思いつきで乃木坂46が過去にライブパフォーマンスした楽曲をすべてデータベース化するということをやり始めたところ、半年ほどを要する相当な苦行になってしまったのですが、得られたデータからわかることが本当におもしろくて、ずっといじくり回しています。
本稿ではこのデータを活用して、「2024年に久しぶりに演じられた曲を振り返る」という切り口から、今年のライブを振り返ってみようと思います。
このブログはいつしか長すぎる文章と細かいデータを集積していく場所のようになっていて、本稿はテンション感としてはnoteに書いているような感じになりそうなのですが、表を埋め込んだりする都合上、こちらのほうがよいかな、ということで(ひょっとすると、noteでやっているようなことも、だいたいブログでやったほうがいいのかもしれません)。
なお、本稿(というより、元データ)が「2024年の乃木坂46のライブ」としてみなしているのは、以下の通りです。
奥田いろはさんの路上ライブ(乃木坂配信中)をライブに含めるのは、筆者の信仰上の理由によるものなので、そういうものとして諦めていただければと思います。
太字は「ミニライブの類を除いた単独主催公演」で、狭義の「乃木坂46のライブ」といったところです。
- 34thSGアンダーライブ
- 赤えんぴつ in 武道館
- 12th YEAR BIRTHDAY LIVE
- 34thシングル発売記念ミニライブ
- 風とロック さいしょでさいごの スーパーアリーナ”FURUSATO”
- 「【いろはの路上ライブ】町田でこっそり路上ライブやってみた!」
- 山下美月卒業コンサート
- Mrs. TAIBAN LIVE 2024
- 35thSGアンダーライブ
- NOGIZAKA46 Live in Hong Kong 2024
- 「奥田いろは 多摩センター駅前で路上ライブやってみた!」
- 35thシングル発売記念ミニライブ
- 真夏の全国ツアー2024
- TOKYO IDOL FESTIVAL 2024
- 掛橋沙耶香卒業セレモニー
- Song for 能登! 24時間テレビチャリティーライブ
- 「横浜で五百城と奥田がギター弾き語りしてみた!」
- 36thSGアンダーライブ
- GirlsAward 2024 AUTUMN/WINTER
- 超・乃木坂スター誕生!LIVE
- 「歩道橋」初披露生配信
- 36thシングル発売記念ミニライブ
- 大感謝祭2024
2024年に“1年以上ぶり”に披露された楽曲一覧
ひとまず、一覧をご覧いただければと思います(手作業が入る形の集計となってしまったので、抜けがあるかもしれませんがご容赦ください)。
wdt_ID | wdt_created_by | wdt_created_at | wdt_last_edited_by | wdt_last_edited_at | ID | 曲名 | 間隔 | 今回の披露 | 前回の披露 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
115 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 192 | 曖昧 | 1,691 | 36thSGアンダーライブ(2024-10-08) | 8th YEAR BIRTHDAY LIVE(2020-02-21) |
116 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 76 | もう少しの夢 | 1,688 | 36thSGアンダーライブ(2024-10-07) | 8th YEAR BIRTHDAY LIVE(2020-02-23) |
117 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 72 | ごめんね ずっと… | 1,655 | 真夏の全国ツアー2024(2024-09-04) | 8th YEAR BIRTHDAY LIVE(2020-02-23) |
118 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 177 | 知りたいこと | 1,541 | 山下美月卒業コンサート(2024-05-11) | 8th YEAR BIRTHDAY LIVE(2020-02-21) |
119 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 149 | 失恋お掃除人 | 1,540 | 山下美月卒業コンサート(2024-05-11) | 8th YEAR BIRTHDAY LIVE(2020-02-22) |
120 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 175 | 告白の順番 | 1,478 | 12th YEAR BIRTHDAY LIVE(2024-03-09) | 8th YEAR BIRTHDAY LIVE(2020-02-21) |
