の披露で、北野は当時体調が万全ではなかったこともあり(こうした事情から、披露も2公演のみにとどまっていたが、筆者は偶然にもそのなかで、初披露となった8月13日のゼビオアリーナ仙台公演に立ち会うことができた)、“復活”を遂げた北野が、肩ひじ張らない歌詞を表情を緩めながら歌う姿が感慨深かった。
- 当初の予定にはなかったが、メンバーからの要望で追加されたものだったという。暗転したステージに並ぶ2期生メンバーをナレーションでキャッチフレーズとともに紹介しながらスポットライトを当てていく形であった。北野のキャッチフレーズは「ワンちゃん大好き」。
- コーナー後に4期生が披露したのは、同じくアンダーアルバム所収の「自分のこと」(中元日芽香ソロ曲)であった。
- 西野は2018年末をもってグループでの活動を終えた扱いであり、卒業コンサートのみを持ち越していたような形であった(齋藤飛鳥の卒業にあたっての取り扱いとほぼ同じ)。このときのバースデーライブにもDAY1〜DAY3には出演しないと告知されており、各日サプライズの形で登場してソロ曲のみを披露していた。
- 「今が思い出になるまで」は22ndシングルの体制をベースに制作されており、北野はリード曲の「ありがちな恋愛」にはオリジナルメンバーとして参加はしていない。アンダー曲の新規制作はなく、アルバムの新曲では堀未央奈・渡辺みり愛とのユニット曲「ゴルゴンゾーラ」のみに参加した。
- 直前に演じられた「滑走路」においては、メンバーの呼びかけやモニターでの誘導に応じて客席がペンライトの色を変えていくという遊びの部分が取り入れられていたが、その流れで最後にペンライトを青色に誘導した上で「日常」が始まる、という流れであった。このときの「日常」披露時の衣装は青色であったものの、「日常」に対して直接青色が指定されていたような形では必ずしもなかった(はず)ということは留意したい(後述するが、北野が「日常」のパフォーマンスに青色を見い出すようになったのはもう少しあとの時期である。)。
- あまり考えずにそのときごとの感情でパフォーマンスをしよう、というような心がけは、「日常」に限らず、休業を経たのちの北野が一貫してもち続けていたようにも思う。「その時その時の感情でパフォーマンスしているんですけど、それは『アンダー』を通して学んだことなんです。」(『EX大衆』2019年6月号 p.21)と、「真夏の全国ツアー2019」より前の時期にも語っていたほか、「アンダー」に関して「もう考えないで」、そのときの思いを表現したい、というようなことは、「アンダーライブ2020」2日目(2020年12月19日)のVTRでも語られていた。
- 9月1日・明治神宮野球場での千秋楽公演をもって。
- 発表は8月14日の京セラドーム大阪公演にて。なお、翌日に予定されていた京セラドーム大阪公演2日目については、台風接近のため中止された。
- これも8月14日の京セラドーム大阪公演にて。このあとの明治神宮野球場での3公演でも披露されている。また、選抜発表の模様が放送されたのも、ツアー中の7月14日(「乃木坂工事中」#215)のことであった。
- 「僕のこと、知ってる?」は24thシングル所収のカップリング曲だが、24thシングル期への移行に先立つ時期に公開された映画「いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46」の主題歌として、早い段階から世に出ていた状態であった。オリジナルの歌唱メンバーは全メンバーというわけではなく、23rdシングルの選抜メンバーである。なお、これらの一連の経緯(映画の主題歌としてシングルの狭間の時期に制作され、前シングルの選抜メンバーをオリジナルの歌唱メンバーとし、全国ツアーのセットリストのなかで印象深く用いられる)は「悲しみの忘れ方」とも重なる。
- 「〜Do my best〜じゃ意味はない」までのアンダー曲29曲を、メドレー込みで両日とも全曲披露する形。アンコールまでを用いてこれを終えたあと「乃木坂の詩」を披露して終演となる、史上最もアンダー曲の割合が大きいセットリストであった(2日目公演ではダブルアンコールが起こったが、台風が接近していた状況もあり、メンバーはステージに戻ったものの楽曲披露はなしで終了)。
- ユニット曲のコーナーで演じられた「欲望のリインカーネーション」は、2ndアルバム「それぞれの椅子」所収の、14thシングルアンダーメンバーの1期生による楽曲であるが、アンダー曲全曲披露のセットリストが組まれた「アンダーライブ2019 at 幕張メッセ」および「アンダーライブ2020」ではアンダー曲としての取り扱いを受けていない。また「それぞれの椅子」では、アンダーメンバーを含めた2期生には「かき氷の片想い」があてがわれており(なお、14thシングル選抜メンバーのうち2期生は堀未央奈のみである)、アンダー曲の新規制作はなかった(1stアルバム「透明な色」では「自由の彼方」が、3rdアルバム「生まれてから初めて見た夢」では「君が扇いでくれた」が、それぞれアンダー曲として制作、収録されている。4thアルバム「今が思い出になるまで」では新規制作なし)。
- 5期生がアンダーメンバーに合流したのは32ndシングルのタイミングであり、選抜発表の放送そのものは直前の「乃木坂工事中」#399(2023年2月19日)で行われている。「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」での32ndシングル収録曲の披露は、5期生曲「心にもないこと」(および、すでにデジタル配信されていた秋元真夏の卒業曲「僕たちのサヨナラ」)のみであり、32ndシングル期に入る直前か、端境期くらいであったといえるだろうか。
