その手でつかんだ光 (乃木坂46・北野日奈子の“3320日”とそれから)[8]

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[タイトル写真:千葉県木更津市・金田さざなみ公園付近(筆者撮影)]

[8]「乃木坂46 北野日奈子 卒業コンサート」

 本稿では、北野日奈子の卒業コンサートについて、その前後の経緯を含めて振り返っていく。何よりも北野自身の思いを込めてつくられた卒業コンサートには、そこで演じられ、見せられたものにも、あるいは演じられなかったものについても、意味があるような、そんな気がしている。それを振り返ることによって、そこに照射された「乃木坂46・北野日奈子」の日々を、改めて見ていくことにしたい。

「その手でつかんだ光 (乃木坂46・北野日奈子の“3320日”とそれから)」目次

 ・[1]家族への信頼と愛情
 ・[2]ポジションと向き合った日々
 ・[3]同期・2期生という存在
 ・[4]“先輩”と“後輩”、グループのなかでの役割
 ・[5]「希望の方角」と「忘れないといいな」
 ・[6]あの夏のこと/アンダー曲「アンダー」
 ・[7] “代名詞”となった「日常」
 ・[8]「乃木坂46 北野日奈子 卒業コンサート」
 ・[9]中元日芽香、「大切な友達」として
 ・[ex]“それから”の日々と“これから”

※「北野日奈子卒業コンサート」については、傾向からいって「のぎ動画」での配信はいずれ期待されるところだが、映像として現在世に出ているわけではない(開催時の生配信およびリピート配信のみ)。そのため、特に公演そのものに関する記述については、曖昧な部分やムラがある部分も多くなっているように思う。この点についてはご寛恕いただくようお願いするとともに、今後改めて映像で確認できる機会があれば、かなりの幅で加筆する、または書き直す可能性があることもあらかじめご了承いただきたい。

 

「最後のSing Out!」

 北野の卒業コンサート、およびこれに続けて行われた「29thSGアンダーライブ」の開催が発表されたのは2022年2月28日のことで、「乃木坂46時間TV(第5弾)」(2月21-23日)よりもあとのタイミングであった。

 その「乃木坂46時間TV(第5弾)」の最終盤に行われた「46時間TVスペシャルライブ」では、北野は1曲目の「他人のそら似」をセンターを務める齋藤飛鳥の隣で演じ、「日常」をセンターで披露したほか、1-4期生全員での「おいでシャンプー」、および1・2期生での「走れ!Bicycle」に参加した。一方、「日常」に続く「口ほどにもないKISS」は29thアンダーメンバーでの披露であったため北野は参加しておらず、冒頭のソロパートの部分では特に、北野の不在や卒業について思われるような部分もあった1。そして終盤の「Sing Out!」にはオリジナルのポジションで参加し、最後に「乃木坂の詩」を歌って終えた。

 配信を終えた直後の2月25日、北野はモバイルメールでこのときの「46時間TVスペシャルライブ」に言及する2。「Sing Out!」のときに涙が止まらず歌えなくなってしまっていた、というような内容であったが、全体として「Sing Out!」にお別れをするようなトーンがあり、おやっ、と少し思ったことを覚えている。前述のように卒業コンサートの開催発表はまだであったが、少し前には新内眞衣と星野みなみの卒業セレモニーも開催されたばかりで、前日の2月24日には29thシングル「Actually…」の商品概要が公開され、北野のソロ曲「忘れないといいな」が収録されることもすでに明らかとなっていた。どのような形になるかはわからないが、卒業に際してイベントが開催されるのはほぼ確実だと感じられていて、そのなかで、北野にとって大切な楽曲のひとつである「Sing Out!」がもう最後、というような発信があったことは、やや意外であった。

 そのようななかで発表された公演概要は、「卒業コンサート」として開催する一方、出演メンバーは北野+29thアンダーメンバー、というものであり、かなり珍しい形であるように映った。グループとして、「卒業コンサート」(および「卒業セレモニー」)と冠した単独の公演3において、出演が全メンバー対象でない4のは永島聖羅の卒業コンサート以来で、これもアンダーライブの扱いであった(「アンダーライブ全国ツアー2016 〜永島聖羅卒業コンサート〜」、2016年3月19-20日)。

 卒業の区切りのライブでは、メンバー本人の思いによる選曲がなされることが定番である。それが「卒業コンサート」として開催されるということは、ひらたくいうと、その曲数が多いということだ。生駒里奈が選曲した「初日」「てもでもの涙」「心のプラカード」や、あるいは「トキトキメキメキ」と「スカウトマン」。若月佑美が選曲した「ボーダー」、橋本奈々未が披露した「生まれたままで」や「Threefold choice」、衛藤美彩がソロ歌唱した「思い出ファースト」や「アンダー」。あげていくときりがないが、グループのとしてのライブの“定石”から外れる選曲は、メンバーの卒業への感傷をこえてファンの心を動かし、記憶に残る。もちろん北野も北野なりの独特の道を歩いてきたし、筆者も思い入れをもってそこに心を寄せてきた。彼女の思いと道のりがより多くセットリストに刻まれるだろうと思うと、それは間違いなく喜ばしいことであった。

 卒業コンサート開催発表の翌日には、北野はモバイルメールを発信し、卒業コンサートが開催できることに対する感謝や楽しみな気持ちと、一方で卒業コンサート当日はやってきてほしくない、という複雑な気持ちを明るくファンに伝えた。また、ともにライブに臨む29thアンダーメンバーに対しても、自分のライブに力を貸してもらう、というような言い回しで感謝を伝えていた。アンダーメンバーやアンダーライブに対する北野なりの思いを感じるとともに、卒業コンサートにはやはり“北野日奈子の色”がどこまでも色濃く出るのだろう、とも感じる言い回しであった。

(前略)……自分が卒業するときに、「どうしてもライブがしたい。それで卒業がしたい」とお願いしたのですが、そういう感情になれたのも自分にとってライブが特別だったからです。

(『月刊バスケットボール』2023年8月号 p.99)

 

Road to ぴあアリーナMM

 ここから少し、ただの思い出語りをすることをご容赦いただきたい(すべての記事がそうだろうと言われると、言い返す言葉もないが)。

 筆者はこの時期、仕事がかなり忙しかった。コロナ禍以降で最も忙しかった月を選べと言われたら、それは間違いなく2022年2月になる。年末くらいからコントロールがきかなくなってきて、3月下旬くらいにようやく落ち着きを取り戻したくらいだっただろうか。「新内眞衣卒業セレモニー」「星野みなみ卒業セレモニー」「乃木坂46時間TV(第5弾)」あたりは、自宅で資料を繰りながら配信を見ていたような覚えもある。北野の卒業がそこまで視野に入っていなかった(一方で、グループからは卒業メンバーが相次いでいた)頃には、「北野が卒業を発表したらとりあえず1週間くらい休みをとって、千葉県内を巡るか北海道に行くかしよう」みたいなことをなんとなく思っていたのだが、検討する余地もなくそれは叶わなかったことになる。

 ここまで北野の卒業コンサートの開催発表を「2022年2月28日」として記載してきたが、厳密にいうと2022年2月27日深夜放送の「乃木坂工事中」#349内で発表され5、直後からモバイル先行の受付がスタートという流れであった。受付期間は1週間とられており、焦って応募することもないのだが、さすがにこのときは直後に応募をすませていたらしい。3月24日は木曜日であったが、会社のウェブカレンダーにも不在の予定をすでに入れておいた(当時の繁忙ぶりを思い返すと、割と蛮勇であったと思う)。北野の卒業コンサートだから、そのくらいの強い気持ちはもって臨まなければならない。