121 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 220 | さ〜ゆ〜Ready? | 1,202 | 36thSGアンダーライブ(2024-10-07) | さ~ゆ~Ready? ~さゆりんご軍団ライブ/松村沙友理 卒業コンサート~(2021-06-23) |
122 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 137 | 流星ディスコティック | 1,126 | 35thSGアンダーライブ(2024-06-07) | 9th YEAR BIRTHDAY LIVE〜4期生ライブ〜(2021-05-08) |
123 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 143 | ライブ神 | 1,076 | 12th YEAR BIRTHDAY LIVE(2024-03-08) | 9th YEAR BIRTHDAY LIVE 〜2期生ライブ〜(2021-03-28) |
124 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 190 | 平行線 | 1,035 | 12th YEAR BIRTHDAY LIVE(2024-03-09) | 9th YEAR BIRTHDAY LIVE〜3期生ライブ〜(2021-05-09) |
125 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 22 | ここじゃないどこか | 1,028 | 36thSGアンダーライブ(2024-10-08) | 生田絵梨花卒業コンサート(2021-12-15) |
126 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 159 | 雲になればいい | 1,028 | 36thSGアンダーライブ(2024-10-07) | 生田絵梨花卒業コンサート(2021-12-14) |
127 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 148 | まあいいか? | 974 | 34thSGアンダーライブ(2024-01-25) | アンダーライブ2021(2021-05-26) |
128 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 155 | その女 | 955 | 35thSGアンダーライブ(2024-06-09) | 28thSGアンダーライブ(2021-10-28) |
129 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 51 | その先の出口 | 925 | 36thSGアンダーライブ(2024-10-07) | 29thSGアンダーライブ(2022-03-27) |
130 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 89 | 遥かなるブータン | 879 | 山下美月卒業コンサート(2024-05-11) | 生田絵梨花卒業コンサート(2021-12-14) |
131 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 232 | 歳月の轍 | 867 | 【いろはの路上ライブ】町田でこっそり路上ライブやってみた!(2024-04-30) | 生田絵梨花卒業コンサート(2021-12-15) |
132 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 65 | 傾斜する | 862 | 12th YEAR BIRTHDAY LIVE(2024-03-08) | 28thSGアンダーライブ(2021-10-28) |
133 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 219 | ざぶんざざぶん | 841 | 12th YEAR BIRTHDAY LIVE(2024-03-10) | 真夏の全国ツアー2021 FINAL!(2021-11-20) |
134 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 52 | 無口なライオン | 820 | 山下美月卒業コンサート(2024-05-12) | 星野みなみ卒業セレモニー(2022-02-12) |
