坂道「センター」論考

 少し時間が経ってしまったが、以前Twitter経由で質問箱から、このブログのお題として、「漢字とひらがなにとってのセンターが持つ意味合いの違い」「ひらがなのセンターの変遷」という2点をいただいた。本稿ではこの2点について、乃木坂46の事例も交えながら考えていきたい。

 

「センター」のもつ三つの役割

 一般に「センター」というポジションには、大きく分けて三つの役割がありうると考えている。
 1点目は、「グループの顔として前面に立つ」ことである。
 センターポジションを得たメンバーは、パフォーマンスの際に「ゼロ番」に立つのはもちろん、歌番組などの出演の際にはコメントを求められ、雑誌などでもインタビューが組まれやすい。必然的にグループの顔となり、認知度も高まっていくことになる。
 2点目は、「『誰がセンターに立つか』というストーリーを背負う」ことである。
 上述の1点目が外向きの役割であれば、こちらは内向きの役割であるともいえる。センターになるということは、形はさまざまあれ「選ばれる」ことである。グループアイドルの活動が必然的にはらむストーリー性の中心ともなることが、役割の一つにもなってくる。
 3点目は、「センター曲のイメージを形成する」ことである。
 こちらはパフォーマンスに関してもつ役割である。センターはグループ内での役職ではなく、特定のシングルまたは曲に対応して選ばれるポジションである。個々の曲はグループのカラーを反映し、同時にそれを形作るが、それはセンターメンバー個人に対しても同じことがいえる。

 そしてこの三つの役割は、つねに均質に存在しているのではない。これらがどのようなバランスで担われているかによって、グループの特色や、センターメンバー個人の特性が表れてくるのである。

 

乃木坂46における事例

 この三つの役割に関して、そのバランスがさまざまであることを説明するために、いくつか例を挙げてみたい。
 乃木坂46草創期の生駒里奈は、1点目の役割の強いセンターであった。「AKB48の公式ライバル」と銘打たれ、メディア露出がパフォーマンスに先行する部分もあるなかで、常に先頭に立ち「乃木坂の顔」を務めてきた。一方で、グループとしてセンターの交代を一度も経験していないなかで、当時は2点目の役割は薄かったともいえる。ある意味で乃木坂46は生駒里奈と一体化しながら坂を上り始めていたのである。
 ただ、「誰がセンターに立つか」というストーリーを強調しようという試みもあった。いまとなっては悪趣味すぎるようにも思える選抜発表の数々である。AKBグループが選抜総選挙などの舞台装置を数多くもっていたなかで、乃木坂46の選抜発表が過剰に強調されていた面があったようにも思う。
 また、生駒里奈はデビューから5枚連続のシングルでセンターを務める中で、3点目の役割も徐々に強めていった。わかりやすい例が彼女の代名詞である「制服のマネキン」である。シングルの枚数を重ね、グループの色が確立していくにしたがって、センターの個性も発揮しやすくなるといえるかもしれない。

 その後の時期の乃木坂46においては、頻繁にセンターの交代がなされ、2点目の役割も少しずつ強まっていく。特に研究生から突如としてセンターに指名された堀未央奈は、ストーリー性の強いセンターメンバーの筆頭である。また、比較的近年には深川麻衣と橋本奈々未の「卒業センター」や、3期生として初選抜で抜擢された大園桃子・与田祐希などもおり、センターメンバーの指名は完全にグループとしてのストーリーの中心に据えられるようにもなっている。
 このような経緯を経て、現在の乃木坂46は、前述の三つの役割をそれぞれバランスよく担うセンターを備えたグループとなってきたといえるように思う。というより、そもそもこの「三つの役割」というのも、乃木坂46の歴史をみながら構想したものだ。

 

漢字欅とひらがなけやき

 さて、本題である漢字欅とひらがなけやきのセンターについて、この「三つの役割」から分析していきたい。乃木坂46も含め、グループの特徴がそれぞれよく現れるのではないだろうか。

 漢字欅のセンターは(つまりは平手友梨奈ということになるが)、3点目の役割が最初から強いことに特徴がある。「サイレントマジョリティー」での鮮烈なデビューは、平手友梨奈のあの強い眼差しがあってこそだったであろう。以降も少しずつ形を変えながら、平手が曲のイメージを先頭で形作っていることには変わりない。
 センターを変えていないことから、2点目の役割は少し弱いともいえるが、「センターメンバーは変わっていくもの」という文脈がある中で、デビューから一貫してセンターを平手友梨奈が務めていることは、逆説的なストーリーを形成しているともいえる。
 1点目の役割に関しては少々独特である。「センター・平手友梨奈」の認知度や存在感は申し分ないが、本人がトークなどを得意としていないことなどもあり、菅井友香や長濱ねるを中心に負担軽減がはかられているという形である。

 ひらがなけやきのセンターに関しては、単独アルバム発売以降、1点目の役割がある程度あらわれるようになってきたといえる。徐々に増えつつある音楽番組などへの出演の際、佐々木美玲や加藤史帆がコメントを求められる場面をよく見るようになってきた。
 2点目の役割については、意図的に弱めているようにも思える。ひらがなけやきオリジナル曲に関しても、2017年全国ツアーでの漢字欅カバー曲に関しても、特段のアナウンスなくセンターが流動的に変わり続けている。過剰にストーリーを押し出すことなく、「静かにセンターが変わる」ことが強みをなしているということは、前稿「ひらがなけやき、アイデンティティの淵源。」でも書いたとおりである。
 3点目の役割については、徐々に現れるようになってきたといえるように思う。漢字欅ほどの強烈さはないが、乃木坂46に近いバランスになっているのではないだろうか。個別の事例については、次段にて時系列順に振り返っていくことにしたい。

 