 そこまではまあ、「そういうこともあるよね」とか「そういうものだよね」という程度のエピソードだと思うものの、まさにこの2022年2月28日、時間帯は15時くらいであったと記憶しているが、筆者は会社のオフィスの何もないところで足をひねり、左足第五中足骨(小指側の側面あたり)を骨折してしまった。別に走っていたわけでもなく、なんなら激烈にひねったということでもなく、書類を1枚忘れたのでちょっと引き返そうとしたら足から聞いたことのない音がした、というような感じだった。まあ少し体重が増えていたくらいのことはあったかもしれないし、運動不足のまま30代に突入した者にとっては当然の帰結だったのかもしれないが、ただただ巡り合わせが悪いとしか表現しようがなかった。

 タクシーで病院に運ばれたあと、松葉杖でどうにか自宅までたどり着き、天を仰いだ。仕事がほぼすべて在宅勤務でどうにかなったのが一応の救いだったけれど、腫れが引くまでは足を引きずって歩くこともできず、階段もある家のなかを這いつくばって移動したり、大きなデイパックにゴミ袋を詰めて松葉杖でゴミ出しをしたりしていた最初の1週間くらいはさすがに心をやられた。卒業コンサート当日までひと月近くあるから、それまでには骨もくっついているだろうと思っていたが、当落発表の3月10日、届いたのは落選通知のメールであった。骨だけでなく心も折れた。

 翌々日の3月12日に、卒業コンサートとアンダーライブの配信決定のリリースがあった。卒業公演扱いのライブが配信されない例はほぼないといってよく6、喜びや驚きの感情は小さく、落ち着いたものだったが、配信決定のリリースは一般発売の完売直後に行われることが多い印象であり、その点は少し予想外であったとともに、卒業コンサートが目前に迫っていることを実感させられた。3月13日の「乃木坂工事中」放送内で一般発売の日程が告知され7、3月16日には29thシングル所収全曲の先行配信がスタート(「忘れないといいな」はラジオでの解禁などの形は経ておらず、ここで解禁された形となった)。3月18日には「忘れないといいな」のMVがYouTubeチャンネルで公開。ひとつひとつのメルクマールが過ぎていき、当日が近付き、少しずつだが実感も湧いてくる。ないのは現地でのチケットだけだった。

 結局、3月19日の18時に始まった一般発売で、どうにかチケットを手に入れることができた。何時間でもリロードを繰り返す構えだったが、この日の楽天チケットは落ちる様子は特になく、あれよあれよと進んでいき、18時4分には受付が完了していたらしい。全身の力が抜けるようであった。

 足のほうはというと、腫れは引いて一応歩けるようにはなっており、外に出るときに片松葉杖にするかどうか迷う程度であった。完全にへこんでいた割に、全体的になんとかなったという感じであった。卒業コンサート当日の3月24日は、午前中会社に行ったのち、午後に病院に寄ってから横浜に向かった(レントゲンを撮ったら、まだ骨はくっついていないですね、と言われたけれど)。

 

光のどけき春の日に

 その日はすごく天気が良かったことを覚えている。筆者はずっと家にいたのでよく知らなかったのだが、そこまではしばらくはっきりしない天気が続いていたらしく、前々日の「のぎおび」では、北野が「千葉は雪が降っていたよ」というようなことを話していた。でも、その日はコートがなくてもジャケットがあればどうにかなる程度の気温で、気がついたら春になっていたような、そんな感覚をもった。三寒四温を繰り返しながら、一雨ごとに暖かくなっていくような季節。そんななかで訪れた、温とい色をした空がよく晴れていた春の日は、卒業の門出にあまりにもぴったりであるように思えた。

 リピート配信が当日の1回のみで、しかも21時半スタートと妙に早かったので、前夜に馬車道のホテルを予約していた。チェックインした頃にはすっかり夕方だったが、それでも開演までは余裕があったし、グッズの類も事前に購入してあったので、会場まで歩いて向かうことにした。入場はスムーズで、卒業企画実行委員会制作のフライヤーも無事に受け取り、あっという間に席に着いた。開演前のBGMも北野自身が選曲したものだったというが8、「大人への近道」や「アナスターシャ」などに混じって「僕のこと、知ってる?」が流れていて、ベストアルバムのときのプレイリスト9とは違うんだな、と思ったことだけを覚えている。いまにして思えば、ちゃんと記憶にとどめておけばよかった。

 筆者はもちろんただの観客なのに、それでもひどく緊張していたように思う。あまり早く会場に入らなかったことは、よかったのかもしれない。気がつけば、あっという間に開演時間がやってきた。

「北野日奈子卒業コンサート」(2022年3月24日)セットリスト

※特記のないもの(ユニット曲以外)はC北野。

OVERTURE
①気づいたら片想い
②あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
③ハウス!
④ロマンスのスタート
MC(挨拶北野、回し和田)
VTR
⑤ここにいる理由
⑥嫉妬の権利
⑦別れ際、もっと好きになる
⑧不等号
⑨風船は生きている
⑩ブランコ
⑪アンダー(フル)
MC(回し理々杏)
⑫君に贈る花がない(阪口-楓-北野-璃果-金川)
⑬ゴルゴンゾーラ(向井[渡辺]-吉田[堀]-北野)
⑭大人への近道(林→北野→矢久保→理々杏)
⑮隙間(阪口-北川-和田-北野-中村-松尾-黒見)
⑯ゆっくりと咲く花(北野・山崎、落ちサビから全員)
MC(北野・山崎)
VTR
⑰バレッタ
⑱Route 246
⑲ガールズルール
⑳裸足でSummer
MC(北野)
㉑僕だけの光
㉒日常(フル)
〆(和田、北野)

アンコール
北野スピーチ
EN1忘れないといいな
EN2君は僕と会わない方がよかったのかな
MC(回し和田、北野へメッセージ:林、阪口、和田)
EN3乃木坂の詩

(ダブルアンコールで北野再登場)

 影ナレを務めたのは阪口珠美、金川紗耶、林瑠奈の3人であった。林は明らかに涙を抑えられなくなっている様子がうかがえ、感染症対策のための「大声禁止」の客席であったが、それで明らかに温度が上がったのがわかった。間もなくOVERTUREがかかり、北野の9年間の歩みがダイジェストで流される。2017年、アンダーライブ九州シリーズのカットで映った北野の様子に目が留まった。前後の時期よりはやはり少し元気がなさそうにも見えたが、あの当時のことさえもきちんと今日という日まで持ってきたのだと思うと、彼女の強さに胸をつかまれる思いがした。

 1曲目は「気づいたら片想い」だった。北野にとっては初選抜の曲で、始まりの曲である。卒業コンサートの1曲目として非常にストレートなその選曲は、この曲で初めてセンターに立った西野七瀬の卒業コンサートとも重なった。同じくこの曲で初選抜となった樋口日奈と和田まあやも、のちにこの曲を自分にとっての卒業公演において歌唱している10。切なくてエモーショナルな曲調も含めてということかもしれないが、これほどまでに始まりの曲として卒業公演を彩った楽曲というのも稀である。楽曲としては、北野の明るいパブリックイメージとはそこまで重ならないながら、それがグループのひとつの個性として“儚さ”があげられるようになっていった時期の乃木坂46に、必死に食らい付いていった日々のことを思わせた。

 2曲目は「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」。初期のアンダーライブを象徴する曲であり、「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」のセットリストでも2曲目に置かれていた。表題曲でスタートしたセットリストの2曲目にこの曲がもってこられることに、どのメンバーよりも選抜とアンダーを行き来しながら活動してきた北野の歩みが現れていた。これに続いて「ハウス!」と「ロマンスのスタート」が連ねられ、客席のボルテージは上昇していく。明るい空気に会場全体が包まれたところで、最初のMC。「みなさんこんばんは、せーの!」「乃木坂46です!」。彼女にとってこれも最後となる、ライブ冒頭での定番の挨拶。かけ声をかけたのは北野であった。

乃木坂46 2期生として2013年3月より加入した北野日奈子が卒業します。
2期生としては7thシングル「バレッタ」で突如センターとして起用された堀未央奈に次いで、8thシングル「気づいたら片想い」で選抜メンバー入りし、順風満帆なスタートを切ったかと思われましたが、その後選抜メンバーに起用となる15thシングル「裸足でSummer」までおよそ2年の間が空くことになります。
以降も選抜〜アンダーを行き来することになりますが、乃木坂46のメンバーの中で選抜メンバー、アンダーメンバー、両方を数多く経験したメンバーの一人かもしれません。選抜メンバーで磨いた表現力とアンダーメンバーで鍛えたライブパフォーマンス力、北野日奈子のラストステージを、是非お見逃し無く!