135 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 116 | ブランコ | 808 | 35thSGアンダーライブ(2024-06-09) | 北野日奈子卒業コンサート(2022-03-24) |
136 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 50 | 何もできずにそばにいる | 711 | 12th YEAR BIRTHDAY LIVE(2024-03-07) | 29thSGアンダーライブ(2022-03-27) |
137 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 128 | 君が扇いでくれた | 689 | 真夏の全国ツアー2024(2024-07-20) | 真夏の全国ツアー2022(2022-08-31) |
138 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 118 | 君に贈る花がない | 673 | 34thSGアンダーライブ(2024-01-26) | 北野日奈子卒業コンサート(2022-03-24) |
139 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | nogikeyaksh | 2024-12-23 22:08 | 63 | 僕がいる場所 | 664 | 12th YEAR BIRTHDAY LIVE(2024-03-08) | 10th YEAR BIRTHDAY LIVE(2022-05-14) |
乃木坂46のライブは、グループ全体ライブとして「バースデーライブ」「真夏の全国ツアー」の毎年開催が定着しており、ここにアンダーメンバーによるアンダーライブが併走しているような形となっています。さらに単独の公演としての「卒業コンサート」ないし「卒業セレモニー」が、なんだかんだで2018年以降は毎年開催されています。
加えて、今年は2020年以来の単独海外公演として「NOGIZAKA46 Live in Hong Kong 2024」が開催されましたが、これも毎年行われるものとして定着していくのかもしれません。
分かりやすい区切りとして“1年以上ぶり”というラインを設定しましたが、「去年と今年のバースデーライブで演じられた」楽曲1が365日近傍に集中する形となり、「まあ、そういうもんだしな」という印象になります。ただ、「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」は「ファン投票上位の曲中心の全体ライブ+期別ライブ+秋元真夏卒業コンサート」の構成、「12th YEAR BIRTHDAY LIVE」は「全期間を対象にピックアップした123曲を披露」という形だったので、ここに該当している9曲は、「ライブのセットリストに含められやすいとはいえない状況だけど、(現行の編成の)グループが大切にしている曲」であるといえるかもしれません。
そうした形でセットリストが組まれた「12th YEAR BIRTHDAY LIVE」ですが、ざっくりいえば「表題曲・アルバムリード曲は全曲披露、アンダー曲の網羅的な披露にはこだわらずユニット曲・期別曲などとバランスをとる一方で、メンバー編成上で選抜/アンダーをそこまで区別しない」ような形でした(セットリスト記事)。特に「表題曲・アルバムリード曲は全曲披露」という点では、「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」と共通します。
こう考えていくと、「10th YEAR BIRTHDAY LIVE」から「12th YEAR BIRTHDAY LIVE」まで披露がなかった、663日・664日に集中している6曲の表題曲・アルバムリード曲2は、「バースデーライブだからこそ演じられる曲」に近い位置にあるともいえそうです。
最後の“全曲披露”のバースデーライブからもうすぐ5年が経とうとしており、この間には多くの“卒業ソロ曲”が制作されたほか、シングルの発売記念ミニライブでしか演じられたことのないような曲も散見されます。「どの曲もライブでパフォーマンスが見られる」という時代が遠くなっていくなか、「それでも表題曲・アルバムリード曲は、定期的に全曲を披露する」というのは、かつての“全曲披露”の時代に通ずるグループのあり方であるようにも見えます。
一方で、表中に登場するアンダー曲に目を向けてみると、「その女」「ブランコ」「アンダー」「滑走路」「不等号」「別れ際、もっと好きになる」「生まれたままで」「My rule」「君は僕と会わない方がよかったのかな」「嫉妬の権利」「三角の空き地」と、曲数の多い印象がある一方で、「今回の披露も前回の披露もアンダーライブ」という曲がその大部分を占めることに気づきます。