ひらがなけやき歴代センターを振り返る

 続いて、もうひとつの本題であるひらがなけやきのセンターの変遷について振り返ってみたい。

 ひらがなけやきにとっての「センター」は、少し曖昧な形で始まったといえるように思う。
 初期の「ひらがなけやき」「誰よりも高く跳べ!」では長濱ねると柿崎芽実のWセンターのような形であったが、長濱が前に出てくる場面もいくらかみられた。1期生による「ひらがなおもてなし会」で披露された「サイレントマジョリティー」と「世界には愛しかない」でも、長濱がセンターを務めた。
 しかし、こうしたパフォーマンス上でのポジション以外で「センター」として長濱が押し出されていたかと言われると、意外なほどそうではなかったという印象がある。他のメンバーと横並びで自己紹介もしていたし、「ひらがなおもてなし会」では「放送部」としてMCを引っ張ったものの、それ以後はその役割も佐々木久美に移っていた。
 また、Wセンターとして長濱と並ぶ場面もあった柿崎芽実も、それ以外で特段前に出てくる場面はなかったように思う(「ひらがなおもてなし会」での「世界には愛しかない」でポエトリーのパートがあったくらいだろうか)。筆者の肌感覚としては、SHOWROOM審査を通していくらか人気が先行していたメンバーだったようにも思われるが、そうしたメンバーが「推される」構造を極力つくらないようにしていたともとれ、そう思うと好感が持てる。
 続く「僕たちは付き合っている」「永遠の白線」は長濱が単独センターの形だったが、センターポジションをクローズアップするような場面はさらに少なく、特に「永遠の白線」では全員がそれぞれ自分のポーズをとるパフォーマンスが振り付けとして定着する。

 一方で、「僕たちは付き合っている」の時期に始まったひらがなけやきの全国ツアーでは、「世界には愛しかない」の影山優佳、「二人セゾン」の柿崎芽実と井口眞緒、「制服と太陽」の加藤史帆、「語るなら未来を…」の齊藤京子など、特に漢字欅の曲をカバーする場面で、数々のメンバーがセンターポジションに立つことになった。
 筆者個人としては、この時期に多くのメンバーがセンターでのパフォーマンスを経験したことが、ひらがなけやき1期のメンバーを強くしたと考えている。

 

転機、長濱ねるの兼任解除

 そして、やはり転機として挙げなければならないのは、長濱ねるの兼任解除だろう。強く押し出されてはいなかったとはいえ、センターに立ち続けてきた長濱の離脱は大きく、センターの変遷という意味でもこれがひとつの潮目となる。「それでも歩いてる」の齊藤京子は、ひらがなけやきの、ある意味では「初代センター」と言えるかもしれない。
 齊藤は、歌でもダンスでも初期からグループを引っ張ってきたメンバーである。「それでも歩いてる」でも、冒頭のソロパートの歌声が印象的に映る。そして2期生が合流した「NO WAR in the future」でも、センターが明確な曲ではないが、それに準じるポジションを得たと言っていい。20人となったひらがなけやきは、齊藤京子を先頭に坂を上り始めたのである。

 それに続いたのが、佐々木美玲だった。日本武道館公演で「イマニミテイロ」が初披露され、センターに立つ彼女の姿を見たとき、非常に感慨深い思いだったことを覚えている。ひらがなけやき加入前の話は措くとしても、佐々木美玲はパフォーマンスに優れたメンバーであるにもかかわらず、ポジションは2列目の端が多く、2017年の全国ツアーでもセンター曲を得ることはなかった。退場が最後になるためにライブの最後でお辞儀をする姿を見てきたことの印象も強い。そこからの、日本武道館でのセンターデビューである。
 結果として、その日本武道館公演で発表された単独アルバム「走り出す瞬間」では、リード曲の「期待していない自分」をはじめ、全員曲や1期生曲でもセンターポジションに立ち、ソロ曲「わずかな光」も得ることになった。単独での音楽番組出演も始まったこの時期にセンターとなったことは、彼女にとっても大きいことだっただろう。

 

最新曲「ハッピーオーラ」、そして

 しかしそれでもセンターが固定されることはなく、最新曲「ハッピーオーラ」では加藤史帆がセンターを務めている。「ひらがな推し」では初めてフォーメーション発表もなされた。これでアルバムでソロ曲を得た3人が全員センターポジションを経験したことにもなり、この3人のパフォーマンスへの信頼感のようなものも透けて見える。
 長濱がグループを離れてから現在に至るまでのこの時期に、本稿前半で述べたセンター3点目の役割、「センター曲のイメージを形成する」ことが明確になってきたと筆者は考えている。
 渋い曲調の「それでも歩いてる」を特徴的な声で歌い上げた齊藤京子、「期待していない自分」のパフォーマンスを凜々しく走り抜けた佐々木美玲、グループのモットーの「ハッピーオーラ」を体現した満開の笑顔の加藤史帆、と並べてみると、3曲ともセンターの色がきちんと出ているように思うのだ。

 そしてもうひとり、2期生曲「半分の記憶」「未熟な怒り」「最前列へ」でセンターを務めている小坂菜緒のことも忘れてはならない。2期生による「おもてなし会」のミニライブでも全曲でセンターを務め、「2期生のセンター」としてここまでは定着してきたといえるだろう。「ハッピーオーラ」では渡邉美穂とともにセンターの脇を固めており、「ひらがなけやきのセンター」になっていくことも期待される。

 筆者個人の考えを述べるならば、これからもシングルごとくらいのスパンで、センターを変え続けていってほしいと思う。ひょっとすると単独シングルの発売も今後あるかもしれないし、そうなればセンターメンバーの重要性もより増してくるだろう。それでも特定のメンバーにこだわることなくセンターを変えて、いろいろな色をグループとして見せてほしいと思う。

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