(「北野日奈子卒業コンサート」各配信プラットフォームに提供された公演情報[出典:Stagecrowd])

 

“あの頃のアンダー曲”をたどって

 北野のインタビューVTRを挟み、ライブは次のブロックに進んでいく。次に演じられたのは「ここにいる理由」、それに続いたのは「嫉妬の権利」。この2曲は、「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」の終盤のブロックでも、北野がセンターに立って披露した楽曲である。アンダー曲を連ねるブロックなのだな、と、直感的に理解した。息つく間もなく「別れ際、もっと好きになる」と「不等号」が演じられる。「嫉妬の権利」も含めた3曲は、12th-14thのアンダー曲であり、北野のアンダーフロント時代の作品である。そのすべてが、はっきりと女性を主人公として、“報われない恋”のようなモチーフを描いた歌詞。時間が流れゆくうちに、楽曲のなかにのみ閉じ込められるようになっていった“あの頃”の雰囲気が、ステージの上でひとときよみがえるようなパフォーマンスであった。

 「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」を含めたここまでのアンダー曲5曲で、井上小百合、伊藤万理華、中元日芽香、堀未央奈と、北野が初期の“長いアンダー時代”において後ろないし隣でパフォーマンスしたアンダーセンター全員の楽曲を網羅した形となった。ライブはまだ序盤で、特にワンハーフのパフォーマンスで振り返ってみると、あっという間のような印象さえもった。アンダーの3列目でモチベーションを保つのに苦しんでいたところから始まり、気持ちを高めてフロントに立ち、しかし繰り返し選抜の壁に跳ね返されていた時期。「これ以上先は私たちじゃないんだな(『BUBKA』2016年9月号 p.21)とまで思い悩んだ時期のことが、あっという間に振り返られていく。あらゆるものは始まったら終わってしまうということかもしれないが、しかしそれは、その後にも彼女がグループでたくさん積み重ねてきた時間の重みがなせることでもあっただろう。

 ステージもメンバーの表情も明るく転換し、「風船は生きている」。これに続く「ブランコ」とあわせ、すでにグループを離れた同期メンバーのセンター曲が2曲続けられたことになる。これまでのアンダーライブにおいて、北野自身も演じる機会がなかったというわけではないが、思いや経緯をふまえてあえてセットリストに加えて演じられたといってよいと思う。北野自身が参加した楽曲でいえば「三角の空き地」や「口ほどにもないKISS」、「錆びたコンパス」という選択もありえたかもしれないが、結果として2017年までの楽曲のみでこのブロックは構成されたことになる。アンダー曲のブロックであったと同時に、“あの頃の自分と、あの頃の自分から見た乃木坂46”のブロックでもあったのかもしれない。

 「ブランコ」のアウトロが終わる。シリアスな楽曲ではあるが、それを超えるほどに北野の表情には煩悶があったように見えた。北野を中心にメンバーが集まったフォーメーションが、ステージの真ん中で大きな花を開くような振り付けであの曲が始まる。「アンダー」。ゆうに1000回以上は聴いてきた、美麗で切ないあのイントロ。5年弱の記憶が堰を切ったようによみがえってくる。

 「アンダー」にはこれほどまでに執着してきた筆者であったが、正直にいうと、演じられても演じられなくてもいいかなと思っていた。北野の思いや歩みが詰まった曲だけれど、見ないと終われない、のようには思っていなかった。セットリストはおそらく、北野の思いをふまえて構成される。オリジナルメンバーはずいぶん少なくなったし、このときステージにいたのは北野と山崎怜奈、和田まあやのみ。4期生は「アンダー」を演じたことがなかったし、1年以上ライブのセットリストに加えられていない状態でもあった。処し方は北野に任せればいいし、任せるほかない。演じるにしても演じないにしても、それが北野の、グループに対する、あるいは我々に対するメッセージだ。そう思っていた。

 でも、このときにはもう、とっくにわかっていた。このブロックでメンバーが着用していたのは、「アンダー」の衣装。涙が止まらなかったあのゼビオアリーナ仙台のステージで着用していた、白地に青いラインの入った衣装に、北野は最後にこの日、身を包んでいた。来た、と思った。一秒も見逃すまいとステージに目をこらした。北野が選んだ道を、そこを駆け抜けていく彼女の姿を、最後まで目に焼き付ける。

 「みんなから私のことが/もし 見えなくても」。冒頭、オリジナルでは中元と北野のパート。この数年間はほぼ北野が背負ってきたといっていい。北野の声は震えていた。表情に緊張が走る。「頑張れ」。何年も前から何度も飲み込んできたその声が心の中で暴れた。これで最後だ。北野はまもなく、目に力のある本来の表情を取り戻していく。彼女の“人生”が、確実にそこに現れていた。「アンダー いつの日か/心を奪われるでしょう/存在に/気づいた時に…」。右腕を回す振り付けで1番が終わる。行け、行け。思わずそう念じた。「アンダー」の2番。それをいまここで北野が演じなかったら、きっと永遠に失われてしまうものがある。

 一瞬、そんな逡巡をしているうちに、2番へ向かう間奏が始まった。「アンダー」の2番が演じられるのは、2019年3月19日「衛藤美彩卒業ソロコンサート」以来。当然ながらこれは衛藤のソロ歌唱なので除くと、2018年1月6日の18thシングル全国握手会ミニライブ(インテックス大阪)以来となり、このときは北野がすでに休業に入っていたのでさらにこれを除くことにすると、2017年11月8日の東京ドーム公演2日目、オリジナルメンバー全員(それはもちろん、中元・北野のダブルセンターということである)での最後の披露のときにまで遡る。しかし、この2番こそ、演じられてくるべきもの、アンダーメンバーにとって意義深いものであるはずだった。衛藤がここを歌唱した11ことがそのひとつの証左であり、北野が長らく、楽曲の「2番」へのエンパワーメントを続けてきたことを差し引いてさえ、「アンダー」の2番の歌詞には、捨象してはならない意味があったはずだった。

 北野はもちろんそれを誰よりもわかっていたのだと思う。「太陽の方向なんて/気にしたことない/今どこにいたって/やるべきことって同じだ」。オリジナルでは2列目のメンバーの歌割りで、北野は一度もここを歌ったことがなかったはずだ。しかしこのとき、北野は初めてこの歌詞をステージにおいて歌唱したのであった(と記憶している。全編かどうかは自信がないが、北野は2番のABメロでも歌唱に加わっていたはずだ)。

 北野はこの部分の歌詞に、幾度も共感を表現してきた。九州でのアンダーライブでは「下を向いて太陽の方向がわからなくなっても」ということば選びで前に進んでいく意志を表現していたし、その後の時期、26thシングルの選抜発表や「アンダーライブ2020」について語ったときにもくり返しこのフレーズを引いてきた。「ALL MV COLLECTION 2~あの時の彼女たち~」のCMでも、北野の姿とともにこの部分の歌詞は用いられていた。「ひたむきに努力することの大切さを教えてくれた曲」。北野は「アンダー」について、「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜2期生ライブ〜」(2021年3月28日)においてそう表現したが、まさしくそれを象徴するフレーズであるように思う。