アンダーライブはアンダー曲を強烈な縦軸としており、やはり近年寄りの楽曲がセットリストの中心になる一方で、リリースから時間の経過したアンダー曲もバランスよく演じられています(年3回のペースで開催で公演数も多い傾向がある、ということでもありましょうが)。アンダー曲43曲のうち、2024年に一度も披露されていないのは「春のメロディー」だけです(前回の披露は2022年3月の「29thSGアンダーライブ」)。
この現象には、全国Zeppツアーの形式で11公演が行われた「36thSGアンダーライブ」のセットリストの構成が大きく作用してもいます(「36thSGアンダーライブ」だけで36曲ものアンダー曲が披露されています)。全メンバーに3曲ずつのフィーチャーコーナーがあてがわれ、このうち原則2曲をアンダー曲で構成する形がとられたほか、ここから外れる形で「アンダー」も2年近くぶり(「31stSGアンダーライブ」以来)に披露されました。
10年以上にわたって連綿とつながれてきたアンダーライブの歴史は、間違いなくすべてのアンダー曲とともにあります。当該シングルの表題曲を披露することが定番だった時期(22ndシングルまで)は過ぎていき、3期生の合流を経て“アンダー曲全曲披露”に取り組んだ時期がありました(「アンダーライブ2019 at 幕張メッセ」「アンダーライブ2020」)。ライブごとに出し入れをしながらもおおむねアンダー曲全曲を現役でライブのなかで演じているといえるアンダーライブには独自の色と強みがありますが、同時にウェットな情念を感じることもあります。
卒業コンサートにみる“思い”の選曲
しかし、アンダーライブはその独自性のみで突っ走っているわけではなく、グループ全体とも独特の一体感を保っています。「当該シングルの」と留保をつけなくても、表題曲が演じられることすら「まれである」と称してよいようなセットリストで臨まれることが多くなっていますが、その一方で「なかなか演じられにくい曲に光をあてる」ような試みが恒常的に続けられてもいます。
2024年においても、今回集計の対象となったなかで最長のブランクとなる1691日ぶりの披露であった「曖昧」を筆頭に、1期生のソロ曲である「もう少しの夢」「さ〜ゆ〜Ready?」、オリジナルメンバーの卒業コンサート以来の披露であった「ここじゃないどこか」「雲になればいい」「君に贈る花がない」など、アンダーライブがブランクを打破したような印象のあるパフォーマンスが散見されました。
また、「まあいいか?」「その先の出口」「コウモリよ」「急斜面」「低体温のキス」「深読み」は、「今回の披露」も「前回の披露」もアンダーライブ(なおかつその間にブランクが1年以上がる)という状況でもあり、そうした取り組みが中長期的に続けられてきたのだということが見てとれます。
ただ、こうした「最近演じられることのなかった曲」が演じられる機会としてよりいっそう印象深いのは卒業コンサートの類でしょう。2024年に行われた、狭義の「卒業コンサート」は「山下美月卒業コンサート」のみでしたが、このほか「掛橋沙耶香卒業セレモニー」が事前収録の動画配信の形式で行われ、阪口珠美さん・清宮レイさんの卒業セレモニーが配信ミニライブのなかで行われる形がとられたほか、「大感謝祭2024」において向井葉月さんの卒業セレモニーが行われました。
こうした卒業の機会のライブのなかで、特に単独の公演として行われた場合は曲数も多くなり、主役となる卒業メンバーに思い入れやゆかりのある曲も、それだけ多く演じられることになります。近年はこうした機会において、「なかなか演じられにくい曲」が改めてステージに舞い戻ることも多かったでしょうか。
2DAYSで行われた「山下美月卒業コンサート」のなかではそうした曲が、今回集計の対象となった曲だけでも11曲もセットリストにラインナップされていました。
「8th YEAR BIRTHDAY LIVE」以来だったのが、山下さんがオリジナルで参加していたユニット曲である「知りたいこと」、そして「失恋お掃除人」。これにあわせてかつての“軍団曲”を3曲ともパフォーマンスしたことで、「2度目のキスから」も秋元真夏さんの卒業コンサート以来に披露の機会を得ることになりました(そこから自らの「山下軍団」で新曲「恋山病」を演じたこと、さらにそれが新たな軍団の結成につながっていったことは、鮮やかでした)。
このほか、“月”くくりで向井葉月さん・菅原咲月さんと演じた「満月が消えた」は「31stSGアンダーライブ」以来、賀喜遥香さんとふたりで歌唱した「無口なライオン」は、「星野みなみ卒業セレモニー」で星野さんが向井さんと歌って以来、「未来の答え」と「欲望のリインカーネーション」は「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」での3期生ライブ以来でした。
