追い続けてきて、書き続けてきて
「アンダー」について最初に文章を書いてから、1年半以上の時間が経った。これまでに計7本の記事を書き、文字数の合計は27000字を超えた。それだけいろいろなことがあった曲だし、いろいろな気持ちになった曲だった。
真夏の全国ツアー2017、アンダーライブ九州シリーズ、東京ドーム公演、6th YEAR BIRTHDAY LIVE、真夏の全国ツアー2018、アンダーライブ関東シリーズ。ひとつひとつのライブが、「アンダー」という曲にストーリーを増し加えていった。
そして迎えた2019年も、「アンダー」は数々のライブで、それぞれ違うシチュエーションで演じられてきた。本稿ではそれらのライブについて触れることで、もう少し「アンダー」について追いかけてみることにしたい。
7thBDL、「全曲披露」のもとで
2019年2月21~24日、乃木坂46「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」が開催された。史上初の4DAYS構成のライブとなった今回のバースデーライブは、2年ぶりに「全曲披露」が復活し、当時までにリリースされていた全177曲が4日間をかけて演じられた。
全曲披露であるからには、当然「アンダー」もそこに含まれる。3日目の19曲目。リリース順を基本として披露されたセットリストのなかで、それが「アンダー」の曲順であった。
今回の「7th YEAR BIRTHDAY LIVE」では、卒業メンバーのポジションが3期生を中心として埋められることが多く、特にユニット曲などではその歌唱メンバーが注目されることとなった。そのなかにあって「アンダー」では、卒業メンバーのポジションが埋められることはなく、オリジナルの18thアンダーメンバー12人での披露となった。川後陽菜、川村真洋、斎藤ちはる、相楽伊織、中元日芽香、能條愛未の6人を欠いて再編成されたフォーメーション。センターポジションにはひとり、北野日奈子が立った。
筆者は素直に嬉しかった。「真夏の全国ツアー2018」では3期生を加えた形で披露されてもいたが、「乃木坂46の歴史を振り返る」というバースデーライブのコンセプトに鑑みれば、ここで「アンダー」を披露するのは18thアンダーメンバーしかないと思ったからである。
曲の始まりとともに、誰もいないメインステージにひとり歩いて登場した北野日奈子。曲の終わりでは確かに微笑んでみせた。18thシングル期間とアンダーライブ九州シリーズにおける苦闘の日々。それを思い起こさせつつも、「歴史」に閉じ込めた。そんな印象を与えるパフォーマンスであった。
衛藤美彩卒業ソロコンサート
続いて2019年3月19日に開催されたのが、衛藤美彩卒業ソロコンサートである。乃木坂46メンバーとして初となるソロコンサート、本人が選曲したというセットリスト。ライブ本編17曲のうち、クライマックスの16曲目で披露されたのが「アンダー」であった。
衛藤美彩は「アンダー」オリジナルの歌唱メンバーではない。衛藤はこの選曲に至る背景について、自らのアンダー時代のことをMCで少しだけ声を詰まらせながら語った。
選抜、アンダーと立ち位置がつけられてしまうということは、苦しいことでもあるけど、ポジションがすべてじゃない。いま私がいる場所が自分の位置だと思っていままでやってきたし、皆さんと一緒にここまで走り続けてきたから、そのことに誇りを持っている――
そしてこの「アンダー」について特筆すべきことは、そこまで披露されてきた曲がワンハーフ(2番を省略)の形での披露だったにもかかわらず、フルコーラスで披露されたということである。
省略されなかった部分の歌詞に目を向けると、「今どこにいたって やるべきことって同じだ」「影は可能性 悩んだ日々もあったけど この場所を 誇りに思う」など、衛藤の境遇や心情にマッチしたフレーズが数々含まれていることがわかる。衛藤がこの曲を選んだ理由も、またフルコーラスで披露した理由も、推し量ることができようものだ。
以前にも書いたことだが、筆者は当初「アンダー」という曲について、「過去のアンダーライブ経験メンバー全員を歌唱メンバーとして制作し、アンダーアルバムに収録すべきだったのではないか」と考えていたこともあった。それは、長いアンダー時代から選抜定着を果たした衛藤美彩や齋藤飛鳥らのメンバーにこそ、この曲はむしろあてがわれるべきだったのではないかという思いがあったからだ。
いろいろな経緯があったものの、最後に衛藤がこの曲を歌ってくれたことで、曲としての位置づけが少し正しくなったような、そんな気がした。
横アリアンダーライブ、歌い継ぐこと
2019年5月24日には、横浜アリーナで23rdシングルの発売を記念するアンダーライブが開催された。史上最少となる10人の23rdアンダーメンバーに、卒業を控えた斉藤優里と伊藤かりんを加えた12人でのライブとなった。
「アンダー」についていえば、北野日奈子の選抜入りによってセンターメンバーを欠くなかではあったが、伊藤かりんが一貫して肯定的にとらえている曲だったこともあり、披露されることもあるかもしれない、と筆者は考えていた。そして結果として「アンダー」はライブ中盤で、23rdアンダーセンターである寺田蘭世をセンターポジションに置いて披露された。
筆者は前稿で、「『アンダー』は当面披露される機会はないのではないか」「北野のいない『アンダー』は、もはやなかなか想像しづらい」と書いた。どこまでも率直な印象ではあったものの、どちらも外れることになった。
しかし、筆者にとって思い入れがある曲である「アンダー」が、このような形で歌い継がれていくことは、喜ばなければならないと思う。
このアンダーライブについてもうひとつ付け加えるならば、伊藤かりんを送り出したダブルアンコールの「僕だけの光」であろう。以前にも書いた通り、筆者はこの曲には「アンダー」と対になる部分があると考えているし、アンダーライブ九州シリーズでもセットリストの本編最後に置かれるなど、今回のアンダーライブと似た構成がとられていた。
「光」は、アンダーライブのひとつのキーワードになっているように思う。九州シリーズで樋口日奈は「18人全員にそれぞれ違う光がある」と語り、東京シリーズで北野日奈子は「アンダーメンバーは自分自身で光を放てるメンバー」と語った。
「アンダー」がこれからも歌い継がれていくのであれば、「これから射す光」にフォーカスし(ワンハーフだとこの部分は省略されてしまうが)、未来への希望と強さをたたえた曲としてあってほしいと思う。
改めて、これからの「アンダー」
こうして各ライブを振り返ってみると、それぞれが「アンダー」という曲をグループとして適切に受容していく過程であるように思えてくる。「アンダー」がメンバーを含む多くの人にとって、衝撃の作品であったことはもはや疑いない。しかし年月とともにその衝撃度は和らぎ、適切にフォーカスされたメッセージを伝えるために披露されるようになっているように思う。
「アンダー」については、これでもう筆を置くつもりでいる。グループとして曲の受容がなされていくなかで、あえて「アンダー」1曲をあげつらう時期も、もう過ぎたのではないかと考えるからだ。こう言っておいて何かあれば書いてしまうかもしれないが、そのときはそのときで、まあいいとも思う。
書き切った。そう言えるまで、あの曲に向き合うことができた。
それはひとりのファンとして、幸せなことといえるのではないだろうか。
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