 さらに、それがこのとき北野をステージで支えたアンダーメンバーとともにパフォーマンスされたという点については、北野が歌ったという以上の意味がある。そもそもこの日ステージにいた29thアンダーメンバーの4期生にとっては初めての「アンダー」披露であったし、3期生もみなこの部分を披露したことはなかった。乃木坂46のライブにおいては、何か特別な意味がない限り、楽曲がフルサイズで披露されることはほぼない。未来を断定するような言い方は行儀がよくないが、でも九分九厘、「アンダー」の2番が演じられるのは、オリジナルのセンターである北野による最後の披露であるこのときが最後になるだろう(あるいは、次に演じられるときには、このときに匹敵するくらいに特別な意味をもつことになるだろう)。「今どこにいたって/やるべきことって同じだ」。メンバーとしてのキャリアの最終盤まで、北野は「ポジション」と、それはつまり「選抜/アンダー」というしくみと、戦い続けた。「アンダー」を後輩メンバーに受け渡すことは、ひょっとしたら100%は彼女の本意ではなかったかもしれない。しかしこのフレーズも含めて、このときのアンダーメンバー全員にフルサイズで演じさせたことには、北野にしかなし得ない意義があったのではないかと思う。

 楽曲は終盤に差しかかる。「新しい/幕が上がるよ」。2番のサビを過ぎると、駆け抜けるように終わっていく。間奏、北野のソロダンス。落ちこぼれだったあの日の北野はもうどこにもいない。センターが天に向かって手を伸ばす。無数の光がステージの16人を照らした。「まだ咲いてない花」なんてそこにはない。でも、これからもいくらでも、もっと大きな花を咲かせられる。そう改めて思った。これからも何度でも、どこでだって咲けるし、咲いた場所がどこだかなんてことに意味はないのだ。ステージに当たっていたライトがこちらを向き、9000人の「客席の誰か」を照らす。東京ドームのときと同じ演出だった。「美しいのは/ポジションじゃない」。最後までを歌い上げながら、北野は少し表情を緩めた。アウトロ。16人が、手を伸ばして頭上に輝く光をつかむ。切なさを少し含ませながら、歯を見せて微笑む北野の姿がモニターにとらえられた。それはこれまでのどの機会とも異なる複雑な表情で、そこにあったものをあえてひと言で表現するならば、筆者には「安堵」ないし「達成感」であったように見えた。彼女にとって35回目の最後の披露。北野日奈子はそれを戦いきった。

 アンダー曲のブロックが終わる。“その手でつかんだ光”が、万雷の拍手となって会場を満たした。

 

歌い継がれてほしいから

 これに続いたMCのパートには北野が不在であったが、後輩の立場から見た北野について語られるなかで、中村麗乃が「頑張り方がわからなかった時期に、日奈子さんがめちゃくちゃリハーサルとかいろんな場所で全力で頑張っている姿を見て、こうやって頑張ればいいんだっていうのを見せてくださったのが大きくて。それだけ大きな力を与えてくださった」と涙ながらに話す場面があった12前稿[4]などでもたびたび書いてきたところだが、特にアンダーにいる後輩に対して北野は固有のまなざしをもっていると感じる場面が多かったし、後輩もそんな北野の姿から感じとるものがあったのかもしれない。

 続くブロックでは、ユニット曲が連ねられることとなった。まずはサンクエトワールの「君に贈る花がない」を阪口珠美、佐藤楓、佐藤璃果、金川紗耶と披露。5人が着用していたのは「アンダーライブ全国ツアー2018〜関東シリーズ〜」冒頭の、キャメル色のコート衣装であったが、この曲の終盤で北野はこれを脱ぐと、「サヨナラの意味」の歌唱衣装となった。このときのライブ冒頭のブロックで着用していた「真夏の全国ツアー2019 世界地図衣装」とあわせ、「Time flies」のカスタムジャケットで左右のシルエットの衣装として採用した2着にこの日袖を通したことになる、というのは、前稿[3]でも触れたところである。

 続いては堀未央奈、渡辺みり愛とのユニット曲「ゴルゴンゾーラ」を披露。吉田綾乃クリスティーが堀未央奈のパート、向井葉月が渡辺みり愛のパートに入り、北野はオリジナルのパートを歌唱した。そしてまたもサンクエトワール楽曲の「大人への近道」。林瑠奈、矢久保美緒、伊藤理々杏と4人での披露であったが、ひょっとすると出演予定だったが新型コロナウイルス感染にともない欠席となった弓木奈於もここに加わる予定であったのかもしれない。「2期生好き」を公言し、堀未央奈への憧れを口にし続けていた林に冒頭の堀パートをあてがった上、その林を含めた後輩たちには「真夏の全国ツアー2017・期別ブロック2期生衣装」という、“2期生”のイメージが最も鮮烈ともいえるブルーの衣装を着用させるという采配には、あのときの“神宮”を目撃してきた身としてはしびれるものがあった。サンクエトワールの2曲は、特に「Time flies」期以降、北野が一貫して「歌い継いでほしい」と表明し続けてきた曲である。“サンクエトワール最後の星”としての、ユニットへの愛情と執念がにじむ選曲であった。

 次に歌唱されたのは「隙間」。もとは13thシングル所収のカップリング曲で、「他の星から」「僕が行かなきゃ誰が行くんだ?」を歌唱した7人13によるユニット曲である。北野のイメージはほぼない楽曲であり、あとから調べた限りだと、北野が披露したことはかつて一度もなかったようである14。好きな楽曲として最後にステージで歌いたかったのかもしれないし、あるいは「隙間を大事にして/ゆっくり生きて行きたい/一日のその意味合いを/確かめて前に進む」というような、過ごしている現在の時間をゆっくりとかみしめたい、という意味合いの歌詞が、北野の心情にマッチしたということだったのかもしれない。メンバーは阪口珠美、北川悠理、和田まあや、中村麗乃、松尾美佑、黒見明香とであった(阪口が「君に贈る花がない」と重複しているところから見ると、弓木が入る予定だったのはもしかするとこちらで、「大人への近道」はもともと4人の予定だったのかもしれない)。

 そしてこのブロックの最後となったのが「ゆっくりと咲く花」。この日のセットリストで唯一の2期生曲15を、山崎怜奈とふたりで歌唱し、終盤より全員が合流してくる形となった。これは「新内眞衣卒業セレモニー」での披露の際とも重なる形だったが、披露のたびに2期生が少なくなっていく様子は胸に刺さるものがあった。なお、「ゆっくりと咲く花」は、この日の出演メンバーには含まれておらず、最終的にグループ最後の2期生となった鈴木絢音が、「鈴木絢音卒業セレモニー」(2023年3月28日)のアンコールにおいてソロ歌唱をするという形で、オリジナルメンバーによる披露にピリオドが打たれている。北野以外のメンバーが身を包んでいたのは2015年の紅白歌合戦の際の着用衣装で、「生駒里奈卒業コンサート」や「9th YEAR BIRTHDAY LIVE〜2期生ライブ〜」など、北野にとって重要だったライブで深く印象に残っているものであった。

 ブロック後には、北野と山崎のふたりによる長めのMCパートが設けられた。「ゆっくりと咲く花」の曲中ではハグをするなどエモーショナルな場面もあったが、MCでは特に湿っぽさはなく、あっけらかんと楽しく話すふたりの様子が印象に残っている。

 

「輝いてみせる内面から」

 再度インタビューのVTRが挟まれ、北野はそこで2期生について語りつつ、堀の卒業後にも「バレッタ」がライブで演じられてほしい、という思いがあると説明した。そしてその「バレッタ」から、表題曲のブロックに移っていくことになる。

 北野のいう通り、あまりにも堀未央奈の印象が強い「バレッタ」だが、北野は「アンダーライブ サード・シーズン」においての披露の際にセンターを務めている。当時は11thシングル期で、堀は選抜の3列目、北野はアンダーの3列目にいた。2期生のまとまりでの活動はきわめて少なく、堀とは距離を感じていた頃のことであったかもしれない。それでもキャリアを通じて堀と北野は“2期生”を掲げてメンバーを引っ張り続けた。堀の卒業から約1年、北野が最後にセンターで演じた「バレッタ」は、“2期生”への思いがつくり出したハイライトシーンだったように思う。

