「制服のマネキン」、「再構築」に思う

新たな「制服のマネキン」

 「制服のマネキン」が乃木坂46の代表曲のひとつである、ということを否定するファンはほとんどいないだろう。生駒里奈をセンターに据えた4枚目のシングルであり、前作までの曲調から大きく変化がつけられ、ある意味乃木坂46というグループを新たに方向付けることにもなった曲。
 2012年のリリース以来、幾度かの振り付けの変更を経てきた曲でもあるが、2018年7月6日~8日に開催された「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」では、ほぼ全編にわたって再度振り付けに変更が加えられ、「再構築」がなされた。
 本稿ではこの「再構築」をきっかけとして、これに着目しつつ、「制服のマネキン」を軸として坂道シリーズの軌跡をたどってみようとするものである。

 

「生駒里奈の曲」として

 「制服のマネキン」は、生駒里奈がセンターを務めてきた表題曲6作のなかでも特に、彼女自身のイメージが強くついた曲といえるだろう。短髪の少女がセンターに立つMVはいかにも印象深く、「乃木坂46の顔」としての生駒里奈を物語る作品であった。
 同じく生駒里奈がセンターを務め、グループの代表曲といわれる「君の名は希望」とは、その点で対照的でもある。「君の名は希望」は「乃木坂46全体の曲」というイメージが強い。「センター」を置いたダンスパフォーマンスよりも、合唱のような形で披露されることが多かったこともあるし、生田絵梨花のピアノの印象の強さや、グループとして初めて紅白歌合戦に出た曲だということもあるだろう。
 生駒里奈がセンターを務めた他の曲に目を向けてみても、「ぐるぐるカーテン」はデビュー曲として特別な形で取り上げられることがほとんどで、「おいでシャンプー」は近年はアンコールで用いられることが多く、また中田花奈のイメージも強い。「走れ!Bicycle」は自転車を使う演出などで飛び道具的に使われた印象も強く、「太陽ノック」は「夏曲」のひとつとして、ライブ中での役割や季節性が明確であり、「神宮」のイメージも強くある。

 誤解を恐れずにいうならば、「制服のマネキン」には、筆者の中ではこれらのような特別なイメージはない。代表曲であり、ライブでも定番の曲として、おおむねセーラー服の歌衣装と、時折の特殊効果の演出をともなって披露されてきた。
 そしてそのセンターには、いつも生駒里奈がいた。
たぶん私が死ぬまで、私の代名詞になるでしょう。そう、言わせてください。
 自らの卒業コンサートでもそう語った生駒自身が自任するように、「制服のマネキン」はずっと、生駒里奈を物語る曲としてあり続けたのである。

 

後輩へのバトン

 一方で「制服のマネキン」は、後輩グループとのつながりが深い曲でもある。
 いまや欅坂46の不動のセンターとして、押しも押されもせぬ存在になった平手友梨奈は、生駒里奈との対談において(『AKB48Group新聞』2016年7月号)、「制服のマネキン」のMVを目にしたことがアイドルに興味をもつようになったきっかけであると語っている。

 欅坂46とのつながりは平手のエピソードだけにとどまらない。デビュー曲ができる前の欅坂46は、パフォーマンスの機会において「制服のマネキン」を披露する機会が多かった。初めての音楽番組への出演となった2015年12月16日のFNS歌謡祭(第2夜)では乃木坂46・AKB48とのコラボで「制服のマネキン」を披露。初のライブ出演となった2016年1月30日の「ALL LIVE NIPPON VOL.4」オープニングアクトでも、グループ全体での披露曲には「制服のマネキン」が選ばれた。
 エピソードはさらに続く。欅坂46(漢字欅)の初出演から1年後、2016年12月14日のFNS歌謡祭(第2夜)では「乃木坂46・欅坂46の新メンバー」として、乃木坂46の3期生とけやき坂46(ひらがなけやき、当時は長濱ねるを含む1期生12人)が呼び込まれ、乃木坂46(選抜メンバー)と漢字欅を含めたコラボの形で、またしても「制服のマネキン」が披露された。

 さらにFNS歌謡祭では、2015年・2016年とも、後輩メンバーを画面に呼び込む役割を生駒里奈が担っている。表だってグループどうしでコラボという形がとられることが多くないなかで、「制服のマネキン」は数少ない、坂道シリーズ間でのつながりを感じさせる曲であったし、その場所にもやはり、生駒里奈がいたのである。

 

ひらがな武道館、生駒へのはなむけ

 生駒里奈とひらがなけやきのつながりとして、もうひとつ述べなければならないことがある。
 2018年1月30日~2月1日の3DAYSで行われた、ひらがなけやきの日本武道館公演だ。この公演では3日間にわたり、加入したばかりのひらがなけやき2期生のコーナーが設けられ、日替わりで乃木坂46の楽曲が披露された。初日は「おいでシャンプー」、2日目は「君の名は希望」、そして3日目が「制服のマネキン」であった。
 また一方で、公演2日目にあたる1月31日は、朝の日刊スポーツで生駒里奈が電撃的に卒業を発表するという、坂道シリーズとしても大きな出来事が起こっていた。

 いちファンにすぎない筆者の空想だが、ひらがなけやき2期生が披露した3曲は、生駒里奈へのはなむけとしてセットリストに加えられたものだと思っている。
 筆者は公演初日と2日目に参戦した。初日の興奮冷めやらぬなかに卒業発表の報に接し、混乱したまま2日目の客席についたことをよく覚えている。「君の名は希望」のイントロが流れたときは驚いた。そして、これは生駒里奈へのはなむけだ、と確信したのである。客席のペンライトは緑が半分、紫が半分に自然と変わっていて、それは生駒里奈が先頭に立って切り拓いてきた坂道シリーズの現在地そのものであった。

 そして3日目に披露されたのが、「制服のマネキン」。
 前述のように、漢字欅もひらがなけやき1期生も披露してきた曲であることは、2期生にも十分に伝わっていたようで、何名かのメンバーがブログでも言及していた。
 なかでも、小坂菜緒の「『制服のマネキン』は、坂道グループが絶対に通る大切な曲です。」という言葉が、筆者は特に印象に残っている。
 「絶対に通る大切な曲」。これをある意味「自分の曲」として守り抜いてきたのが、生駒里奈だったのだ。

 

「代名詞」の「再構築」

 そして4月22日、同じ日本武道館で開催されたのが、生駒里奈卒業コンサートであった。
 ライブ本編最後の曲であった「制服のマネキン」について、「たぶん私が死ぬまで、私の代名詞になるでしょう。そう、言わせてください。」と生駒がコメントしたのは前述の通りである。
 本編最後ということはつまり、歌衣装でパフォーマンスする最後の曲ということでもある。その曲に「制服のマネキン」が選ばれたことは、ある意味当然のことだったかもしれない。

 その曲が、直後の全体ライブにあたる「6th YEAR BIRTHDAY LIVE」において「再構築」されて披露されたことの意味はとても大きいと考えているし、これもまたある意味当然のことだったかもしれない。
 生駒里奈が守り抜いてきた「制服のマネキン」はもうそこには存在し得ない。しかし代表曲として、あるいは表題曲のひとつとして、「制服のマネキン」は披露され続けなければならない。だからこその「再構築」である。
 変に取り繕うことなく、「いまの乃木坂46」がもつ新たな形で「制服のマネキン」を披露する。これも、卒業生として羽ばたき始めた生駒里奈への、大きなはなむけのひとつだったのかもしれない。

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