「遥かなるブータン」は「生田絵梨花卒業コンサート」以来の披露となりましたが、これは「山下軍団」による披露で、山下さんだからこそ引っ張り出してこられた曲だったようにも思えます。「会いたかったかもしれない」が「真夏の全国ツアー2022」明治神宮野球場公演以来だったというのはやや意外に感じました。
そしてもう1曲、「図書室の君へ」がありました。これは掛橋沙耶香さんがライブ中の事故で活動休止に入ってからはほぼ欠番状態になっていた曲で、前回の披露は「11th YEAR BIRTHDAY LIVE」での4期生ライブでのことでした。このときは4期生楽曲をすべて演じる形がとられたなかで、センターは空けた形での披露。冒頭のポエトリーには掛橋さんの音源が用いられ、クライマックスでは横浜アリーナの外周ステージに並んだメンバーがメインステージのモニターに映し出された掛橋さんの映像を見るという印象深い演出により、あくまで“掛橋さんのセンター曲”という位置づけが守られていました。
その前の披露機会まで遡ると、2022年6月26日の「乃木坂スター誕生!LIVE」となり、特殊な事情があったとはいえ、やはり「なかなか演じられにくい曲」になっていたことは間違いありません。
「山下美月卒業コンサート」では、大阪での舞台出演から駆けつけた柴田柚菜さんがこの曲のセンターで登場する、という演出とともに、4期生に山下さんを加えた編成で演じられました。掛橋さんの卒業発表はここから約3ヶ月後であったというタイミングで、443日ぶりの披露で初めてセンターを代えるという“再解釈”に至ったのも、卒業コンサートという特別な場だからこそ為せたことだったかもしれませんし、そこにはおそらく、山下さんの後輩に対するまなざしも含まれていたことでしょう。
卒業セレモニーの最後にこの曲を演じるにあたって、掛橋さんは「最後にひとつだけわがままをいうのであれば、いまから歌う曲を、私がいなくなってからも歌い継いでいってもらうことだと思っています。」と言い残していきました。“全曲披露”の記憶も遠ざかっていくなか、楽曲を“歌い継ぐ”には、誰かの明確な意志や思いが介在しなければならない、という状況になっているといえるかもしれません。オリジナルの楽曲数が300曲に迫ろうとしているなかで、長く演じられる機会のない曲が出てくるのは仕方のないことではありますが、だからこそ、ライブがメンバーの“意志や思い”を表出される場であり続けてくれることを願うばかりです。
さらにもう1曲、今回の集計の対象には含まれていませんが、「山下美月卒業コンサート」の2日目で演じられた「初恋ドア」も、ここに列しておかなければならない選曲でした。「坂道AKB」第3弾の楽曲として2019年3月にリリースされたこの曲は、山下さんがオリジナルのセンターを務め、MVも制作されたものの、音楽番組を含むパフォーマンスの機会は絶無のまま5年が経過していました3。
山下さんはそれを、「どうしてもセットリストに入れたい楽曲」とインタビューVTRで説明したうえで、「これから、もっとより、今以上に『輝いてほしいな』というメンバー」とのユニット曲として、いわゆる“新4期生”の5人を指名して、ともにパフォーマンスしてグループを離れていきました。自身の記憶や情念を表現するだけでなく、それをグループの行く先にもつなげていこうとする、そんな姿勢が貫かれていた卒業コンサートだったように見えました。
“こぼれ落ちていくもの”との距離
しかし、メンバーの卒業の折にそうした機会がおとずれるとしても、それにもやはり限界があります。山下さんとてオリジナルでの参加楽曲を網羅的に演じたわけではないですし、掛橋さんは4期生楽曲にしぼっての披露、阪口さん・清宮さんの卒業セレモニーでは1曲のみの披露、向井さんの卒業セレモニーも3曲の披露でした。
これをふまえて改めて表に目を移すと、個々の曲をみていくとさまざまな経緯や状況があるとはいえ、「今回の披露」のほとんどを、ここまでで述べてきた「12th YEAR BIRTHDAY LIVE」「アンダーライブ」「山下美月卒業コンサート」が占めているということに気づきます。4DAYSのバースデーライブや2DAYSの卒業コンサートのような規模、あるいはアンダーライブのようなコンセプトがなければ、ここまでの曲数を拾い上げていくことは難しく、“こぼれ落ちていくもの”の数も、ひょっとすると年々かさんでいくのかもしれません。
一方で、グループがそうした“こぼれ落ちていくもの”を、仕方のないことだから、と捨て置くことにしているのかというと、決してそうではないようにも感じます。例えるなら「12th YEAR BIRTHDAY LIVE」の機会に乃木坂配信中でその模様が公開された衣装倉庫のように、いつでも出してこられるように保管してあるような、そんなような印象をもちます。