 続いて披露されたのは「Route 246」。表題曲とカウントする向きは少ないようにも思うが、「配信シングル」という言い方もされていたことをふまえて、この曲を含めて“表題曲のブロック”と表現することとした。コロナ禍にリリースされた楽曲であり、一時は特にライブでの披露回数が少なく、「真夏の全国ツアー2021」のアンコールで披露された際などには会場がざわめく様子も見受けられた。「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」での披露も経て、その印象はいくぶん軽減されていたものの、やはりこの日も客席がざわめいていたのは、イントロの最初から迫ってくるサウンドの強さのなせる業だったかもしれない。2020年の「紅白歌合戦」では全メンバーで披露した楽曲でもあったが、北野はこの日ステージにいたなかで唯一のオリジナルメンバーでもあった。

 そして「ガールズルール」「裸足でSummer」と、“夏曲”が2曲連ねられることとなる。この位置で、表題曲のなかでも特に“夏曲”が選ばれていたことには、前後の流れも含めて意外な印象を受けたと耳にすることもあったが、「ガールズルール」は2期生が加入したタイミングの曲で、「真夏の全国ツアー2013」には2期生も参加しているし、「裸足でSummer」は何より2年ぶり2回目の選抜入りを果たした記念すべき曲である。加えてあえて勘ぐるとすれば、「インフルエンサー」や「Sing Out!」は、オリジナルのポジションで披露したのを最後にしたかったのかもしれない、とも思った16

 「裸足でSummer」の披露を終えると、北野ひとりによるMCが挟まれた。ライブもいよいよクライマックスに向かっていくのだろう、という雰囲気のなか、次の曲は「アンダーライブ九州シリーズで披露した曲」と説明される。九州シリーズでは不安定な状態が続き、なかなか笑顔になれなかったということにも改めて触れられ、そのときと同じアレンジで披露したい、ということがはっきりと説明された。あのときのそんな自分もいまは認めることができていて、そんな自分が好き。北野はそんな風に、“あの日々を乗り越えた自分自身”を言葉にして説明してくれた。ぶつかって傷ついたことよりも、それを正面から乗り越えたことよりも、そうやって言葉にしてくれることに、“乃木坂46・北野日奈子”のあり方を感じた。

 そして披露されたのが「僕だけの光」。メロディはピアノアレンジであった。九州シリーズの際の映像は現在確認できるものはなく、さすがに記憶も薄れてしまっているが、耳を傾けていると、「ああ、そうだったな」と、当時の感覚がよみがえってきた。「僕だけの光」は、九州シリーズにおいて非常に重要な1曲だった。少し回り道になるが、ここで当時のセットリストを振り返ってみたい。

「アンダーライブ全国ツアー2017〜九州シリーズ〜」(2017年10月14-20日、計7公演)セットリスト

Prologue
OVERTURE
①自由の彼方
②嫉妬の権利
③不等号
④あの日 僕は咄嗟に嘘をついた
⑤別れ際、もっと好きになる
⑥ブランコ
MC
⑦ガールズルール
⑧太陽ノック
⑨裸足でSummer
MC
⑩女は一人じゃ眠れない(優里・寺田・山崎・渡辺・和田)
⑪無表情(川後・佐々木・鈴木)
⑫太陽に口説かれて(純奈・相楽・中田・能條・樋口)
⑬隙間(かりん・ちはる)
⑭13日の金曜日
⑮狼に口笛を
MC
⑯アンダー
⑰ここにいる理由
⑱きっかけ
⑲僕が行かなきゃ誰が行くんだ?
⑳風船は生きている
㉑いつかできるから今日できる
㉒僕だけの光

アンコール
EN1 My rule
EN2 制服のマネキン(福岡公演以降)
EN3 ハウス!/ロマンスのスタート(日替わり)
EN4 夏のFree&Easy/走れ!Bicycle(日替わり)
EN5 乃木坂の詩
WEN おいでシャンプー(千秋楽のみ)

 前稿[6]でもひとしきり振り返ったところであるが、九州シリーズは重苦しい雰囲気のもとで展開された、という語られ方が多くなされている。ただ、改めてセットリスト全体を見てみると、アンダー曲のブロック→“夏曲”のブロック→ユニット曲のブロック→たたみかける“後半戦”のブロック、と、構成自体はスタンダードなものであることに気づく。「重苦しい雰囲気」はどこから感じとられていたのかといえば、体調不良の状態のなかで気力も体力も振りしぼって戦う中元と北野、そしてそれをなんとか支えていこうとするメンバーの姿がまず想起される。それは確かに、普段のライブで目にする風景ではなかった。

 もちろん演出にもハードな部分があったが、それを具体的に挙げるとすれば冒頭の「Prologue」で、歴代の各シングルで選抜に選ばれていたメンバーが前に出てスポットライトを浴びて踊るという「選抜/アンダー」の構造を意識させる演出と、「アンダー」披露前のMCの部分でメンバーが歌詞の朗読をした部分ということになるだろう。結局のところ、いずれも「アンダー」という楽曲を真正面から受け止めたことに起因するものであり、あえて強い言い方をすれば、それ以外に道はなかったのではないかとさえ思う。問われる部分があるとすれば「アンダー」という楽曲があてがわれた経緯であり、アンダーライブにはアンダー曲を核として構成するというミッションがある以上、こうなることは必然であった。あの曲を肩の力を抜いて楽に演じることも、当時多くのメンバーは望んではいなかっただろう。

 前稿まででも書いてきたことと重複してしまうが、そのなかにあって、“後半戦”のブロックの「アンダー」よりあとは、メンバーを勇気づけて、未来へ向けて背中を押すような、そんな選曲がなされているように見えるし、メンバーももちろんそのようなものとして演じていたのではなかったか、と思う。そしてその中核をなすものとして、クライマックスで歌唱されたのが「僕だけの光」であった。

 「僕だけの光」の歌詞は、最初から最後までポジティブな言葉が連ねられているわけではない。明るいメロディに乗せつつ、「なぜに自分は存在するのか?」「生きることで答えを見つけられるか?」と自問自答するところから始まる。しかし「未来照らすのは自分自身」と心に決め、光を手に入れるところで終わる。

 こうした「僕だけの光」は、「光」ないし「影」をキーワードとして自らのあり方を問うという意味で、「アンダー」と対になる部分がある、と、筆者は当時から感じてきた。当時書いていた記事「アンダーライブ全国ツアー 九州シリーズによせて(4)」の一部を以下に再掲したい。

–(再掲ここから)–

 もうひとつ触れておかなければならないように思うのは、セットリストでは本編最後の曲だった「僕だけの光」である。15thシングルの、選抜メンバーによるカップリング曲。そこだけを見れば意外なチョイスであり、初演の際に客席のどこかから「えっ?」という声が漏れたこともよく覚えている。
 しかし「アンダー」の歌詞と、ある意味で対になっている部分があると考えると、筆者にはとてもしっくりくる。

「太陽の方向なんて 気にしたことない」
「太陽が霞むくらい 輝いてみせる内面から」

「影は可能性 悩んだ日々もあったけど
 この場所を 誇りに思う」
「君だけの光 きっとあるよ
 忘れてる場所を思い出して」

「影は待っている これから射す光を…」
「今 やっと光 手に入れたよ」

 18人全員にそれぞれ違う光があって、とMCで樋口日奈が語っていたように、ステージ上でのポジションは様々あれど、長く活動を続けてきた中で手に入れた、それぞれの個性があり、役割がある(そこには多く立ってきたポジションや、あるいはより前のポジションを求める姿勢も含まれるけれども)。
 「美しいのはポジションじゃない」という歌詞を、筆者はそう受け取っている。

–(再掲ここまで)–

 筆者が九州シリーズのステージで北野を見たのは千秋楽の宮崎市民文化ホール公演のみであったが、そのとき「僕だけの光」を披露する北野は心身の状況もあってかいくぶん苦しげな様子で、前向きに“自分だけの光”を歌っていた、と言い切れる状況ではなかったように思う。だからこそこの卒業コンサートで、最後に歌いたかった、歌わなければならなかったのだと思う。“乃木坂人生”に忘れ物を残さない。そんな思いが表れた1曲だったといえるのではないだろうか。