- 地方公演ではアンケートでの4部門上位10曲、計40曲を各会場2公演で網羅する形であった(そのため、全曲が原則片方の公演でしか演じられない)が、東京ドーム公演では投票結果からはやや離れたセットリストが組まれ、中盤のブロックでランキング上位の曲が演じられる程度にとどめられていた。そのなかでは日替わりで演じられた楽曲もあったが、各部門1位の楽曲は2日ともで演じられる形がとられた(表題曲部門の「裸足でSummer」、カップリング曲部門の「ひと夏の長さより・・・」、アンダー曲部門の「日常」、ユニット&ソロ曲部門の「ファンタスティック3色パン」)。
- 発売日を考慮すると、このインタビューは地方公演と東京ドーム公演の間に行われたものとみられる。
- 同じような振る舞いを、北野は自らの卒業コンサートにおいて、堀未央奈の印象がかなり強い「バレッタ」をセンターに立って披露する、という形で見せ、その旨を自ら説明してもいた。
- 「新内眞衣卒業セレモニー」での披露時に久保は加わっていなかったと記憶しており、それを前提に記載しているが、現在は公式写真の1カット分くらいしか確認するすべがなく、やや自信がない。ただ、2022年2月26日の「乃木坂46・久保史緒里の乃木坂上り坂」では、久保は「オリジナルのポジションでやらせてもらったのは本当に何年ぶりのレベルだったんです」としていた。なお、この配信では、もともと「日常」は「46時間TVスペシャルライブ」とは違う場面で披露される形で計画されていたものの、日程の都合でライブに盛り込まれることになったという経緯があったということと、北野自身がオリジナルメンバーを含めた編成で披露したい旨をスタッフに強く進言したことで(「お願いします、これ入れてもらわないとみんな病みます」と脅し混じりで話した、というエピソードが冗談半分で紹介された)、それが実現したということが明かされている。
- 「日常」でのペンライトの色について、北野は「真夏の全国ツアー2021」の地方公演前半を終えた2021年7月20日に、755において「日常は青やねんなあ」と発信しているが、このときは照明の演出に引っ張られた面もあり、赤と青が交じるような状況であり、地方公演最後の会場であった福岡公演1日目(8月21日)の披露のあとには、同じく755で「日常のサイリウムカラー 赤と青なのすごい好きかもです なんか、めちゃめちゃ熱い炎みたいで 赤と青が交じってるの最高に熱そうでかっこいい」と発信していた(福岡公演での披露の模様は30thシングル「好きというのはロックだぜ!」Type-Cの特典映像に収録されている。スタンドの様子が確認できるカットは少ないが、おおむねそのような雰囲気だったことは確かに感じられる)。こののちに「久保チャンネル」#17で北野は改めて「『日常』は青」と強調するのだが、「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」(11月20-21日)の1日目も赤と青がないまぜの状況で、しかし2日目にはほとんどが青となっている(北野から何らかの発信があった記憶はないが、何か呼びかけがあったのだったろうか。現地では見られなかったので、あまり注意を払っていなかった)。卒業コンサートの際には、卒業企画実行委員会作成のフライヤーの裏に改めて「日常は青やねんなあ」が引用され、ペンライトを青色とすることが呼びかけられたこともあり、青一色の客席が実現している。
- 「30thSGアンダーライブ」では2022年10月5日の千秋楽公演のみでの披露。このときのアンダーライブには、スケジュールの都合で伊藤理々杏がこの公演のみの出演であり、その理々杏をセンターに据えての披露であった。
- 「32ndSGアンダーライブ」での「日常」と向井葉月については、この間に長めのnoteにしたためたところでもあるので、よろしければあわせてお読みいただきたい。筆者にとって向井は加入直後の時期から思い入れを持って見てきたメンバーでもあるので、その過程についても書きこんでいる。→「向井葉月と“乃木坂46”(乃木坂46・32ndSGアンダーライブによせて)」
- このほか披露されたアンダー曲は、DAY1の「狼に口笛を」と「ここにいる理由」(「ここにいる理由」はサプライズ登場した卒業生・伊藤万理華がセンター)、DAY2の「誰よりそばにいたい」と「届かなくたって…」である。
- 北野は2023年5月5日の「IMAREAL」出演時、金川が同番組のレギュラーであることからこのときのことについて言及する場面があった。「日常」のセンターに立つに際して金川から北野へ事前に連絡と相談があったといい、「泣きました、私、見て。」「震えました」とコメントしていた。
- 記事公開日時点において、北野がセンターに立って披露されたのは27回+全国握手会のミニライブで3回・テレビ番組で3回であり、それ以外は28回+テレビ番組で1回となっている(筆者のカウントによる)。細かい数字にあまり意味はなく、全国握手会をカウントから除くのに「乃木フェス大感謝祭」をカウントするのは微妙なところだったりもするし、すべての機会を拾えているかも自信がない。自分で書いておいて恐縮だが、「だいたい半々くらいになっている」程度にとらえていただきたい。
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