今年でいえばほかに、「NOGIZAKA46 Live in Hong Kong 2024」で「ごめんね、スムージー」が488日ぶりに演じられ、「大感謝祭2024」の「乃木恋リアル」のコーナーで使用されて演じられた「なぞの落書き」は576日ぶりの披露でした。直前の披露機会がそれぞれ秋元真夏さん、齋藤飛鳥さんの卒業コンサートであったことを考えると、久しぶりだったにもかかわらず、よりフラットな形でステージに戻ってきたような感じでもあるでしょうか。
また、夏曲や期別曲の披露が多い「真夏の全国ツアー2024」でも、演出に組み込む形で「君が扇いでくれた」が2年ぶりに(またも「真夏の全国ツアー」で)演じられたほか、披露間隔は1年空いていなかったものの、「せっかちなかたつむり」や「他の星から」といった1桁シングル時代のユニット曲が現役メンバーのユニット曲と並べて披露されたほか、「ここにはないもの」が井上和さんのソロ歌唱で披露されるなど、曲数が限られるなかでも“歌い継ぐ”意志がうかがえるような場面もありました。
そして明治神宮野球場での千秋楽公演では、あえて空白にして(=そこまでの公演のセットリストから読めないようにして)期待感を高めていたようにも見えるユニットブロックにおいて演じられた、西野七瀬さんのソロ曲「ごめんね ずっと…」は「8th YEAR BIRTHDAY LIVE」以来1688日ぶりの披露でした。「ソロ曲の女王」といわれた西野さんには6曲のソロ曲があてがわれており、そのなかにあって「ごめんね ずっと…」は、全国握手会のミニライブと「“全曲披露”のバースデーライブ」でしか披露された機会がなかったような楽曲でした4。
このほかにも、久保史緒里さん・林瑠奈さん・奥田いろはさんの各期からひとりの形で歌唱した「設定温度」、今年初めてアンダーライブを経験した筒井あやめさんがセンターに立った「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」、オリジナルのセンターである井上さんが中西アルノさんとふたりで歌唱した「絶望の一秒前」と、このブロックは2024年の乃木坂46のライブにおける屈指のハイライトシーンが続きました。
そんなふうに、必ずしも「思い出を振り返る」コンセプトのライブでなくても、あるいはずっと披露されていなかった楽曲であっても、どの曲もノーモーションでセットリストに加えられて演じられるような、ある意味での緊張感が保たれているような、乃木坂46に対しては、そんな感覚があります。ひょっとすると、「バースデーライブで全曲やるから、年に一度そのときに聴ける」という状況だった時代よりも、“全曲”に対する感覚は鋭敏かもしれません。
ライブでは定番のあの曲でも、ずっと披露されていなかったあの曲でも、今日・ここで演じられることには特有の意味がある。そんなふうに感じさせてくれるのが、乃木坂46のセットリストだと思います。
直近の披露からの経過日数まとめ
最後に、乃木坂46名義のリリース曲全曲について、直近の披露日とライブ名、そして経過日数を見てみましょう。本稿で述べてきたような絶え間ない営みの結果、「すごくブランクのある曲」は案外少ないような、でもそれでもやっぱり数はあるんだなというような、両面の感想が出てくるような結果になった気がします。
あるいはどちらかというと、近年のユニット曲の多くについては(シングルの発売記念ミニライブ以外での)ライブ披露に(まだ?)あまりこだわっていなくて、それ以前の時期の曲を“置いていかない”ことに注力しているような、そんなふうに感じることもあります。
1月下旬には「36thSGアンダーライブ」が控え、「13th YEAR BIRTHDAY LIVE」は5月に味の素スタジアム・2DAYSでの開催が発表されています。2025年も多くのライブが開催され、そのときどきにしかないパフォーマンスが行われること、そしてそれを平和裏に見届けていけることを願って、2024年の振り返りを終えたいと思います。
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- 「せっかちなかたつむり」「指望遠鏡」「孤独兄弟」「大人への近道」「風船は生きている」「思い出ファースト」「毎日がBrand new day」「最後のTight Hug」「価値あるもの」。
- 「バレッタ」「何度目の青空か?」「僕がいる場所」「今、話したい誰かがいる」「しあわせの保護色」「世界中の隣人よ」。
- 「坂道AKB」第1弾の「誰のことを一番 愛してる?」、第2弾の「国境のない時代」はそれぞれ音楽番組での披露機会があったほか、オリジナルのセンターの所属グループであった欅坂46がライブで演じる機会もありました。「初恋ドア」も、少なくとも音楽番組での披露は期待されたところですが、山下さんは2019年4月に活動休止に入っており、こうした状況も作用していたのかもしれません。
- ほか、「Merry Xmas Show 2016〜選抜単独公演〜」で、衛藤美彩さんがカバーする形でソロ歌唱しています。
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