 全員で「僕だけの光」を歌い上げて、いよいよ最後の1曲。駅から列車が発車するのになぞらえた演出があり、暗転。長めのダンストラックがあった。客席はすでに真っ青に染まっている。このブロック、メンバーが身を包んでいたのは「真夏の全国ツアー2019」での「日常」披露時に着用されたブルーの衣装。しかしダンストラックを経て再びステージに姿を現した北野は、「日常」のオリジナル歌唱衣装に着替えていた。現在までつながってきた、“強い北野日奈子”の原点ともいえる姿。ずっとこの曲のセンターとして戦い続けてきたからこそ、この日の北野があった。

 3年ぶりのフルサイズでの披露、何もかもをぶつけ尽くすかのような激しいパフォーマンス。過去最高に鋭い眼光でパフォーマンスを終えたあとは、息を切らしながらもさわやかな笑顔でライブ本編を締めた。すべてを出し切った、そんな表現がしっくりくるような、北野らしい終わり方だった。

 

「もらったもので、出来上がりました」

 9000人の客席からアンコールがかかる。手拍子のみによるアンコールであったが、それにしてもかなりの熱がこもっているように感じた。卒業公演のアンコールは、ある意味様式美のようなものでもある。北野は最後に何を語るのだろうか、そこに興味と少しの緊張感を向けつつも、いくぶんかの落ち着きとともに北野の登場を待った。

 ややあって、黒いドレスに身を包んだ北野がステージに戻ってきた。多少緊張しているようには見えたが、笑顔であった。ドレスには愛犬・チップの姿が刺繍で大きくあしらわれているとのちに説明され、“乃木坂46・北野日奈子”は最後までずっと、チップとともに駆け抜けていったことが改めて印象づけられた。北野のスピーチが始まる17

 スピーチ全体としては、北野は「手紙とは違うんですけど」と断りつつ、伝えそびれることのないように「きちっと届けたい」という思いから、手元の便箋を読み上げるような形で展開されたが、それを開く前に少し、北野の口から語られたことがあった。「こんな時でも、みんなとずっと一緒にいたい、もっとここにいたい、離れたくないなと思ってしまいます」。卒業を公表してから繰り返し語られていたようなトーンのことが、そう改めて述べられた上で、“大切な友達”の言葉が紹介され、それに乗せて北野の思いが語られた。

「私の大切な友達が、『乃木坂46にずっと片思いをしていた』と言っていたことがありました。その言葉を借りて、私も言いたいことがあります。好きな気持ちが募るばかりで、大好きで、大好きで、大切で仕方なくて。自分はどうしたらそんな大好きなものの一部になれるか、ずっと考えて、考えて、考えて、過ごしていました。
 思いが募るばかりで、その思いが届かなくて、希望に敗れて、大好きな気持ちが分からなくなってしまう日もありましたが、こうやって最後の時まで、どうしたってすごく大好きなんだなと、このグループのことが本当に大切で、大好きでたまらないんだなと思います。」

(2022年3月24日「北野日奈子卒業コンサート」北野アンコールスピーチ)

気がついたら
私はアイドルという職業に惚れてました。

仕事が恋人とはこのことで
勉強する時間も、寝る時間さえも惜しいと
思ったほどでした。

なんでこんなに夢中だったか
最後にお話ししても良いですか。

綺麗な衣装が着られて楽しい、
お写真撮られるのが楽しい、
ステージに立つのが楽しい、全部本当です。

でもそれ以上に

私はここにいていいんだって
認めてもらいたかった、
その一心で走ってきたような気がします。

この世界にいると、
私を必要としてくれる人が沢山いる。
私だけを見てくれている人が沢山いる。

それが嬉しくて今日まで続けてきました。

 

(中元日芽香公式ブログ 2017年12月22日)

 それを最初に語った上で、各方面への感謝の思いが語られる。スタッフ、メンバー、家族、ファンと順繰りで述べられる「ありがとうございました」は、言ってしまえばある意味定番なのだが、でもそれは、すべてが斜に構える必要のない真実だからなのだろう。そのなかでやはり、家族についてのエピソードが厚くて、それが北野らしいな、と思った。「選抜に選ばれなかった時は、毎回、朝まで泣いてる私の話を聞いてくれたよね。一緒に泣いてくれるから、心が軽くなっていました」。ああそうか、こんなに長く“乃木坂46・北野日奈子”の姿を見られたのは、彼女の家族がずっと支えてくれていたからなんだな、と、しみじみと思った。

 ファンへの言葉も、いかにも北野らしいトーンであった。いつからか自分のことを「応援しにくいと思う」とよくいうようになった彼女。もっとずっと、目に見える結果をもって期待に応えたいと、まっすぐで負けず嫌いな気持ちを消さずに持っていたのだと思う。

「それから、傷つくことも恐れず、私と一緒に9年間歩んでくださったファンの皆様。自分がアイドルになるとも思っていなかったし、自分のことをこんなにも大切に思ってくれる人の存在が、こんなにもできるとは思ってもいませんでした。
 私の力が足りなくて、皆さんの期待や思いに応えられない日々もたくさんありましたが、いつでも背中を押してくれて、『きいちゃんなら大丈夫、大好きだよ』って言ってくださるその言葉が、本当に励みになっていました。」

(2022年3月24日「北野日奈子卒業コンサート」北野アンコールスピーチ)

 筆者自身は、長い文章を書く手癖があるくらいで、そこまで強烈に北野のことをサポートしてきたファンではないという自覚がある。でも、それを少し置いておいて語るとすれば、確かに傷つくことは恐れずに北野のことは応援してきたと思うけど、それは結局のところ、はっきりと傷つくようなことがなかったからだとも思う。選抜発表の放送があった日の夜とか、大分空港で佐伯市行きのバスを待ちながら北野の休演発表を見たときとか、思わず天を仰いだタイミングは確かにあったけれど、北野が耐えてきたものと比べたら全然だし、そもそもそれは言わない約束じゃないか。そんなふうに思う部分がないでもないけれど、でもあえてそうやって公の場で口に出してくれることで、こちらが救われている面はあるのだろうし、それが北野の人間としての魅力だな、と思う。

 「本当にいつもいつももらってばかりで、私の立場が、本当は皆さんに与えるべきなのに、本当に皆さんにもらってばかりです。もらったもので、出来上がりました」。積み重ねてきたキャリアをそのようにまとめた北野。卒業後のキャリアについては、最終活動日までもう少しあるなかで、事務所を移ることになっているからか、かなり抑制的な形ではあったが、「私は未来に向かって歩き出していくので、そんな姿を皆さんに応援してもらえたら」「またどこかで私の言葉が皆さんに届けばいいな」と述べて、よい方向に含みをもたせていた印象があった。

 

“だって 今も好きなんだ”

 「本当に9年間ありがとうございました」とスピーチを締めて、ソロ曲「忘れないといいな」の歌唱に移る。「自分自身のことを歌っているようで、本当にすてきな歌を最後にいただけたこと、本当に幸せに思います。最初で最後のソロ曲です。聴いてください。『忘れないといいな』」。北野のその曲振りで、スローテンポのイントロがかかった。

 楽曲そのものについては、前稿[5]でもいくぶんか述べたところでもあるが、紆余曲折のあったグループでの日々をストレートに歌ったような部分も多く、卒業コンサートの場で本人の歌唱で聴くと改めて胸に刺さるものもあった。しかし一方で、涙がこみ上げてくるような場面は北野にはなく、のびやかに歌いきっていて、ああこんな綺麗な声で歌うんだな、とまたしても思った。

 少し話がそれるが、公式の提供写真にドレスに身を包んだ北野が感情がこみあげている様子の絵柄があり(参考)、それを印象的に使っていたメディアもあったように記憶しているが、現地とリピート配信で2回見た感覚だと、全体としてはそんな雰囲気はなく北野はおおむね終始笑顔で、確かにそういうシーンもあるにはあったのだろうが、どのあたりを切り取った写真なのかよくわからなかった、ということをここに記しておきたい(筆者の目も記憶もぜんぜんあてにならないのだが、しかし当時からそのように感じていたことは確かだ)。

(前略)……あとはやっぱり自分のソロ曲である『忘れないといいな』も好きですね。繊細で儚い歌詞ですが、卒コンでは笑顔で歌い切ることができ、歌詞は私の乃木坂人生を物語っていて、辛いことや苦しいこともありましたがここまで頑張ってきて良かったと思えました。秋元(康)さんは本当によく見てくれているなと思います。私の人生を物語っているものなので、すごく特別ですね、ソロ曲を頂けたのは。

(『月刊バスケットボール』2023年8月号 p.99)

 穏やかな表情で歌唱が終えられ、アウトロが流れていく。9年間の“乃木坂人生”の最後に訪れた記念碑的なステージ。願わくば、北野日奈子の人生全体にとっての記念碑として、永遠にあり続けてくれたらと思う。

 別れのステージはまだ続いていく。ここでひとつ、どこに対してなのかはわからないが、筆者は懺悔をしなくてはならない。ファンの性とでもいおうか、アウトロを聴きながら次の曲は何だろうかと予想をしていた。そして、たぶん「サヨナラの意味」だろうな、と思って身構えていたのである。筆者としては好きな曲ではあるし、この記事も出したばかりだった。白石麻衣、松村沙友理、高山一実、新内眞衣も最後に演じていて定番のようになっていて、北野としてもオリジナルメンバーで、思い入れもあるだろうな、といったことを考えていた。

 「君は僕と会わない方がよかったのかな/なんて思う」。北野の歌唱から楽曲が始まった。うわあ、と少し頭を振って、不明を恥じた。何年も長々と文章を書いてきて、ずっとファンをやって心を寄せてきたつもりでいて、結局北野のことを何もわかっていなかったというか、見くびっていたというかである。ともかくその一発でやられてしまった。アンダーブロックで「君は僕と会わない方がよかったのかな」が演じられなかったことは心に留めてあったけど、「不等号」や「嫉妬の権利」は演じられていたし、そこは最後の余白となるのかもしれない、と思っていた(文章にする機会があれば、「最後の余白」と表現しよう、とぼんやり考えてもいた)。スピーチのなかで「大切な友達」だなんて言われたら、それが誰のことかなんてすぐに察しもついていた。でも、ここにもってくるとは思っていなかった。北野日奈子はどこまでいっても無限に北野日奈子で、それは当たり前のことなのだけど、その事実に改めて驚いてしまった。

 「君は僕と会わない方がよかったのかな」は、11thシングル所収のアンダー曲で、センターは中元日芽香。次のシングルからはアンダーフロントに並び立ち、アンダーライブの最前線で約1年間戦い抜くことになる北野と中元だが、このときの北野のポジションは3列目。同い年だが先輩後輩の関係で、そこまで距離は近くなかったともいう。しかしこのシングル期間に演じられた舞台「じょしらく」の期間を経てふたりの距離は縮まり、絆を育んでいくことになる。中元が最後に立った東京ドームのステージ、切なくも明るいメロディに包まれてピンク一色のサイリウムで染まる客席の景色を、センターに立った「アンダーライブ2020」を経てもう一度、北野はステージの上に再現する。ステージの照明はピンク一色で、しかしそれを見守る客席は、北野のサイリウムカラーであるピンクと黄緑で揃っていた。そこにあったのは、北野がずっと抱きかかえて走り続けてきた、彼女にしか守り抜けなかった色の光であった。

 

最後のステージ、その最後に

 「君は僕と会わない方がよかったのかな」の歌唱を終えると、メンバー揃ってのMCのパートがあった。阪口珠美からは「アンダーメンバーも今この場所で自信を持って頑張れば良いんだって思えるようになったのは日奈子ちゃんのおかげ」、林瑠奈からは「もしいらっしゃらなかったら私もここにいなかった」とメッセージが送られる18。「ずっとみんなの味方だから、なにかあったらいつでも連絡してね。日奈子、全部やっつける担当だから」と笑う北野に19、和田まあやが「きいちゃんのお母さん、きいちゃんは強がりなんです、これから守ってあげてください」と、わからないようなわかるようなことを客席に呼びかけて、会場が笑いに包まれるひと幕もあった。そんな和田が「きいちゃんは乃木坂の円陣の掛け声『努力・感謝・笑顔』を全部持っている」と評した北野が最後の1曲として演じたのは「乃木坂の詩」。卒業公演の最後の1曲として選ばれるには逆に珍しい、あまりにもストレートな選曲だった。

 「乃木坂の詩」の歌唱を終えて、最後の挨拶。「ありがとうございました!」と長く頭を下げている間に、客席一面から「ありがおー」と、チップのイラストがあしらわれたフライヤーが掲げられる。顔を上げた北野は、そのお決まりの“サプライズ”に対して、感動というよりは喜んでいて、でも少しだけ照れくさくて居心地が悪そうにも見えた20。感謝の言葉を客席に投げかけながら、笑顔とともに、少し切なげな表情を浮かべる。その愛くるしい複雑さに、“アイドル”と“人間”のあわいを見たように思う。

 最後のステージを去った北野へ、ダブルアンコールの手拍子が鳴り響く。この日以降は再び雰囲気が変わっていった感じもあったのだが、コロナ禍で配信ライブが始まってからその日までは、ダブルアンコールがかかることはなくなっていたのではないかと思う。すぐに会場を出ていった観客が駆け足で次々と戻ってくるくらい、大きな手拍子が鳴り響いていた。サイリウムカラーの照明に染まったステージに、北野がもう一度姿を現す。永遠にまとまりきらないような感謝の思いを、笑顔で客席に伝えた。その目に涙は、ずっとない。笑顔でそのステージにひとりで立っていたことこそが、“乃木坂人生”を駆け抜けた北野が受けた、最後にして最大の勲章であった。

 


 

 ようやくここまでたどり着くことができた、というのが正直な感想である。本シリーズのすべての文章のなかで、卒業コンサート直後の記憶が鮮明なうちに書いていた、本稿の一部(「アンダー」の前後とユニット曲のブロック、およびアンコールの一部分)が、最も早く文章となっていた部分だ。規制退場を終えて会場を出てすぐにタクシーをつかまえてまでリピート配信を視聴して、それで満足だったともじゅうぶんだったとも思えないし、自分のなかにあるものをうまく書き表せたとも思えないが、これが筆者が見届けてきたもののすべてだ。いまはそう称するほかない。

 しかし今回、当時のメディアの記事や配信された写真、あるいは九州シリーズをはじめとする過去のライブと照らし合わせながら改めて振り返ることで、改めて気づいたことや、初めてわかったようなこともたくさんあった。1年と3ヶ月を経ていまさら何をやっているのだろう、という思いがないではないが(この間も前に進んでいく北野のことを見てきたつもりでもあるから、なおさら)、でもやっぱり、書いてよかったのだと思う。

 次稿は完結編ではないものの、シリーズとしてはひとつの区切りとなる。卒業コンサートを終えた北野の最終活動日までの少しの日々をなぞりつつ、彼女が「大切な友達」と呼んだ、中元日芽香との歩みを改めて振り返っていくことにしたい。

 

 

 

 

 

 

 

  1. ただし、この動きは同じく「口ほどにもないKISS」のフロントメンバーであった鈴木絢音も同じであった。
  2. 2022年2月22日より、モバイルメール(「乃木坂46 Mail」)と並行する形で「乃木坂46メッセージ」のサービスが始まっているが、発信の内容としては(動画や音声の有無などの差はあれど)重なるものであるので、以降も本稿では「モバイルメール」表記を継続することとする。また、モバイルメールの内容について記事で言及することについてはいくぶん迷いがあるものの、直接引用することは避ける、という形で、筆者としては従前より折り合っているつもりである旨、ついでのような形になってしまうが、ここで改めて言及させていただく。
  3. 単独の公演ではない状況で「卒業コンサート」「卒業セレモニー」という表現が用いられた例は少ないが、「真夏の全国ツアー2021」マリンメッセ福岡公演2日目(2021年8月22日)のアンコールについては「大園桃子卒業セレモニー」の表現が告知に用いられている(ただしこのときは、グループ結成10周年の記念日であった1日目の公演において「乃木坂46結成10周年記念セレモニー」が行われており、これとをふまえた表現であるとも考えられる[参考]。ツアーの開催発表時には、これらのセレモニーについては告知されておらず、7月18日の配信決定告知に含まれた形であった)。ほか「真夏の全国ツアー2019」千秋楽公演(2019年9月1日)や、「真夏の全国ツアー2021 FINAL!」(2021年11月20-21日)2日目のアンコールなどについて、それぞれ「桜井玲香の卒業コンサート」や「高山一実の卒業セレモニー」という言い方がされることもあった印象だが、公演名に含まれていたわけではなく、少なくとも公式な名称として用いられたわけではなかったはずである。
  4. 「全メンバー対象」というのは、スケジュールや体調の都合で休演となったメンバーはカウントしない、ということを含意する。ただし厳密には、「5th YEAR BIRTHDAY LIVE」のDAY1として行われた橋本奈々未の卒業コンサート(2017年2月20日)は、当時すでにグループに加入して活動を開始していた3期生は出演していないが、グループ全体のライブへの出演はまだ(翌日のDAY2が最初)であったことから、ここでは除くことにする。さらに厳密にいえば、「若月佑美卒業セレモニー」(2018年12月4日)は、4期生11人の加入直後である(翌日が「4期生お見立て会」。当然ながら、「若月佑美卒業セレモニー」への4期生の出演はなし)。また、「衛藤美彩卒業ソロコンサート」(2019年3月19日)はその名の通り衛藤のソロ公演の扱いであったが、アンコールで他メンバーも登場している(ただし、すでに活動を開始していた2018年加入の4期生11人の出演はなし)。堀未央奈の最後のライブであった「9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜2期生ライブ〜」(2021年3月28日)については、「卒業」と冠された形での公演ではなかったものの、実質的に堀の卒業コンサートに近い内容であったが(2期生ライブとして構成されつつも、アンコールでは堀によるスピーチや“卒業ソロ曲”の披露などが行われた)、このときも全メンバー(欠席のメンバーもいたが)がアンコールで登場している。
  5. 本ブログでは、0時をこえて日付が変わってからの放送となる番組の放送日時については、変わる前の日付で表記することを原則としている(Wikipediaなどとはポリシーが異なるが、「乃木坂工事中」は日曜日、「乃木坂46のオールナイトニッポン」は水曜日、というのが一般的な理解だろう)。
  6. その端緒は「生駒里奈卒業コンサート」と「若月佑美卒業セレモニー」の映画館でのライブビューイングで、西野七瀬の卒業コンサートとして開催された「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」DAY4は映画館でのライブビューイングと翌日の「ディレイ・ビューイング」、「新体感ライブ」での生配信と後日のリピート配信と、空前絶後といってよい規模で配信が行われた。「衛藤美彩卒業ソロコンサート」や、伊藤かりんの最後のライブで、斉藤優里も卒業のタイミングであった「23rdシングル『Sing Out!』発売記念ライブ〜アンダーライブ〜」(優里は翌々日の選抜ライブが最後のライブ)も、dtvチャンネルで配信されていたし、桜井玲香の最後のライブであった「真夏の全国ツアー2019」千秋楽公演もライブビューイングが行われている。そこからはコロナ禍以降の体制となるため配信ライブが一般的になるが、特に卒業公演はほぼ必ず配信が行われており、例外は「さ〜ゆ〜Ready? さゆりんご軍団ライブ/松村沙友理卒業コンサート」の1日目に配信がなかったくらいだっただろうか(のちにBlu-rayとしてリリースされ、映像化は一応された形ともなっている)。ペイパービュー形式でのライブの配信が一般的でなかった時期には例外といえるものもみられるものの、現在ではすでに、卒業公演と千秋楽公演は配信で見られることが当たり前になっているといってよい。
  7. ただし、放送内で告知された「12時開始」は誤りで、実際には18時開始である。3月18日には、正しい開始時間で公式サイトのニュースが出されている。
  8. 2022年4月20日の「猫舌SHOWROOM」にて北野が発言。
  9. 日奈子は味方だ!一緒に頑張ろうね。プレイリスト」。2022年2月7・8日の『希望の方角』発売記念SHOWROOMでは、BGMとして用いられていた。
  10. 和田は「30thSGアンダーライブ」千秋楽公演(2022年10月5日)のアンコールにおいて、樋口は「樋口日奈卒業セレモニー」(2022年10月31日)において、それぞれセンターに立って披露している。なお、樋口は卒業セレモニーの日が最終活動日であったが、和田はその卒業セレモニーに途中から出演しており(「気づいたら片想い」には参加していない)、「30thSGアンダーライブ」が最後のライブであった、という形ではない。
  11. 「衛藤美彩卒業ソロコンサート」はほぼワンハーフの歌唱で展開されていたが、本編ラストの1曲前の「アンダー」は、あえて(と称してよいと思う)フルで披露されていた。
  12. 日刊スポーツ「乃木坂2期生の北野日奈子が卒コンで涙「思い残すことはないです」9年間の集大成パフォーマンス」(2022年3月25日)
  13. 伊藤万理華、井上小百合、斉藤優里、桜井玲香、中田花奈、西野七瀬、若月佑美。
  14. それまでにオリジナルメンバー(をベースとしたメンバー)以外で披露されたのは、「アンダーライブ全国ツアー2016〜永島聖羅卒業コンサート〜」でオリジナルメンバーの中田花奈・斉藤優里に加えて永島聖羅と川村真洋が歌唱した例と、「アンダーライブ全国ツアー2017〜九州シリーズ〜」で、いわゆる“お歌のコーナー”で斎藤ちはると伊藤かりんが歌唱した例、そして「真夏の全国ツアー2019」の一部公演で、「秋元真夏が“隙間”に挟まっている」というひとネタとしてメドレーのなかで披露された例のみであった。
  15. これ以外の2期生曲のうち「アナスターシャ」については、本編終了時のチェイサーとして用いられていた。
  16. 北野がライブで披露した最後の「インフルエンサー」は、「新内眞衣卒業セレモニー」のコーナーでの“余興”を除くと、「生田絵梨花卒業コンサート」であったことになる。選抜から外れていた期間の一部のライブや休業期間、アンダーライブなどでちょくちょく例外はあるものの、「インフルエンサー」についてはおおむね、北野は3列目下手寄りのオリジナルのポジションに入る形が維持されており、それはかなりの数のオリジナルメンバーが卒業しても最後まで変わることはなかった。「Sing Out!」については、直前の「乃木坂46時間TV(第5弾)」における「46時間TVスペシャルライブ」での披露に、「最後の『Sing Out!』」との思いで臨んでいたようだ、というのは前述の通りである。
  17. 以下、日刊スポーツの記事「北野日奈子が卒コンで感謝伝える「来世もみんなで乃木坂46をやろうね」スピーチ全文」(2022年3月25日)を参考にしながら記載する。
  18. モデルプレス「乃木坂46北野日奈子、“大切な友達”中元日芽香の言葉で語った本音 阪口珠美&林瑠奈から涙のメッセージも<全文>」(2022年3月25日)
  19. 日刊スポーツ「乃木坂2期生の北野日奈子が卒コンで涙「思い残すことはないです」9年間の集大成パフォーマンス」(2022年3月25日)
  20. 個人的にはサプライズをされるのも、相手にしてあげるのも得意じゃなくて、自分が仕掛けられる立場だと心の準備ができていないから素直に喜べないし、友達にサプライズをしようと思っても考えるだけでいっぱいいっぱいになっちゃうから(笑)。」(『Zipper 2018 WINTER』p.47 )

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